薬局DXとは?電子処方箋が変える薬剤師の仕事

医療のデジタル化が加速する中、薬局にも大きな変革の波が押し寄せています。電子処方箋の導入が全国規模で本格化すれば、紙の処方箋に依存してきた従来の「門前薬局」モデルは終焉を迎え、薬局の存在意義そのものが問われる時代に突入します。
本記事では、薬局業界のDX(デジタルトランスフォーメーション)推進がなぜ今求められているのか、そしてそれを通じて薬剤師や薬局経営者がどのように生き残り、進化できるのかを解説します。
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目次
- なぜ今、薬局にDXが求められているのか
- 薬剤師の仕事が「渡すまで」から「飲んだあと」へ
- 業務の再構築とタスクシフトの必要性
- ICTとデジタル技術を活用した未来の薬局像
- DX推進研修で解決できる課題とその効果
- まとめ:薬局DXで生き残るために
なぜ今、薬局にDXが求められているのか
薬局が今直面している最大の課題は、「薬を渡すだけの場」から脱却し、新しい価値を創出できる場へと変わることです。電子処方箋の普及は、その転換を一気に加速させます。
電子処方箋がもたらす「門前薬局」の終焉
紙の処方箋では、患者は診察後すぐに近隣の薬局に処方箋を持参し、薬を受け取ることが一般的でした。しかし、電子処方箋の導入によって、この動線が大きく変わります。
電子処方箋による主な変化
- 患者が薬局を自由に選べるようになる
- 処方箋の物理的な持参が不要になる
- 地理的優位性に頼った「門前薬局」モデルの終焉
- 薬局は「便利さ」「サービス品質」「専門性」で選ばれる時代へ
この変化は、薬局が競争力を保つために、サービスや提供価値の再構築を迫られていることを意味します。
「調剤薬局」から「地域医療拠点」への転換
厚生労働省も薬局の役割転換を後押ししています。「門前」から「かかりつけ」、そして「地域」へというビジョンは、薬局が調剤中心の業務から脱却し、健康支援や生活習慣病の管理などを担う地域医療拠点となることを求めています。
このような役割を果たすためには、業務フローや人材の在り方を見直し、デジタル技術を活用してサービスを再構築する必要があります。これがまさに「薬局DX」の核心です。
薬剤師の仕事が「渡すまで」から「飲んだあと」へ

薬剤師の役割もまた、時代とともに進化しています。これからの薬剤師は、薬を渡すだけでなく、服用後のフォローを含めた継続的な支援が求められます。
服薬後フォロー(FAF)が薬物治療の質を向上させる
FAFは、薬剤師が服薬後の患者フォローを行い、医師へフィードバックすることによって、薬物治療の質を向上させる重要なプロセスです。
FAFの構成要素
- Follow(フォロー):薬の使用状況や飲み忘れの有無を確認
- Assessment(評価):副作用や治療効果をチェック
- Feedback(報告):医師に治療の評価結果を共有・提案
たとえば、抗うつ薬や高血圧薬のように効果が出るまで時間がかかる薬では、FAFの有無が治療成功率に大きな影響を与えることがあります。
医師との協業で医薬品治療の最適化を実現
FAFの実践は、医師との協業が前提となります。薬剤師が患者の服薬状況や副作用を的確に把握し、その情報を医師に伝えることで、次回の診療や処方内容に反映されます。このプロセスが確立すれば、単なる処方薬の受け渡しではなく、治療の質を支える重要な役割を薬剤師が担うことになります。
これは「医薬分業」から「医薬協業」への進化であり、DXによる業務の可視化・情報共有がその実現を後押しします。
業務の再構築とタスクシフトの必要性
限られた人材と時間の中で質の高いサービスを提供するためには、業務の効率化と役割の再定義が欠かせません。薬剤師が専門性を発揮するためには、他のスタッフとの連携も重要です。
「調剤事務」から「薬局パートナー」へ
薬局業務の再設計では、従来の調剤事務を「薬局パートナー」という新たな職種に進化させ、専門性を必要としない業務を任せることが重要です。
薬局内スタッフの役割の比較
項目 | 調剤事務(従来) | 薬局パートナー(DX後) |
---|---|---|
業務範囲 | 受付、請求事務 | 薬の取り揃え、一包化の補助など |
教育制度 | 基本的なOJT中心 | 手順書+研修+検定による体系化 |
専門性の位置づけ | 低く限定的 | チーム医療の一員として育成可能 |
このようにタスクシフトを進めることで、薬剤師は本来の専門性が必要な業務に集中できるようになります。
薬剤師の専門性を最大化するチーム体制
タスクシフトを成功させるには、明確な業務分担と教育体制が必要です。薬局パートナーには、業務手順や品質管理の教育を施し、継続的なスキルアップを支援する必要があります。薬剤師は、指示を出す能力と業務全体を俯瞰する視点が求められます。
また、業務の「形式知化」も重要です。作業手順をマニュアル化し、誰が担当しても一定の品質を保てる体制を整えることで、安定した運営が可能となります。
ICTとデジタル技術を活用した未来の薬局像

