【自治体DX】推進リーダーに必要な役割と3つのスキル

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少子高齢化や労働人口の減少が進む中、自治体は限られた人員で多様化する住民ニーズに応える必要があります 。この課題解決の鍵となるのが、デジタル技術を活用して業務や組織を変革する「自治体DX(デジタルトランスフォーメーション)」です

しかし、現場では「何から始めるべきかわからない」「人材が不足している」という悩みが尽きません 。DXを成功させるには、単なるツール導入ではなく、現場と経営層、外部専門家をつなぎ、変革をリードする人材が不可欠です

本記事では、自治体DXの中核を担う「DX推進リーダー」に焦点を当て、その役割やスキル、育成のポイントを解説します。

目次

自治体DXの本質とリーダーの重要性

なぜ今、専任の「DX推進リーダー」が必要なのでしょうか。まずはDXの定義を整理し、リーダーが求められる背景を解説します。

「デジタル化」と「DX」の違いは「目的」にある

よく耳にする「デジタル化」と「DX」ですが、この二つは似て非なるものです。デジタル化はあくまで「手段」であり、DXはその先にある「変化」を目的としています。

両者の違いを整理すると以下のようになります。

項目 デジタル化 DX
定義 既存の業務フローをそのまま電子化する デジタル技術を活用し、業務や組織の在り方を抜本的に変革する
具体例 ・神の申請書をWebフォームにする
・ハンコを電子決裁にする
・AIチャットボットで24時間対応を実現する
・データを分析して新たな政策を立案する
目的 業務効率化 住民サービスの向上、行政の効率化、新たな価値の創出

これまでのやり方にこだわらず、デジタル技術を使って「もっと良い方法はないか」と考えられる人こそが、今求められている「DX推進リーダー」なのです 。

現場・経営層・外部をつなぐ「橋渡し役」

DX推進リーダーの最大の役割は、異なる立場の人々をつなぐ「橋渡し役」になることです 。

自治体のDXプロジェクトにはいろいろな人が関わります。

  • 上層部・経営層(首長・幹部): ビジョンや方針を決定する
  • 現場職員: 実務を担い、課題を抱えている
  • 外部人材・ITベンダー: 専門的な技術やノウハウを提供する

例えば、ITベンダーの専門用語が現場に伝わらなかったり、逆に行政特有のルールがベンダーに伝わっていなかったりすることは珍しくありません。DX推進リーダーは、「業務(行政)」と「IT」の両方を理解し、コミュニケーションのギャップを埋めることで、プロジェクトを円滑に進める役割を担います

DX推進リーダーに求められる3つのスキル

リーダーは必ずしもプログラミングができるエンジニアである必要はありません。重要なのは、以下の3つのスキルをバランスよく持っていることです

1. 業務プロセス改革(BPR)に関するスキル

DXを進めるにあたっては、今の業務手順をそのままシステム化するのではなく、まず「そもそもこの業務は必要なのか」「手順を最適化できないか」と問い直す視点が必要です 。具体的には、現在の業務フローを可視化してムダを洗い出し、業務改革に向けた最適化手法を用いてプロセスそのものを見直す力が求められます 。このように業務をスリム化した上でデジタルを導入する設計力が、DXの成功のカギとなります。

2. デジタル技術(IT)への理解と活用力

AIやRPA、クラウドといった現代の主要なデジタル技術について、「何ができて、何ができないのか」という基本知識を持つことも欠かせません 。ただし、職員自身がシステムを開発できる必要はなく、重要なのは活用力です。数ある技術の中から自庁の課題解決に最適なツールを選び抜く「目利き力」や、システム開発を委託する際にベンダーへ的確に要件を伝え、納品物を正しく評価する「発注スキル」が、リーダーには強く求められます。

3. 対人スキル(コミュニケーション能力)

