労基への相談はバレるのか?通報後の流れやバレないための対策を解説

労基への相談はバレるのか?通報後の流れやバレないための対策を解説

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もし会社内で不正が発生したことを知った場合、労働基準監督署に通報しようか悩むかもしれません。
理由は、その後に通報者を会社が捜しだす恐れを感じるからです。労基に通報したことがバレると、解雇になるのではと不安に陥ってしまいます。

では、労基に通報すると会社にバレることが本当にあるのでしょうか。

本記事では、労基に通報しようか悩んでいる人のために、通報の流れ、バレないための対策や通報した後の具体的なフォロー流れについて解説します。会社の不正を通報する際、一体どのようなことが調査され周囲へ影響を与えるのかが理解できるでしょう。

ぜひ参考にしてみてください。

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目次

労基へ相談すると会社にバレるのか?

働き方改革が浸透し始め、労働環境は昔と比べれば改善されてきた風潮です。
それでも、賃金未払い・長時間労働などの労働問題がゼロになったわけではありません。

仮に、労基(労働基準監督署)へ会社の不正を相談するとバレるかどうかは、結論から言えば、匿名で相談も可能なので普通は心配に及びません。匿名での通報は、個人情報が特定されることもなく、職場への影響を回避できるでしょう。

ただし、実名で相談した場合は、会社側が後に把握してしまうことも考えられます。では、さらに詳しく内容を解説していきます。

労働者は申告の権利がある

会社の誤った運営方針や従業員への劣悪な環境などは、労働基準法の違反に該当することがあります。

各労働者は、労働基準監督署への申告が、労働基準法104条にて権利として認められているので、事実を伝えて改善指示や処罰を下すための請求ができるのです。

告訴と告発の違いを理解すること

労基への通報は、法律の専門用語上で「告訴」か「告発」に該当します。
この2つは似たような響きに思われますが、行為の主体者が異なり区別された考え方です。

  • 告訴…犯罪被害者が、捜査機関へ犯罪事実を申告し処罰を求めること(刑事訴訟法230条)
  • 告発…告訴権者以外の人物が、捜査機関に犯罪事実を申告し犯人の処罰を求めること(刑事訴訟法239条)

もし労基への通報をする場合、原則として通報者本人が被害者であれば「告訴」に該当し、本人以外の人物が被害者で通報する場合は「告発」に該当します。

労基への通報後の流れ

会社の不正行為などを労基に通報すると、通報内容を審査し、会社への立ち入り調査、指導・是正勧告が行われます。もし、指導に従わなかった場合や悪質な企業と見なされれば、企業名の公表、送検などの可能性も考えられるでしょう。

では、労基への通報後の流れについてさらに解説します。

1. 内容の審査

通報を受けた場合、労基は通報内容を審査し、労働基準法違反の疑いについて確認します。通報内容の受付後に内容に基づいて調査をするかどうかを判断することになるでしょう。

また、通報者には、万が一の身の安全性と保護を考慮し、匿名による情報提供が認められています。

2. 立入調査

審査結果によって、通報内容が労基にとって重要で違反の疑いがあるとされた場合、該当する会社への立ち入り調査をおこないます。

調査方法は、会社の事務所への立ち入り・帳簿書類確認・関係者へのヒアリングを主体とします。

3. 指導および是正勧告

調査終了後、労基が違反として認定した場合、該当企業への指導・改善などの是正勧告をします。是正勧告には是正期限が設けられているため、その期限内までに該当企業は「是正報告書」を作成・提出するのが義務です。

この是正勧告は強制的な行政処分ではなく、任意の対応を促す「行政指導」と見なされています。ただし、是正勧告書を無視して何も改善を施さなかった場合、刑事罰として「刑事手続」が開始される可能性があるでしょう。

さらには、再調査を受ける場合もあります。

4. モニタリング

上述の是正勧告の際には「指導票」が交付されます。
その内容に基づき、労基は継続的に状況をモニタリングし、その後の改善状況を確認する流れです。

5. 再調査・送検・逮捕

仮に該当企業が是正勧告を無視したり、改善が見られない場合再調査をします。あまりにも悪質なケースと判断された際には、経営者を送検することや、事と次第によっては逮捕という恐れもあるでしょう。

