【サクセッションプラン】70:20:10モデルでリーダーの選抜から開発へ
現代のビジネス環境は、かつてないほど混沌とした状況にあります。これまでの日本企業は、現場を支える中堅層の優秀さによって競争優位を築いてきました。しかし、その成功方程式は今、大きな転換点を迎えています。市場の変化が激しく、正解のない時代においては、組織全体の効率性以上に、トップやリーダー層の優秀さが事業の成否を分ける決定的な要因となっているからです。
一方で、多くの企業が「次世代のリーダーが育たない」「適切な後継者が見当たらない」という深刻な課題に直面しています。少子化の影響でリーダー候補となる人材の絶対数が減少するなか、従来の「優秀な人材が自然に現れるのを待つ」という受動的な姿勢では、組織の継続性を担保することはできません。これからの経営において、次世代リーダーの育成は単なる人事施策ではなく、企業の存続をかけた最優先の経営戦略であるといえます。
本記事では、最新の人材開発理論に基づいた、戦略的な次世代リーダー育成(サクセッションプラン)のポイントを詳しく解説します。
後継者育成計画(サクセッションプラン)策定研修
動画数|9本 総再生時間|186分
次世代リーダー育成の重要性を理解し、後継者育成計画(サクセッションプラン)を基礎から実践まで学ぶことを目的とした全3編構成のプログラムです。次世代リーダーの選抜や育成を属人的でなく、戦略的かつ体系的に推進できる知識とスキルを身に着けます。
動画の試聴はこちら目次
- なぜ今、日本企業に「次世代リーダー育成」が必要なのか
- 人は仕事で育つ「70:20:10モデル」の活用法
- リーダー候補を見極めるための「2つの評価モデル」
- 「選抜」から「開発」へ:10年後を担うリーダーの創り方
- まとめ
なぜ今、日本企業に「次世代リーダー育成」が必要なのか

次世代リーダーの育成が急務となっている背景には、市場構造の変化と労働市場の変化という二つの大きな要因があります。
激変する市場環境と「What」を問う決断力
かつての安定成長期においては、決められた方針をいかに効率よく実行するかという「How(いかにやるか)」の能力が重視されてきました。しかし、ビジネスモデルの陳腐化が加速する現代では、「何をなすべきか(What)」という問いに答えを出し、組織を非連続な成長へと導く力が求められています。
このような環境下では、現場の改善を積み重ねるマネジメント能力だけでなく、目的地を定め、自発的な変化を生み出すリーダーシップが不可欠です。過去の成功体験が通用しない場面で、直感と論理を組み合わせて未来を切り拓くリーダーを計画的に輩出できるかどうかが、企業の命運を握っています。
労働力減少時代における「発掘・育成」へのシフト
もう一つの要因は、少子化に伴う深刻な人材不足です。リーダー候補となる若手・中堅層の分母が小さくなっている現状では、限られた人材のなかから優秀な者を選ぶ「選抜」という考え方だけでは限界があります。
これからの組織に求められるのは、潜在能力を持つ人材を早期に見つけ出し、意図的にリーダーへと引き上げる「発掘」と「育成」の仕組みです 。属人的な「たまたま育った」リーダーに頼るのではなく、組織として再現性のある育成プロセスを構築することが、サクセッションプランの核心となります。
人は仕事で育つ「70:20:10モデル」の活用法
リーダーシップは、単なる知識の習得だけで身につくものではありません。世界的な研究によれば、リーダーとしての能力開発に影響を与える要素には明確な比率が存在します。
7割を占める「経験」がリーダーを創る
人材育成の黄金律として知られる「70:20:10モデル」では、学びの7割が「実際の業務経験」から得られるとされています。
-
経験 (70%):経験からの学び
(例:実際の業務経験) -
薫陶 (20%):他者からの学び
(例:上司からのアドバイス) -
学習 (10%):研修からの学び
(例:トレーニング)
この比率が示す通り、優秀なリーダーを育てるためには、座学だけでなく「どのような経験を積ませるか」というアサインメント(配置)のデザインが何よりも重要です。
経験を学びに変える「薫陶(くんとう)」と「研修」の役割
ここで注意すべきは、単に困難な仕事を任せるだけでは「放置」になってしまうという点です。7割の経験を確実に力へと変えるためには、残り3割の「他者からの学び」と「研修」を戦略的に組み合わせる必要があります。
上司は、部下が直面している経験を客観的に振り返らせ、そこから本質的な教訓を引き出すための「薫陶」を与えなければなりません。また、10%の研修によってリーダーシップの理論や思考の枠組みを提供することで、経験から得られる学びのスピードと質を劇的に向上させることが可能になります。これら三つの要素が有機的に繋がることで、初めて次世代リーダーは着実に成長していきます。
現場でリーダーが育つ「戦略的アサイン」のロードマップを構築します。
