コンプライアンスと企業倫理を浸透させるには?標語と活動の提案

経営活動においてコンプライアンスが重視される中、多くの企業がコンプライアンス対策を進めています。しかし、「法令を守ることがコンプライアンスだ」と考える企業が多く、その本質を深く理解しているところは少ないかもしれません。

そこで今回は、コンプライアンスと企業倫理の基本的な概念を確認し、それらを社員に浸透させるための具体的な標語や活動を紹介します。

目次

コンプライアンスと企業倫理の関係

コンプライアンスと企業倫理という言葉を混同していないでしょうか?まず、それぞれの意味をしっかり理解しておきましょう。

コンプライアンスの意味と範囲

コンプライアンスはもともとアメリカの産業界で「法律を守ること」という意味で用いられていましたが、日本では近年、法令遵守に加えて、就業規則や企業倫理、さらには社会的なルールや規範の遵守も含む幅広い概念として理解されています。

特に2000年代以降、食品偽装問題などが大きな社会問題として取り上げられたことを受け、法令遵守だけでなく、社会的規範や倫理に基づいた行動が求められるようになり、コンプライアンスの範囲が拡大しました。現在では企業にとってコンプライアンスは顧客情報の流出、不正会計、ハラスメントといった問題への対応も含む欠かせない取り組みとされています。

企業倫理の概念

企業倫理についてはさまざまな見解がありますが、「企業に関わるすべての人が守るべき行動指針」や「ビジネスにおける誠実さ」として捉えると理解しやすいでしょう。

企業倫理は、次の3つの要素で成り立っています。

  • 個人倫理
  • 職業倫理
  • 組織倫理

これらは、それぞれ「個人」「職業人」「組織」という異なる視点から企業活動における倫理を捉えたものです。この3つの要素が交わる中心に「コンプライアンス」が位置しています。

基本的には、コンプライアンスが法の立場であり、企業倫理は道徳の立場にある考え方ですが、コンプライアンスは、法令を遵守するだけでなく、企業倫理と深く結びついている点を理解することが重要です。

したがって、法令や社内ルールをしっかり守る体制が整っている企業は、一般的に高い倫理観を維持している傾向があります。

企業倫理・コンプライアンスマニュアルの作成方法

コンプライアンスリスク回避のために、経営理念や従業員規則ではカバーしきれない視点や内容を盛り込んだものが、企業倫理・コンプライアンスマニュアルです。

コンプライアンスマニュアルの重要性は、リスクへの対処方法を明文化し、意識を高める点にあります。過去に不祥事で大きな損害を受けた企業が、コンプライアンスを文書化することで「再発防止」を目指すケースは多く見られます。これまでに不祥事を起こしていない企業にとって、コンプライアンスマニュアルは「事前の備え」として役立つものです。

ここでは、そのマニュアルの作成手順について解説します。

コンプライアンスマニュアルの作成手順

1.企業の使命や価値観の明確化
企業倫理を策定する最初のステップは、企業の使命や価値観をはっきりさせることです。企業が目指す方向や大切にしている価値を明確にし、倫理的な行動の土台を作ります。企業の理念やビジョンがしっかりしていれば、従業員もその方針に従って行動しやすくなるでしょう。

2.ステークホルダーとの対話を通じたニーズの把握
次に、ステークホルダー(顧客、従業員、株主、地域社会など)と対話を重ねて、彼らのニーズや期待を把握します。これにより、企業が直面している倫理的な課題や、求められている価値観が見えてきます。こうした情報をもとに、企業倫理にしっかり反映させることが大切です。

3.倫理行動基準の策定
ステークホルダーのニーズを考慮したうえで、具体的な倫理行動の基準を作ります。この基準には、法律や規則だけでなく、企業の価値観に基づいた行動の指針も含まれます。倫理行動基準は、従業員が日々の仕事の中でどう行動すればよいかを示す大切な目安になります。

4.社内での周知徹底と教育プログラムの実施
作成した倫理行動基準を社内で広く共有し、社員が理解できるよう教育プログラムを行います。このプログラムを通じて、社員は企業の倫理基準を理解し、実践するための知識やスキルを身につけられます。定期的に研修やワークショップを開催し、倫理意識を高めることが大切です。

5.定期的な見直しと改善のプロセス
企業倫理は一度作って終わりではなく、定期的に見直しや改善を行うことが大切です。社会の状況や法律、ステークホルダーの期待が変わるたびに、倫理行動基準をアップデートし、常に時代に合った内容にしておく必要があります。このプロセスを通じて、企業は継続的に倫理的な行動を推進し、信頼を築くことができます。

おすすめ

コンプライアンス研修

企業はCSR(Corporate Social Responsibility)と呼ばれる、社会的責任を果たす必要があります。社員1人1人がモラルやルールに対する意識を高く持ち、社会的規範となる行動をとり、法令順守を推し進めていくことが、組織発展の土台となります。
コンプライアンスとCSRは密接に関連しています。企業がコンプライアンスを重視することは、法律や規制に従い、倫理的な行動を取ることを意味します。コンプライアンスが重視されることで、企業は法的リスクを軽減し、法律違反による罰金や訴訟、業界規制機関からの制裁を回避することができます。また、適切なコンプライアンスは企業の信頼性を高め、顧客や取引先、投資家からの信頼を築くのに役立ちます。

