2027年4月施行|育成就労制度で変わる外国人雇用のルール

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少子高齢化による深刻な労働力不足を背景に、日本における外国人雇用のあり方が劇的な転換期を迎えています。長年運用されてきた「技能実習制度」は発展途上国への技能移転を主目的としていましたが、実態として国内の人手不足を補う労働力として活用されてきた側面があり、目的の形骸化が指摘されてきました。

こうした状況を改善するため、2024年に成立した改正入管法等により、技能実習制度に代わる新たな在留資格「育成就労」が創設されました。新制度は「人材育成」と「人材確保」を目的として掲げ、より実効的な労働力の定着を目指しています。一方で、不法就労助長罪の厳罰化など、企業側に求められる法的責任はこれまで以上に重くなっています。

本記事では、人事・法務担当者が知っておくべき育成就労制度の概要から、特定技能への接続、そして企業を守るための実務上の防衛策までを詳しく解説します。

目次

新制度「育成就労」の全貌|技能実習との決定的な違い

育成就労制度は、一定の技能を有する人材を育成し、最終的に「特定技能1号」水準の技能を修得させることを目的としています。従来の技能実習制度では原則として認められていなかった「本人意向による転籍」が一定の条件付きで容認されるなど、外国人労働者の権利保護が大幅に強化されたのが特徴です。

具体的にどのような点が変化したのか、以下の比較表で確認してみましょう。

項目 技能実習制度(現行) 育成就労制度(新制度)
制度の目的 主に発展途上国への技能移転 人手不足の解消・人材育成と確保
在留期間 原則3年(最長5年) 原則3年(特例で最大4年まで延長可)
転籍の可否 原則不可 ①やむを得ない事情②一定要件を満たす本人の意向
語学力(開始時) 特になし 日本語能力試験N5相当以上
関係機関 監理団体 監理支援機関(外部監査人の設置が必須)

表1:技能実習制度と育成就労制度の主な違い

育成就労制度においては、政府が「育成就労産業分野」を定め、各分野の受入れ見込数を設定します。また、従来の「技能実習計画」は「育成就労計画」に改められ、外国人が送出機関に支払った費用額が適正であるかといった点も認定基準に含まれるようになります。

特に重要な変更点は「転籍」の緩和です。同一機関での就労期間が1〜2年の範囲内で設定された期間を超えており、かつ技能検定基礎級や日本語能力(A1〜A2相当)の試験に合格している場合、同一業務区分内での転籍が可能となります。企業は「選ばれる職場」としての環境整備をより一層意識しなければなりません。

業界別ケースメソッドで学ぶ在留資格の適正判断

外国人雇用においては、従事させる業務内容と保持している在留資格が適合しているかを確認することが不可欠です。適合しない業務に従事させた場合、企業は不法就労助長罪に問われるリスクがあります。

ここでは、主要な業界ごとの注意点を見ていきましょう。

1. 建設業・物流業

建設業界や運送業界では、現場作業のニーズが高い一方で、在留資格ごとの制限が複雑です

  • 建設業:「経営・管理」資格を持つ外国人が経営業務の管理責任者に就任したり、「技術・人文知識・国際業務(以下、技人国)」を持つ者が専任技術者として勤務したりすることは可能ですが、建設業法上の常勤性要件を満たす必要があります 。
  • 物流業:倉庫内作業やトラックドライバーとしての就労は、これまで居住系資格(永住者や日本人の配偶者等)や特定技能に限定されていました 。しかし、令和6年3月より特定技能の対象分野に「自動車運送業」等が追加され、活用の幅が広がっています 。

2. 飲食店事業

飲食店では、接客や調理、マーケティングなど多岐にわたる業務が発生します。

  • 接客・調理:一般的に「技人国」での接客は認められにくく、現業作業を伴う場合は「特定技能」や「技能(調理師)」、または資格外活動許可を得た留学生のアルバイトが主流です。
  • 風俗営業の禁止:特に注意すべきは、留学生や家族滞在の資格外活動許可者が、スナックやバーなどの風俗営業店で働くことは、たとえ清掃や皿洗いであっても固く禁じられている点です。

3. 介護・農業

これらの分野は、制度設計が非常に複雑であり、目的ごとに複数のルートが存在します。

項目 特定技能 在留資格「介護」 技能実習 EPA(経済連携協定)
主な目的 人手不足解消 専門家の招聘 技能移転 経済活動の連携強化
就労制限 訪問系サービス不可 制限なし 訪問系サービス不可 訪問系サービス不可
転職の可否 可能 可能 不可 不可
必要資格/試験 技能・日本語試験合格 介護福祉士国家資格 なし(修得目的) 看護師・介護福祉士候補