テクノロジーの進化は、薬局業務の在り方そのものを変えようとしています。オンライン対応や配送体制の充実など、新しいサービス提供の形が求められています。
オンライン服薬指導とリフィル処方箋の活用
電子処方箋とともに進展しているのが、オンライン服薬指導とリフィル処方箋の制度です。これにより、患者は自宅にいながら薬の説明を受けたり、繰り返し同じ処方を受けることが可能になります。
患者にとっての主なメリット
- 通院せずに薬剤師の指導が受けられる
- リフィル処方箋で複数回薬をもらえる
- 通院負担や待ち時間が軽減される
- 高齢者や育児中の方でも安心して継続治療が可能
薬局はこうしたデジタル技術を積極的に取り入れ、患者ニーズに柔軟に応える体制を整えていく必要があります。
患者に寄り添う「地域密着型」サービスへの進化
ICTの活用により、薬の受け取り方法も多様化しています。宅配便、受け取りBOX、さらには将来的にドローンによる配送も視野に入っています。こうしたサービスを導入することで、患者の日常に寄り添う薬局としての立ち位置を確立できます。
「ただ近い薬局」ではなく、「信頼できて便利な薬局」として選ばれることが、今後の生き残りの鍵となるのです。
DX推進研修で解決できる課題とその効果
薬局DXを実践するには、業務の再設計だけでなく、人材育成や組織文化の変革も不可欠です。これらを体系的に学ぶ手段として、DX推進研修が注目されています。
業務改革・人材育成の方法が学べる
DX推進研修では、薬局業務の見直し方やチームビルディング、薬局パートナーの育成方法など、実践的な知識を学べます。特に業務の棚卸しと業務分担の設計は、現場の混乱を防ぎ、スムーズなDX推進につながります。
また、デジタルツールの導入方法や、患者との新しい接点の作り方も学ぶことができ、即戦力として活用できます。
経営効率と顧客満足を両立するために
DXの目的は、単なるコスト削減ではなく、「患者の満足度向上」と「経営の持続可能性」を両立することにあります。業務の効率化により薬剤師のリソースを有効活用し、対人業務の質を高めることで、患者からの信頼も獲得できます。
競争が激化する医療業界において、薬局が持続的に選ばれ続けるには、こうした両輪のバランスが極めて重要です。
まとめ:薬局DXで生き残るために
薬局を取り巻く環境は、電子処方箋の導入をはじめとして急激に変化しています。こうした変化に対応するためには、単なるICT導入にとどまらず、業務や組織、働き方、そして薬剤師の意識そのものを変革するDXが不可欠です。
薬剤師は、単に薬を渡す人から、患者の健康に寄り添う専門職へと進化していく必要があります。そのための一歩として、DX推進研修を活用し、自社と自分自身の変革に取り組んでいくことが、未来に選ばれる薬局への道となるのです。
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