モンスター社員とは?問題点と企業の対策を考える

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どの企業にも、組織のルールや価値観にそぐわない行動を繰り返す社員が一定数存在します。周囲の社員のやる気を削ぎ、管理職の疲弊を招き、業務効率を下げる…。いわゆる「モンスター社員」と呼ばれる存在です。
中小企業においては、限られた人員体制の中でこのような社員に対応することが難しく、「問題と分かっていても対処できない」というケースが少なくありません。結果として、周囲の“まともな社員”が辞めてしまい、組織全体が弱体化していくリスクすらあります。
本記事では、「モンスター社員」の特徴や企業への影響、対応を誤った際のリスクを整理し、実効性のある対策と制度づくりについて解説します。
目次

モンスター社員とは何か

「モンスター社員」とは、明確な法的定義があるわけではありませんが、一般的には以下のような特徴を持つ社員を指します。
- 上司や同僚の指示に従わない
- 勝手な行動をとる
- 注意されると逆ギレや逆恨みをする
- 自分の権利ばかりを主張し、義務や責任を果たさない
- 周囲の雰囲気や業務進行を著しく妨げる
一見すると「クセのある社員」との違いが分かりにくいかもしれませんが、組織全体に対する悪影響が明確になっている場合、その社員は“モンスター化”していると判断できます。
発生する問題と企業への影響
モンスター社員の存在が与える影響は、決して一部の管理職だけの問題ではありません。以下のように、組織全体に深刻なダメージを及ぼします。
職場の士気低下
真面目に働く社員が理不尽な言動や態度に巻き込まれることで、「なぜ自分だけが我慢しなければならないのか」という不満が蓄積されます。これは離職率の増加やエンゲージメントの低下を招きます。
さらに、優秀な人材ほど環境の変化に敏感であり、「こんな職場にいても成長できない」と判断して転職を検討する可能性が高まります。放置すれば、組織全体の人材レベルが徐々に下がっていく悪循環に陥ります。
管理職の対応疲れ
モンスター社員の扱いに時間と精神力を奪われ、本来のマネジメントや育成にリソースを割けなくなります。これにより、管理職自身のパフォーマンスが低下し、チーム全体が機能不全に陥ることもあります。
一部の管理職は「何を言っても無駄だ」と感じ、対応を放棄してしまうケースもあります。その結果、組織内のリーダーシップが崩れ、現場は不満と混乱に包まれていきます。
組織文化の崩壊
ルールを守らない社員が放置されると、暗黙のうちに「この会社ではやったもの勝ち」という風潮が広まり、組織の一体感や価値観が崩れるリスクが高まります。「正しく行動する人が損をする」という状態が続くと、健全な組織文化は急速に劣化していきます。最終的には、組織のビジョンやミッションに共感する社員すら離れていく危険性があります。
対応しないことのリスク
モンスター社員に対して、「刺激しないように…」と見て見ぬふりをすることは、結果的に大きなリスクを招きます。
法的トラブルの温床になる
注意や指導を行わないままトラブルが拡大すると、パワハラ訴訟や不当解雇といった法的リスクが一気に高まります。なぜなら、事前に十分な注意指導や改善機会を与えていない場合、企業側の対応が「不適切」あるいは「感情的」と見なされやすくなるからです。また、指導プロセスや問題行動の記録が不十分だと、裁判で「正当な対応だった」と主張することが極めて困難になります。
さらに、対応が遅れた結果として、周囲の社員が精神的に追い詰められ、労災申請やうつ病の診断書を伴う休職に発展するケースも多く見られます。
周囲の“優秀な人材”が辞めていく
多くの企業で共通しているのは、「モンスター社員よりも、我慢していた優秀な社員の方が先に辞める」という事実です。放置することで人材流出が加速するのは、企業にとって最も大きな損失です。
しかも、その離職は静かに進行するため、気づいた時には中核人材が抜け、組織の競争力が著しく低下しているというケースも珍しくありません。早期対応が、健全な組織維持のカギとなります。
モンスター社員への対処法

