医療事務スタッフ向け研修の目的と効果とは?具体的な研修内容を解説

病院やクリニックを円滑に運営するには、医療事務スタッフへの教育が欠かせません。適切な研修によってスタッフの対応力やスキルが向上すると、ミスの削減や業務スピードのアップ、患者満足度の向上などに繋がります。本記事では、医療事務スタッフ向けの研修を行う目的や効果、具体的な研修内容についてご紹介します。効果的に研修を行うポイントも解説するので、あわせて参考にしてみてください。

目次

医療事務スタッフ向け研修の目的

医療事務スタッフ向けの研修をする主な目的は、職員の業務知識やコミュニケーションスキルを統一することです。医療事務スタッフの知識やスキルは、職員によって差があります。口頭指導やOJTのみによる人材育成では、教育担当の能力に依存しやすく、成長度合いに差が出るというデメリットがあります。そこで、体系的な研修カリキュラムを作成して順序立てて学習することにより、個人の資質に頼らない一貫した人材育成が可能です。

また、学生から社会人になったばかりの人や他業種から未経験で転職してきた人、他院で経験を積んだ人など、採用時点での能力もさまざま。仕事への姿勢や取り組み方も異なるため、研修を通じて病院の理念や目標を共有し、目線合わせをすることも重要です。

医療事務スタッフ向け研修がもたらすメリット

医療事務スタッフに研修を行うことには、さまざまなメリットがあります。研修によって得られる効果を解説します。

業務のスピードアップ

医療事務スタッフ研修を行うことは、業務のスピードアップに繋がります。実務経験が浅いスタッフは、レセプトの算定漏れ・返戻などのミスや、窓口対応がうまくいかずクレームとなることも考えられます。また、ベテランのスタッフであっても、診療報酬の改定や業務内容の変更などの、知識のアップデートが追いついていない場合もあります。

このような課題を解決するために実務的な研修を導入することで、スタッフの能力を底上げし、事務的なミスや患者とのトラブルを防ぐことが可能です。作業のやり直しを減らし、先輩職員へ質問する時間も削減できるため、スピーディーに業務をこなせるようになります。さらに、医師や看護師とスムーズに連携できるようになると、病院・クリニック全体が効率的に運営できます。

患者満足度の向上

医療事務向けの研修を行うことによりスタッフの対応力が強化されると、患者満足度のアップが期待できます。患者が来院したときに最初に接するのは、窓口のスタッフです。たとえ医師の診療や設備に満足していても、窓口の対応ひとつで病院全体の評価が左右されることも少なくありません。病院への口コミでは、「受付の人の態度がよくなかった」「会計待ちで長時間かかった」など、窓口業務に対する評価が目立つこともあります。

研修を通じて接遇スキルや事務処理能力を向上させることで、スムーズかつ丁寧な対応ができるようになり、患者の満足度アップが期待できます。さらに、リピート率の上昇や家族・友人への紹介が増えることで、来院数増加や病院全体の評価アップにも繋がります。

医療事務スタッフのモチベーションアップ

研修を通して医療事務スタッフのスキルが上がると、仕事に対するモチベーションも高まります。業務中にミスが続いたり、クレーム対応が重なったりすると、心に余裕がなくなり自信を失ってしまう可能性も。しかし、研修によって応対スキルが向上し、患者から感謝の言葉をもらえるようになると、仕事に対するやりがいや達成感を得られるようになります。

さらに、教育担当の職員にとっても、体系的なカリキュラムを新人スタッフが学べる環境にはメリットがあります。研修がしっかりと整備されていることで、指導担当が教育にかける時間や労力が削減され、職員全体の負担が軽減されます。医療事務スタッフへの研修は個人のモチベーションを高めるだけでなく、職場全体のチームワークや働きやすさ向上にも関わる重要な取り組みです。

医療事務スタッフ向けにおすすめの研修内容

医療事務スタッフ向けの研修テーマの一例を紹介します。個人のスキルによって実施するべき研修内容は異なるため、レベルにあわせてカリキュラムを組みましょう。

基礎知識研修

病院・クリニックの基礎的な知識を学ぶ内容として、以下のような研修テーマがあげられます。

  • 病院の理念や行動指針
  • 院内ルール・役割分担
  • 個人情報の保護について
  • ハラスメント防止
  • 基本的なパソコンスキル(Microsoft Excel・Wordなど)

入職したばかりの新人スタッフには、病院の理念や行動指針、地域社会へどのように貢献するかなど、病院の方針を理解してもらうのは非常に重要です。院内ルールや役割分担などの実務的な内容も周知徹底しておきましょう。また、個人情報の取り扱いやルールについても研修でしっかりと取り上げるのがおすすめです。

ハラスメント研修は、働きやすい職場環境を作るために必要な項目です。研修で取り上げることで、ハラスメント問題への理解を深め、職場への安心感を高められます。

医療事務スタッフの能力によっては、WordやExcel、タイピングなど基本的なパソコンスキルに関しての研修を取り入れるのも推奨されます。また、電子カルテシステムなど専用のソフトを導入している場合は、操作方法を共有しておきましょう。

