セクハラ発覚時の企業の対処は?懲戒解雇などの処分の種類について解説!

コンプライアンスが重視される社会となり、どの企業でもモラルを重んじ始めてきました。もし社内でセクハラ(セクシャルハラスメント)が発覚した場合、企業は加害者への懲戒解雇などの処分を、どのように判断し実施する必要があるのでしょうか。

本記事では、セクハラの懲戒解雇やおもな処分方法についてを特集しました。各段階によって、どのような処分を下すのが公正なのかを解説します。

目次

セクハラでの懲戒解雇などの有効要件

もし企業内でセクハラと疑わしい行為が発覚した場合には、おそらく多くの企業では規則として記された方式に則り、適正な処分を決定することになるでしょう。

セクハラをした加害者への懲戒処分を実施する際、要件と種類がどのレベルに当てはまるかを検討しなくてはなりません。

就業規則に懲戒規定が定められている

セクハラでの懲戒処分を実施するには、企業が定めている就業規則の中で、懲戒に関する規定がある場合に限定されます。

懲戒処分の種類についても、就業規則内に明記された内容を基準にしなくてはなりません。

就業規則上の懲戒事由に該当する

セクハラの加害者の行為が、懲戒解雇などの処分に該当することが条件です。その際、就業規則において定められた各懲戒事由のいずれかに該当しなくてはなりません。

懲戒処分の合理性および相当性が認められる

厚生労働省が定めている「労契法15条(懲戒)、16条(解雇)」により、セクハラとして相当性が認められる内容である場合です。セクハラの疑いがある従業員の行為が、客観的に判断して社会通念上相当と認められなければ、懲戒処分は無効となります。

セクハラでの懲戒処分の種類

一般的なセクハラは、相手の意に反するような性的言動を対象としています。

どのような行為がどの程度の罪の重さになるのかは、大きく3段階レベルで区分できるでしょう。

  • 刑事上のわいせつ罪に該当する行為
  • 民事上の不法行為
  • セクハラ指針に該当する行為

セクハラ指針とは、厚生労働省が定めたもので、正式には「事業主が職場における性的言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置についての指針」と呼ばれるものです。

職場で起こるセクハラとして認定し解決できる段階であれば、多くの企業はセクハラ指針に則って、以下のような懲戒処分を定めていると考えられるでしょう。

  • 戒告・訓告
  • 譴責
  • 減給
  • 出勤停止
  • 降格
  • 普通解雇・諭旨解雇
  • 懲戒解雇

戒告・訓告

戒告と訓告は、セクハラ加害者の従業員に対して、文書によって注意を促す懲戒処分を指します。処分の中では、最も低い処分です。

始末書などの提出を求めない「厳重注意」「注意勧告」と思えばよいでしょう。企業によって名称をいくつかに表現しますが、ほとんど同じ意味だと考えられます。

ただし、各企業の方針によるものなので、始末書や顛末書などの提出を求めるよう就業規則で定めている場合もあり得るでしょう。

譴責(けんせき)

譴責(けんせき)処分も、懲戒処分の中では比較的軽い部類です。

就業規則違反などに対して、始末書の提出を求めて厳重注意をします。譴責処分は、その対象となる従業員への経済的不利益を与えることはしません。

ただし、その後の昇格・昇給などの査定への影響は考えられます。

減給

減給とは、企業が処罰として従業員の給料を、一定期間だけ減らす処分です。始末書提出とともにおこなわれ、減給額は、労働基準法第91条により、以下のいずれかで制限することになっています。

  • 1回あたりの減給額として、平均賃金(1日分)の5割以下
  • 減給額の総額より、1賃金支払期の賃金総額の1割以下

出勤停止

出勤停止とは、企業側から、セクハラの加害者従業員の出勤を一定日数にわたり停止するものです。始末書の提出の上、出勤停止期間中の日数分の賃金は発生しません。出勤停止の期間については、その上限は就業規則により任意に定められます。

一般的に見られるのは、1〜2週間程度です。

降格

降格とは、企業がセクハラ加害従業員の、現状での社内地位・資格等級を下げる処分です。課長であれば、係長に降格するといった方法を取ります。

当然、基本給の減額、役職手当の減額、もしくは不支給となる場合も考えられるでしょう。

普通解雇・諭旨解雇

普通解雇は、懲戒解雇よりも軽い処分と見なされ、従業員の能力不足や協調性の欠如、就業規則違反行為、余剰人員の整理の必要性を理由とした場合に該当します。

また、ほぼ同類なものに「諭旨解雇(ゆしかいこ)」があり、これも一つの処分です。この場合は、懲戒解雇相当に値するものの、本人に反省が認められ、解雇事由を本人へ説諭した上で、退職届提出を勧告します。