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コンプライアンスと企業倫理を浸透させるための標語の重要性

コンプライアンス意識を向上させるための一つの手段として、コンプライアンス標語が有効です。標語は、企業の価値観や行動基準をシンプルに伝え、従業員に大切なメッセージを届ける手段です。

企業の理念をわかりやすく示し、日々の仕事で自然に意識できるようにします。短くて覚えやすいメッセージは、行動を促しやすく、共通のメッセージを持つことで、従業員同士の絆が深まり、企業全体でコンプライアンスや倫理への意識が高まります。標語は、企業倫理をしっかり浸透させるために役立つツールです。

コンプライアンス標語の作り方

コンプライアンス標語は、次のポイントを押さえることで効果的に作成できます。

1.キーワードの選定
まず、キーワードをリストアップし、企業のコンプライアンス意識を高めるような言葉を選びます。動詞や形容詞など、多様な品詞の言葉も検討しましょう。情景が浮かぶ言葉を取り入れると、印象に残りやすくなります。

2.心地よい語感を意識する
五七五調などリズムの良い表現を使うと、覚えやすくなります。

3.表現技法を活用する
倒置法や比喩表現を使うと、ユニークで印象的な標語になります。

倒置法の例:「ルールを守るべき」→「守るべきは、ルール」
比喩表現の例:「ルールは羅針盤、守れば迷わない」

4.肯定的な表現を使う
禁止形を避け、ポジティブな表現で多くの人に受け入れられる標語を作りましょう。以上の方法を活用して、自社に合った効果的なコンプライアンス標語を作成してみてください。

◆コンプライアンス標語の成功事例

参考までに、過去の標語例をご紹介します。
会社内で標語を募ることも、社内全体のコンプライアンス意識を向上させるのでおすすめです。

  1. 偽装した 品も会社も 期限切れ
  2. お前もか 部長も課長も ブルータス
  3. 不正をやめますか? 会社を辞めますか?
  4. 待ったなし 気がついた時は土俵際
  5. 白黒を 見分けられない グレーの目
  6. ミスはある 認める職場が ミス防ぐ
  7. 社会人 モラルがなければ 不適合
  8. 不正の火 炎になったらもう消せず
  9. その不正 みんな見ている 知っている
  10. 手を染めた 色は見えない 罪の色

HTC 第3回コンプライアンス標語コンテスト特選100より

コンプライアンスと企業倫理を浸透させるための活動提案

以下の活動を組み合わせ、持続的に実施することで、企業文化としてコンプライアンスと倫理を定着させることができます。

☑社内研修やワークショップの実施
・定期的にコンプライアンスや企業倫理に関する研修を実施し、従業員の理解を深める。
・ケーススタディやグループディスカッションを取り入れ、実践的な学びを促進する。

☑標語やポスターを活用した啓発活動
・分かりやすく親しみやすい標語を作成し、職場に掲示する。
・ポスターや社内ニュースで、倫理的行動の重要性を伝える。

☑企業理念の再確認と共有
・経営層からのメッセージを定期的に発信し、企業の価値観を従業員と共有する。
・日常業務と企業理念が結びつくような事例を社内で紹介する。

☑社内報やSNSでの情報発信
・社内報やインターナルSNSを通じて、コンプライアンス関連の情報を継続的に発信する。
・コンプライアンスにまつわる成功事例やヒントを共有する。

☑匿名の相談窓口の設置
・コンプライアンス違反や疑問について気軽に相談できる窓口を設置する。
・従業員が安心して利用できる仕組みやプライバシー保護を徹底する。

☑倫理週間やコンプライアンスデーの制定
・年に一度、企業全体でコンプライアンスや倫理を見直す特別な日を設ける。
・全従業員が参加できるイベントや表彰制度を活用し、意識向上を図る。

☑現場で活用できるガイドラインの提供
・日常業務で迷わず判断できるよう、具体例を盛り込んだ行動指針を作成する。
・簡単にアクセスできるオンライン版のマニュアルを用意する。

☑リーダー層による模範的行動の実践
・管理職が率先して倫理的行動を実践し、ロールモデルとしての役割を担う。
・部下に対してコンプライアンスを意識させる働きかけを行う。

まとめ

コンプライアンスは、企業が事業を行う上で必ず守らなければならないルールです。違反が発覚すれば、取引先や顧客からの信頼を大きく損ない、経営に大きなダメージを与える恐れがあります。その重要性を正しく理解し、社会から求められる企業の在り方を意識して、トラブルを未然に防ぐことが大切です。

コンプライアンスマニュアルを作成している企業は多いと思いますが、形式的なものや実態にそぐわない内容になっていないでしょうか?本来、企業倫理には、人や組織が目指すべき「理想の姿」と「あるべき姿」が示されているはずです。特にコンプライアンスにおいて大切なのは、「今は完璧でなくても、こんな社員でありたい、こんな職場にしたい」という目標を掲げ、その実現に向けて努力を重ねることです。その意義をしっかり理解し、前向きに取り組んでいきましょう。