コミュニケーション・マナー研修

コミュニケーションやマナーに関しては、次のような研修内容があげられます。

  • 受付の流れと業務フローの確認
  • 医療接遇マナー
  • クレーム対応
  • 電話応対力の向上
  • ビジネスマナー・ビジネス文書

窓口業務は、病院の評価に直結する重要な仕事です。身だしなみや言葉遣いなどの社会人としての基本的なビジネスマナーはもちろん、医療機関に求められる接遇マナーをしっかりと理解してもらいましょう。また、受付事務の流れや保険証の確認方法など、窓口業務のフローを学習することも大切です。

また、クレームの基本的な対応方法やポイントを取り上げるのもおすすめです。具体的な応対の仕方をロールプレイングなどでイメージできると、効果的に学習できます。

実務(レセプト・クラーク)研修

実務の研修テーマの一例としては、次のような内容があります。

  • 医療保険制度・医療法規
  • 基本診療料の算定・公費負担について
  • 新年度の診療報酬改定
  • レセプトの書き方・点数表の読み方
  • 基本診療料の算定
  • 投薬料の策定
  • 注射料の算定
  • 検査料の算定
  • 処置・リハビリテーションの算定
  • 手術・麻酔の算定
  • 画像診断料金の算定
  • 入院料の算定
  • レセプト点検について
  • 査定・返戻、算定漏れの対策
  • 医学管理や在宅医療

レセプト業務やクラーク業務などの実務的な研修テーマについては、病院・クリニックの規模や診療科目にあわせてカリキュラムを作成しましょう。新入スタッフ向けには、基礎編として医療保険制度や基本診療料の算定方法などを学習するのがおすすめです。経験者向けには、より高度な算定業務、査定漏れの対策など、スキルアップを狙う研修テーマが適しています。

また、診療報酬改定に関する研修は全スタッフにとって重要な内容です。改定内容を正しく理解するためにも、改定ごとに定期的な勉強会を実施するのがおすすめです。

おすすめ

医療事務研修

医療事務の業務には、外来の受付、医療費の請求・入退院の手続などを行う「受付業務」、患者のカルテから、診察の内容、検査の種類、薬の量などをコンピュータに入力して点数化する「会計業務」、そして、疾病名に対応した治療・投薬や療養の基準に基づいてレセプト(診療報酬請求明細書)を作成・チェックする「レセプト業務」の3大業務があります。
医療事務研修では、これら実務の進め方を詳しく解説する他、事務職を務める上でのモチベーションの高め方や生産性向上に向けての工夫についても説明します。

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医療事務スタッフ向け研修を効果的に実施するポイント

医療事務スタッフへの研修は、実施しただけで終わると知識が定着化しない可能性があります。研修を成功させるためには、次のポイントを意識してみてください。

定期的に研修を開催する

医療事務スタッフへの研修は、定期的に開催するのがおすすめです。特に医療接遇スキルやコミュニケーション力については、日々の業務に追われることでスタッフのモチベーションが下がることも。半年に1回、1年に1回など、定期的に見直すきっかけを作ることで、スタッフの応対品質を維持できます。

また、実務的な研修についても定期的に実施することが推奨されます。診療報酬改定などの必須項目はもちろん、熟練度や年次にあわせて新しい知識を身に着けてスキルアップすることも重要です。

研修後のフォローアップを行う

医療事務向けの研修を実施したあとは、フォローアップを行うことが大切です。研修を受講して理解したつもりになっていても、いざ現場に出ると疑問点が出ることはよくあります。「研修で学習したはず」と周りが十分にフォローできていないと、研修で得た知識が身に付かず、実務に活かされない可能性があります。

知識を定着させるためのフォローアップの方法としては、研修内容のチェックリストの活用や、指導担当者がフィードバックを行うなどがあります。より知識を定着させたい場合は、一定期間が経過したあとにフォローアップ研修を行うのもおすすめです。

社外講師やオンライン研修を活用する

医療事務スタッフの研修運営や講師を院内の人員だけに任せると、リソースが不足する場合があります。また、研修を受講するスタッフの勤務形態や勤務時間によっては、決められた研修時間に参加するのが難しいこともあるでしょう。

このような課題への対策としては、社外講師やオンライン研修を活用するのがおすすめです。医師や看護師の負担を軽減しつつも、効果的に学習できます。オンライン研修は、受講するスタッフの都合に合わせやすく、参加までのハードルも低くなります。病院・クリニックの課題にあわせて柔軟に受講内容を選べる場合もあるため、検討してみてください。

医療事務スタッフの教育には研修による体系的な学習が重要

本記事では、医療事務スタッフ研修の目的や具体的な研修内容、研修を効果的に実施するポイントを解説しました。医療事務スタッフ向けの研修は、病院やクリニックの業務をスムーズに進めるために欠かせない取り組みです。研修を通じてスタッフのスキルを統一し、業務のスピードアップや患者満足度の向上に繋げましょう。また、適切な研修テーマの選定や実施後のフォローアップを行うことで、より質の高い教育体制を整備できます。今回ご紹介した内容を参考に、効果的な研修を計画・実施してみてください。