【2025年義務化】職場の熱中症対策ガイド|企業が取るべき5つの対策

KEYWORDS 熱中症対策
職場での熱中症対策義務化により、企業は単なる「呼びかけ」ではなく、具体的かつ継続的な施策が求められます。以下の5つの柱を軸に、対策を構築しましょう。
目次
改正の背景と概要|なぜ今、熱中症対策が義務化されたのか?
2025年6月1日、労働安全衛生規則が改正され、すべての事業者に「職場における熱中症対策」の実施が法的に義務化されました。これは、年々深刻化する猛暑と、職場内での熱中症発症件数の増加を受けた重大な法改正です。
厚生労働省の統計によると、直近5年間で熱中症による労働災害は増加傾向にあり、とくに建設業・製造業・運輸業といった現場系職種での被害が顕著です。これまでは努力義務に留まっていた熱中症対策が、法的義務として明文化されたことにより、企業には対策の「実効性」がより厳しく求められるようになりました。
今回の法改正では、以下のようなポイントが定められています:
- 作業場におけるWBGT(暑さ指数)の定期測定と記録
- 作業環境の温湿度管理と冷房・遮熱の実施
- 作業計画の見直しと十分な休憩の確保
- 水分・塩分補給の支援
- 熱中症教育・マニュアルの整備
- 緊急時の通報・搬送体制の構築
これらの取り組みを怠った場合、罰金や是正勧告といった法的処分の対象となることもあるため、「形だけの対策」ではなく、実態の伴った管理体制が必要不可欠です。
次章では、企業がすぐに取り組める具体的な熱中症対策の5つの柱について、詳しく解説していきます。
企業が行うべき熱中症対策【5つの実践ステップ】

2025年からの法改正により、企業には単なる声掛けやポスター掲示にとどまらない、本格的な熱中症対策が求められています。しかし、「具体的に何から始めればよいのか分からない」という声も少なくありません。
この章では、すべての企業が今すぐ実行できる対策を、次の5つの柱に分けて解説します:
- 環境管理対策(温度・湿度の可視化と調整)
- 作業計画の見直しと休憩制度の整備
- 水分・塩分補給の支援
- 教育・啓発とマニュアルの整備
- 緊急時対応・アラート体制の構築
いずれも「難しく見えるが、実は今すぐ始められる内容」ばかりです。次節から、1項目ずつ実践例を交えて詳しくご紹介します。
① 環境管理対策 〜温度・湿度の適正管理〜
対策項目 | 内容 |
---|---|
WBGT値のリアルタイム測定 | センサーを設置し、作業環境の暑さ指数を常時記録・共有。 |
冷房設備の整備 | エアコンやスポットクーラー、遮熱カーテンを導入し、屋内の温度上昇を防止。 |
屋外作業環境の整備 | テントやパラソルで休憩スペースを日陰化。直射日光を遮る工夫。 |
環境ログの提出 | 朝昼夕の温湿度を日報に記録し、異常時には早急に対策を講じる。 |
可視化ツールの活用 | 測定ログをクラウドに保存。スマホやタブレットで現場ごとに確認可能。 |
② 作業計画の見直しと休憩制度
対策項目 | 内容 |
---|---|
暑い時間帯の作業制限 | 外気温が高くなる11時~15時は屋内作業に切り替え。 |
休憩ルールの明文化 | 「45分作業+15分休憩」など、タイマーで時間管理。 |
暑熱順化の導入 | 新入社員や高齢者など、暑さに不慣れな人にはペースを緩やかに設定。 |
業務フローへの対策統合 | 作業計画に「熱中症警戒レベル対応表」を組み込み、リスクを可視化。 |
③ 水分・塩分補給の支援
対策項目 | 内容 |
---|---|
給水環境の整備 | スポーツドリンクや経口補水液、塩分補給タブレットを常設。 |
飲水タイムの明示化 | 「作業開始前」「中間」「終了後」など、明確に時間を指定して習慣化。 |
自販機ラックの設置 | 熱中症対策商品(飲料・タブレット)専用ラックを導入しアクセス性を向上。 |
タイマー・ブザーの活用 | 飲水を忘れがちな現場で、タイマーやブザーで定期的に通知。 |
飲水管理の可視化 | 「○時に1杯の水」など、ポスターや掲示板で視覚的に訴求。 |
④ 教育・啓発とマニュアル整備
対策項目 | 内容 |
---|---|
全社研修の実施 | eラーニング+対面形式で、年1回以上の研修を義務化。 |
応急処置トレーニング | 現場リーダーに対し、熱中症発症時の初期対応を教育。 |
マニュアル整備 | 実際の事例をもとに、チェックリスト付き手順書を作成。 |
全従業員への周知 | 正社員だけでなく、派遣・パート・アルバイトにも教育を実施。 |
⑤ 緊急時対応・アラート体制
対策項目 | 内容 |
---|---|
通報・救護・記録の明確化 | 担当者・通報方法・記録手順をマニュアル化して共有。 |
搬送体制の整備 | AEDの設置場所と搬送ルートを掲示、誰でも対応可能に。 |
警戒レベルの可視化 | 掲示板・ポスター・音声アラートなどで熱中症警戒レベルを周知。 |
勤怠システムとの連携 | WBGT値やアラートを勤怠管理に反映し、自動で注意喚起。 |
違反の罰則と法的リスク
2025年6月の労働安全衛生規則の改正により、企業には職場における熱中症対策の実施が法的に義務付けられました。これに違反した場合、企業や管理者には行政指導から罰金、場合によっては書類送検までのリスクが生じます。
まず、違反が確認された場合は、労働基準監督署による「是正勧告」または「指導票」が出されます。この段階では改善命令と期限が設定され、定められた期日までに改善措置と報告書の提出が求められます。
もし改善がなされず、従業員に熱中症などの健康被害が発生した場合、企業は「安全配慮義務違反」として、最大50万円以下の罰金刑が科される可能性があります。さらに、重大な事故に発展した場合は、企業や経営者が書類送検されるケースも報告されています。
例えば、過去にはWBGT測定を怠っていた工場で作業員が倒れ、調査の結果、熱中症対策が不十分だったとして、事業者に罰金と再発防止命令が下された例があります。
このように、法令違反は企業の信頼失墜につながり、労災認定の可能性や訴訟リスクも高まります。義務化を「罰を避けるため」ではなく、「従業員を守るため」の制度と捉え、適切な対応を継続していく姿勢が求められます。
社内への効果的な周知方法