モンスター社員に対しては、感情ではなく「ルール」と「記録」に基づく対応が鉄則です。以下のようなステップで冷静に対処していく必要があります。
行動を記録する
注意や指導を行う前に、その社員の問題行動を時系列で記録しておくことが重要です。感情的な印象ではなく、事実ベースで状況を把握し、他部署や経営層への説明にも使えるようにします。
記録の形式はメモでも構いませんが、日時・内容・周囲への影響・対応内容を整理した一覧表などにしておくと、後々の判断材料として非常に有効です。継続的な記録こそが、客観性と対応の正当性を裏付ける武器になります。
指導内容を文書化する
口頭での注意は記録が残らず、「言った・言わない」の争いに発展する恐れがあります。指導内容や改善目標を文書化し、本人に確認させることが重要です。
文書は必ず本人に説明し、署名または内容確認のサインをもらうようにしましょう。本人がサインを拒否した場合でも、その旨を記録し、「指導は確実に行った」という証拠を残すことが重要です。
第三者の立ち会いを入れる
対応が難しい場合は、人事部門や法務、外部の社労士などに同席してもらいましょう。一人で対応することは避け、冷静な立場の第三者が入ることで、トラブル防止にもつながります。
特に問題社員との面談時には、感情的なやり取りを避けるためにも、第三者の視点が緩衝材として機能します。また、後から発言内容が食い違った際にも、証人としての役割を果たしてくれます。
一貫した姿勢で対応する
最も重要なのは「ブレない姿勢」です。一度例外を認めてしまうと、他の社員とのバランスが崩れ、組織の信頼性を損ないます。人事制度や就業規則に基づいて、公平に対応することが不可欠です。
一貫性を保つためには、事前に社内の対応方針やフローを整備し、関係者全体での共有が必要です。個人判断に頼らず、制度としての裏付けを持って対処することが、信頼される人事対応につながります。
根本的な予防策とは
モンスター社員は「突然」生まれるわけではありません。多くの場合、制度や採用基準の甘さ、マネジメント不全がその原因になっています。
採用時の見極め
まずは採用段階でのフィルター強化が有効です。例えば、ストレス耐性や協調性を測る適性検査の導入、複数回面接による人物確認など、組織に合わない人材を見抜く工夫が必要です。
また、面接ではスキルや経歴だけでなく、価値観やチームへの適応力に焦点を当てた質問を設けることが効果的です。入社前の段階で「将来トラブルを起こす可能性があるか」を予測する視点が求められます。
評価制度の見直し
曖昧な評価制度は、「何をしても評価される人/されない人」が生まれる原因になります。成果だけでなく行動面も評価基準に入れることで、問題社員が評価されにくい仕組みに変えることができます。
例えば、「協調性」「ルール順守」「他部署との連携」など、数値化しづらいけれど組織に不可欠な行動指標を明文化することで、社員全体にとってフェアな評価制度となり、モンスター化の芽を摘むことができます。
管理職の教育強化
現場の対応力も重要です。モンスター社員を早期に発見し、初期段階で適切に対処できる管理職を育てることが、組織防衛につながります。マネジメント研修や評価者研修の導入が効果的です。
特に、事実に基づく指導の方法や、感情に流されず冷静に対応する技術を学ぶことで、管理職が自信を持って問題社員に向き合えるようになります。組織として「管理職を守る」仕組みづくりも欠かせません。
制度設計の見直しと外部支援の必要性

モンスター社員の存在は、組織の「制度疲労」や「マネジメントのゆがみ」を浮き彫りにします。根本的な改善には、内部リソースだけでなく、第三者視点による制度設計と運用支援が有効です。
なぜ人事コンサルが必要か
中小企業にとって、制度設計や運用改善を自力で行うのは簡単ではありません。人事コンサルは、以下のようなサポートを行います。
- 問題社員の対応フロー整備
- 行動評価基準や処分規定の策定支援
- 公平性を保つ評価・処遇制度の再設計
- 管理職向けマネジメント研修の企画・実施
- モンスター社員を生まない採用プロセスの構築
外部の知見を活用することで、社内では見えにくかった制度上の盲点が明確になり、再発防止にもつながります。
まとめ
モンスター社員の問題は、一社員の振る舞いにとどまらず、組織全体に影響を与える重大な経営課題です。放置することは、優秀な人材の流出や職場のモラル低下につながります。
- 問題社員には、ルールと記録に基づいて冷静に対応する
- 採用、評価、管理職教育などの「制度的な予防策」が再発防止につながる
- 自社だけで解決できない場合は、外部の人事コンサルを活用することで、より早く確実な改善が可能になる
「問題社員を排除し、健全な組織を作りたい」と考えているなら、今が制度改善のタイミングです。
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