仮に当事者が、諭旨解雇勧告に応じず退職届を提出しない場合、懲戒解雇と見なされます。

懲戒解雇

懲戒解雇は、企業が処罰として強制的に従業員を解雇処分するものです。懲戒解雇の処分となった従業員に対しては、退職金支給がありません。懲戒処分の中では、最も重い厳罰・制裁罰といえます。

また、解雇予告については労働基準法の規定が適用され、労働基準監督署長の除外認定を受けない限りは、実施しなければなりません。

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セクハラでの懲戒解雇をする手続き

職場にてセクハラはもちろんのこと、パワハラ、マタハラなども含めたハラスメントに該当する行為が発覚した場合、企業は懲戒解雇などの処分を下す権利があります。

ただし、加害者をどの程度の段階の処分にするのが妥当なのかは、各企業に委ねられているのが現状です。細かなハラスメントの程度による線引きは、一般的に存在していません。

なおさら懲戒処分の手続きについては、適切な手順を踏むことが重要です。

  1. すでに規定として社内に明示されていること
  2. 被害者と加害者を隔離する
  3. 公正な判断の基に慎重な調査をする
  4. 弁明の機会の付与をする
  5. 懲戒委員会を設立し内容検討をする
  6. 処分内容を通知する

①すでに規定として社内に明示されていること

まずは、就業規則にて懲戒処分の種類と事由が明記されていることが前提となります。

内容についても、研修を設けることや社内で閲覧可能な場所に保存するなど、明示する努力義務が生じます。

②被害者と加害者を隔離する

セクハラの疑惑や被害申告があった場合、即刻検討すべきことは被害者と加害者の隔離です。たとえ軽微なケースであろうと、企業側としては、トラブルが発生して職場環境がさらに悪化しないために、両者を隔離できる環境を考慮しなくてはなりません。

方法としては、別の事業所や部署に配属することや、調査が済むまで双方を出勤免除とし、自宅待機といったものがあげられるでしょう。

とくに被害者への配慮には気をつけなくてはなりません。

③公正な判断の基に慎重な調査をする

企業側としては最終判断をいきなり下すのではなく、事実関係を調査する必要があります。

本人および関係者からも話を聞き、客観的証拠を確認しなくてはなりません。もし調査を疎かにし証拠不十分なまま処分を下すと、名誉棄損になる恐れがあります。必ず5W1Hに基づいて記録を残し、正当な調査結果から処分内容を決定させることです。

そのため、調査は慎重に公正であることが欠かせないでしょう。

④弁明の機会の付与をする

セクハラの疑惑がある当事者への弁明の機会の付与が必要です。

処分をするかどうか以前に、当事者に事実確認や反論の機会を与えます。おそらく就業規則などでも、弁明の機会について規定している場合がありえるでしょう。

ルールを遵守するのが大前提となり、適切に進行させないと懲戒無効の可能性があります。就業規則に弁明の規定がない場合でも、労使間トラブル回避のためにも、弁明の機会を付与することも珍しくありません。

方法としては、書面、面談などでおこない、正確に記録しておくことが重要です。

⑤懲戒委員会を設立し内容検討をする

懲戒委員会は、懲戒処分の決定を下すために公正な行為をします。

事実確認、調査、ヒアリングといった内容を担う機関です。構成人数やルールは企業ごとで異なりますが、必ず就業規則にて懲戒委員会開催の旨が明示されていなくてはなりません。セクハラの疑惑が浮上したら、調査結果や弁明の内容などを基にして、就業規則に記載された事由に該当するかを検討します。

処分内容の妥当性、あるいは情状酌量の余地なども考えて決定することになるでしょう。複雑な案件であれば、専門家や第三者も取り入れて検討することがあります。

最終的に複数の協議によって判断されるのが一般的です。

⑥処分内容を通知する

委員会にて最終決定した処分内容を加害者本人に通知します。

書面を作成して本人へ手渡しするのが一般的です。

そこには懲戒処分の事由、就業規則の根拠、処分内容についての説明があります。

まとめ

セクハラの影響は、企業が適切で公正な対応を速やかにおこなえるかにかかってきます。その内容によって早い時期に収束できれば、トラブルがますます長引くこともあるのです。

まずは、自分の勤務先の就業規定を確認し、セクハラを含めたハラスメントに対する措置をどのように考えているのかを理解しておく必要があります。常識のある企業なら、今回解説した内容は基本としてしっかり規定化されているはずです。

懲戒解雇に値するか否かの段階や程度についても、可能であれば事例を閲覧しておくことをおすすめします。