DXは従来の慣習や組織文化の変革を伴うため、現場からの抵抗や摩擦が少なからず発生します。そのため、関係者の不安を取り除き、協力を引き出すコミュニケーション能力が不可欠です 。リーダーは部署横断的な調整を行って合意形成を図るとともに、職員の意識を変えて主体的な行動を促す「巻き込み力」を発揮する必要があります。

この3つのスキル、すなわち「業務」「IT」「人間」の要素を組み合わせることで、リーダーは組織をつなぎ、DXを力強く推進する原動力となります 。

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DX推進の具体的なステップと組織体制

スキルを持ったリーダーが実際にDXを進める際、どのような手順と体制で臨めばよいのでしょうか。

機運醸成から実行までの4ステップ

DX推進は、以下の4つのステップで段階的に進めることが推奨されています

ステップ 1
組織全体の意識改革と土壌づくり
トップの宣言や職員研修を通じて、なぜDXが必要なのかを組織全体で共有し、変化を受け入れる土壌を作ります。
ステップ 2
目指す未来の設計図(ビジョン)を描く
自治体として目指す「ありたい姿」を明確にし、実現に向けた具体的な戦略と工程表(ロードマップ)を策定します。
ステップ 3
変革を牽引する強力なチームづくり
CIO(最高情報統括責任者)や専任部署を設置して体制を整えます。内部で不足する知見は、外部専門家を登用して補完します。
ステップ 4
小さく始めて大きく育てる実践サイクル
柔軟な判断を行う「OODA(ウーダ)ループ」も取り入れて実行します。まずは特定の業務で小さく成功させ、全庁へ広げるのが定石です。

部署の壁を越えたチームビルディング

DXは特定の部署だけで完結するものではありません。縦割りの壁を越え、役所全体で取り組む体制づくりが重要です 。

先進的な自治体では、以下のような工夫で推進体制を強化しています。

  • 若手の意見を取り入れる: 係長級以下の若手職員でワーキンググループを作り、現場のリアルな意見を吸い上げる 。
  • 手上げ方式での募集: 年齢や部署を問わず、意欲のある職員を「DX推進員」として募り、モチベーションの高いチームを作る 。
  • 兼務職員の配置: 各課の職員がDXのチームを兼務し、自分の部署とのパイプ役になる 。

このように、DX担当、現場のリーダー、外部の専門家が連携し、「ワンチーム」となることが成功の秘訣です。

知識を定着させ、実践力を養うには

DX推進リーダーには幅広い知識と実践力が求められますが、多忙な業務の中でこれらを習得するのは容易ではありません。

効率的にスキルを身につけるには、体系化された研修プログラムの活用が近道です。特に、時間や場所を選ばない「eラーニング」は、自治体職員にとって有効な学習手段となります。

  • 自分のペースで学習可能
    業務の合間や移動中など、スキマ時間を活用して少しずつ進められるため、通常業務を圧迫しません。
  • 繰り返し視聴で定着
    一度では理解しにくい専門用語や複雑な手順も、わかるまで何度でも見返すことで知識を定着させることができます。
  • 体系的なカリキュラム
    断片的な情報収集ではなく、DXの基礎から具体的な推進手順までを順序立てて網羅的に学べます。

自律的に学習を進められる環境を整えることは、組織としての重要な人材投資といえます

まとめ

自治体DXは、持続可能な行政サービスを実現するための不可欠な取り組みです。その成否は、デジタル技術と現場業務をつなぎ、変革をリードできる「DX推進リーダー」の存在にかかっています

リーダーには、業務改革の視点、デジタルの知識、そして人を動かす対人スキルが求められます。これらは一朝一夕には身につきませんが、適切な学習と実践の場を提供することで、着実に育成することが可能です

まずは組織全体でDXの必要性を共有し、意欲ある職員が学び、挑戦できる環境を整えることから始めてみてはいかがでしょうか。その一歩が、職員の「働きがい」と住民の「満足度」を高める未来へとつながります