リーダー候補を見極めるための「2つの評価モデル」
サクセッションプランを策定する際、最大の難関となるのが「誰を候補者にするか」という選抜基準です。多くの企業が陥りがちな罠は、現在のポジションでの業績が高い人だけを候補に選んでしまうことです。
「到達点」ではなく「学習能力」を評価する
将来のリーダーを見極めるためには、評価の視点を大きく変える必要があります。
- 到達点モデル(従来型): 現在のリーダーに共通する特徴を抽出し、その特徴を今持っているかを確認する手法。
- 学習能力モデル(次世代型): 未知の状況や多様な経験から、どれだけ多くのことを学び、自分を変化させられるかを評価する手法。
次世代リーダーに求められるのは、現在の実力そのものよりも、新しい課題に直面した際の「伸び代」や「学習敏捷性」です。若い時期にリーダーとしての資質が表面化していなくても、多様な経験を通じて急速に開花する人材を見逃さないことが、早期選抜の核心となります。
戦略ニーズに合わせた「適者開発」的アサイン
候補者が決まった後の配置の考え方も重要です。従来の配置は、そのポストに最も適した人を置く「適者生存」的なものでしたが、リーダー育成においては「その任務から最も多くを学べる人を置く」という「適者開発」的な発想が求められます 。
| 比較項目 | 適者生存的手法(従来型) | 適者開発的手法(育成重視型) |
|---|---|---|
| 基本的な考え方 | 特定の能力の有無をテストし、振り分ける | 将来必要なものを学ぶことを支援する |
| 選抜の基準 | 過去の経歴から、実力証明済みの者を選ぶ | 経験から学習する能力(伸びしろ)を評価する |
| 配置の目的 | 空いている主要なポストを埋めること | 戦略ニーズに合った人材を開発すること |
| 選抜の方法 | 「何ができるか」で対象を絞る | 「何が足りないか」に着目し広く探す |
| 評価・報酬 | 現在の仕事の業績によって与えられる | 成長や人材育成に関する目標を反映させる |
このように、事業の重要性だけでなく、育成上の必要性を優先して配置を決定する「計画的な人材流動性」こそが、自ら変わり続ける組織を実現する原動力となります。
「選抜」から「開発」へ:10年後を担うリーダーの創り方
理論の理解を実効性のある計画へと落とし込むために、自社の戦略に合わせた具体的なロードマップを策定する必要があります。後継者不在の壁を突破する強力な一手としておすすめしたいのが、e-JINZAI lab.の「後継者育成計画(サクセッションプラン)策定研修」です。
1.世代性の獲得と「自分事」の拡大
エリクソンの発達段階理論に基づき、35歳以上の中年期に重要となる「世代性(Generativity)」の獲得を促します。これは自身の成果を追求する段階から、次世代への価値創出に貢献する段階へとマインドを移すプロセスです。責任を持つ「自分事」の範囲を、自分自身から会社、さらには社会へと段階的に広げ、組織のために何ができるかを問う姿勢を養います。
2.マネジメントを超えた「真のリーダーシップ」
マネジメントの役割が物事を「正しくやる」ことであるのに対し、リーダーシップの本質は「正しいことをやる」ことにあります 。マネジャーが論理によって明日の業績を追う一方で、リーダーは将来の非連続な改革を牽引します。この源泉となるのが、自分自身をリードする(Lead the Self)強固な「根っこ」の確立です。何があっても自分をプッシュできる意志を固めることが、他者や社会を導く土台となります。
3. 実効性のあるサクセッションプラン策定
研修の最終ゴールは、自社独自の実行計画を完成させることです。戦略ニーズに応じたリーダー資質を定義し、70:20:10モデルに沿った具体的な育成シナリオを描きます。事業のポストを埋めること以上に、「育成上必要な経験ができるか」を優先した戦略的なアサインを決定します。また、理想的な配置が困難な場合でも、メンタリングなどのケア体制をあらかじめ組み込むことで、計画の実現性を高めます。
(サクセッションプラン)策定研修
自社に最適な「次世代リーダー輩出の仕組み」を構築
まとめ
次世代リーダーの育成は、一朝一夕に成し遂げられるものではありません。しかし、混沌とした時代だからこそ、明確な意志を持ち、自律的に動くリーダーの存在が組織の生命線となります。
実績だけで判断する「適者生存」の考え方を捨て、未知の課題から学べるポテンシャルを見抜く「適者開発」へと舵を切ること 。そして、現場での「経験」という最大の教師を戦略的に活用し、上司の薫陶と研修でそれを補完すること。このシンプルな原則を地道に実行し続ける組織こそが、次なる時代を切り拓く力を持つことができます。
未来のリーダーを育てる決断は、今日から始まります。まずは自社の育成プランを見直し、ポテンシャルある人材に「新たな挑戦の場」を与えるための具体的な計画を策定してみてはいかがでしょうか。