表2:介護分野における主な受入れルートの比較

農業分野においても、直接雇用のほか、JA等が請負事業主となって複数の農家で作業に従事させる「派遣形態」や「請負形態」が認められていますが、指揮命令系統がどこにあるのかを明確にする必要があります。

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【対策】厳罰化された不法就労助長罪から会社を守る手法

改正入管法の施行に伴い、不法就労を助長した企業に対する罰則が大幅に強化されました。これは、悪質なケースだけでなく、過失(不注意)による確認不足であっても適用される可能性があるため、法務・コンプライアンス部門は厳重な注意を払わなければなりません。

不法就労助長罪に問われた場合、従来の「3年以下の懲役又は300万円以下の罰金」から、「5年以下の拘禁刑又は500万円以下の罰金」へと引き上げられます。罰則だけでなく、社会的な信頼失墜や、今後の外国人受入れの停止といった甚大なダメージを負うことになります。

企業が講ずべき具体的な防衛策は以下の通りです。

  • 在留カードの徹底確認:採用時だけでなく、在留期間の更新タイミングをシステム等で管理し、期限切れ(不法残留)を未然に防ぐインフラを構築する必要があります。
  • 資格外活動の範囲遵守:留学生や家族滞在者を雇用する場合、週28時間以内(長期休業期間は1日8時間以内)の労働時間制限を厳守し、オーバーワークをさせない管理体制が求められます。
  • 税金・社会保険の適切な納付:永住許可の要件が明確化され、税金や社会保険の滞納がある場合は、永住許可の取消事由に追加されることとなりました 。従業員の私生活に関わる部分ではありますが、企業側の指導不足が従業員の在留資格に悪影響を及ぼし、結果として貴重な戦力を失うリスクに繋がります。

新制度では、外国人育成就労機構による相談援助業務や、監理支援機関への外部監査人の設置など、チェック体制も強化されます。不適切な送出や賃金未払い、失踪問題といった過去の技能実習制度で発生した問題を繰り返さないよう、根本的な企業体質の改善が試されています。

罰金500万円を回避!法令遵守の「最短ルート」

ここまで解説してきた通り、外国人雇用は単なる「人手不足の補填」ではなく、緻密な法的手続きと適正な労務管理が求められる高度なマネジメント業務です。しかし、刻々と変わる最新の法令や、業界ごとに異なる細かな要件を自社だけで完全に把握し続けるのは容易ではありません。

そこで活用したいのが、行政書士などの専門家が監修するeラーニング講座です。

本講座を受講することで、以下のようなメリットを享受できます。

  • 改正法への完全準拠:育成就労制度や特定技能の最新動向に基づいた、正しく適法な申請手続きのノウハウを習得できます。
  • 業界特有のリスク回避:建設、運送、飲食、介護など、各業界で実際に起こりやすいトラブル事例をケースメソッド方式で学べるため、自社に即した防衛策が明確になります。

講座では、人事担当者が知っておきたい採用の基本ステップはもちろん、税理士や社労士が関与すべき外国人の税金や社会保険の仕組みまで、多角的な視点で網羅されています。

外国人材にとって「選ばれる国・企業」となるためには、まずは受け入れる側が正しい知識という名の「インフラ」を整えることが第一歩となります。

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まとめ

これまでの「技能実習」から「育成就労」への転換は、単なる制度の名称変更ではありません。それは、外国人を「期限付きの労働力」としてではなく、共に成長し、日本の産業を支える「大切なパートナー」として迎え入れるという、国を挙げた大きな決意の表れでもあります 。現場を支える皆様にとっては、転籍要件の緩和や特定技能へのスムーズな移行など、覚えるべきルールが増えることに不安を感じる場面もあるかと思います。また、厳罰化された不法就労助長罪などのリスクを考えると、採用一つひとつに慎重にならざるを得ないのが本音ではないでしょうか。

しかし、この新しい仕組みを正しく理解し、社内の管理インフラを整えることは、外国人材にとって「ここで長く働きたい」と思える魅力的な職場へと進化するチャンスでもあります。適正な制度運用は、結果として会社を法的なリスクから守り、持続可能な組織作りへと繋がっていきます。

一歩ずつ、確実に。まずは複雑な制度の「正解」を整理することから始めてみませんか。


※本記事は2026年1月現在の情報に基づきます。