制度としての熱中症対策を社内に根付かせるためには、制度の理解だけでなく、「行動の定着」までを視野に入れた周知活動が不可欠です。ここでは、効果的な周知のための方法を5つご紹介します。
まず、視覚的に伝える手段として「ポスター掲示」は非常に有効です。休憩所や作業現場入口に、図解入りの熱中症対策フローや対策チェック表を掲示しましょう。
次に、社内メールやチャット、社内SNSを活用した定期的な情報発信も有効です。特に熱中症警戒アラートが出た日には、全社的な注意喚起の通知を自動で送る仕組みを導入すると、即時対応が可能になります。
また、定期的な研修会や朝礼での共有も忘れてはいけません。実際のヒヤリハット事例を紹介しながら、「明日は自分かもしれない」という危機意識を育てましょう。
さらに、現場のリーダー層を巻き込むことがカギです。「毎日の声掛け」「水分補給の確認」「暑熱順化の進捗チェック」など、現場パトロール的な役割を明確にすることで、形式的ではない対策が実行されます。
最後に、月次のPDCAミーティングで、対策の結果と改善点を共有しましょう。現場での「うまくいった」「課題だった」実例を交換し合うことで、社員間でのノウハウが蓄積されていきます。
よくある質問(Q&A)
Q1. 熱中症対策グッズでおすすめは?
A. 現場向けに配布するなら、冷却タオル、携帯扇風機、経口補水液、塩分補給タブレットなどが効果的です。特に、これらをまとめて持ち運べる小型トートバッグに入れた「熱中症キット」として配布する企業も増えています。
Q2. 工場や物流の現場で、具体的に何をすればいい?
A. WBGT測定の常時実施、作業時間の調整(例:朝型シフト)、スポットクーラー設置、水分補給タイムの明示、アラートの発信、応急処置訓練の実施などが有効です。
Q3. 暑熱順化ってどうやって進めるの?
A. 入社直後や暑くなり始めの時期には、最初は30~50%の作業量に抑え、徐々に慣らす方法が推奨されています。1~2週間をかけて段階的に負荷を上げていくことで、安全に体を暑さに慣らせます。
Q4. 熱中症マニュアルには何を載せればいい?
A. 作業員の症状別対応フロー、応急処置方法、救急要請のタイミング、対応者の連絡先、備品の使用方法(AEDなど)などを写真付きで掲載しましょう。チェックリスト形式にして掲示するのが効果的です。
まとめ
2025年6月から施行された職場の熱中症対策義務化は、全業種・全事業所に該当する重要な法改正です。
本記事では、
- なぜ義務化されたのか(背景と法令)
- 企業が行うべき5つの具体策(表と実践方法)
- 違反時に起こる法的リスク
- 社内への効果的な周知のポイント
- よくある疑問と実用的な回答
を総合的に解説しました。
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