会社にバレないためのおもな対策

仮に労基に通報した事実がバレるような場合、基本的には労基側から情報漏洩する可能性は低いと見なせるでしょう。

言い換えれば、それ以外の理由・原因によることが多いのです。労基では、普通なら匿名であろうとなかろうと、通報者の氏名を該当企業側へ伝えることはしません。まずは、労基に通報した事実がバレないよう、言動に注意しあらかじめ対策しておく必要があります。

おもに以下の3点について細心の注意を払いましょう。

通報事実を他言しないこと

労基への通報がバレることがないよう、通報したことを他者に言わないようにしましょう。とくに社内の同僚などには、通報した旨を話したくなってしまう可能性があります。しかし、無差別に話してしまうと噂が広がってしまいかねません。

その後、労基が調査に入った時に、同僚が漏らしてしまうかもしれず、最終的に上司や役員、社長などの耳に入ってしまう恐れが高まります。他言は禁物だと思って取り組んでいくことです。

通報するタイミングを考慮すること

労基への通報がバレることがないように、タイミングに気をつけてください。通報がバレる場合の事例の中には、タイミングがあまりにも悪いケースが考えられます。

会社の不満や改善などを上司に訴えた直後に、労基が調査に立ち入ってくる場合もあり、上層部に勘づかれてしまう可能性があるからです。仮に、サービス残業に関する苦情を上司に話したところ、数週間後に労基から残業代未払いの調査のための立ち入りがあったとしたら、おそらく、苦情を申し立てた当人が怪しまれるのは必然的です。

タイミングによっては、通報がバレる恐れがあります。できるだけ、社内の人物ではなく第三者(とくに法的な専門家など)に相談して、ワンクッション置いてから行動に出ることが望ましいでしょう。

通報に関する作業は絶対に社内でおこなわないこと

労基への通報がバレることがないための対策として、通報に関する準備作業は社内では絶対にしないように心がけてください。証拠収集などで必要最低限なこともあるのでその点は仕方がありませんが、余計な準備作業は漏洩リスクを高めてしまいます。

例えば、社用の業務PC内での閲覧や情報収集、書類作成などはご法度と心得るべきです。労基のサイト画面などを開いていては、社内の誰かの目に入る危険性があります。

通報がバレないための方法の一つとして、社内で準備をしないと決めてください。

労基へ相談した後のフォローアップについて

労基へ相談した後、問題解決のための適切なフォローアップが実施されるはずです。該当企業側の対応と進捗状況を確認しながら、必要に応じながら随時対応を検討していくことになるでしょう。

労基に相談した後のフォローアップとして、以下のようなポイントが考えられます。

相談内容の確認

労基へ相談した後、担当者からの連絡が考えられます。相談内容や状況に対して、初期の調査結果を報告する理由からです。

ちなみに、一般的な解決までの所要期間は、以下のような流れが典型となるでしょう。

  • 申告して調査が開始されるまで…1〜2週間程度
  • 是正勧告から改善報告まで…1ヶ月程度
  • 完全な解決に至るまで…1ヶ月〜半年程度(案件によりけり)

進捗確認

労基の調査が開始されたら、進捗状況を定期的に確認しましょう。

相談者は、数週間ごとに担当者へ進捗を尋ねることが可能です。

追加資料の提出

調査の途中で、労基から追加資料の提供を求められる場合があります。迅速に提出する必要があるため、証拠や関連文書などは普段より整理・管理することで、調査がよりスムーズに進行します。

面談や調査の対応

調査途中にて、労基側より関係者との面談を実施する可能性もあります。その際に、自分自身との立場・関係性などを伝えられるよう、協力的に対応する準備をしておくことが重要です。

結果通知

労基の調査が終了したら、結果通知がされます。内容によって問題点を指摘された企業側は、是正指導・改善命令の下で改善を図ることになります。
改善がなされているかを再確認するようにしましょう。

不服申し立て

労基の対応や結果に対して不満が生じた場合には、異議申し立てがおこなえます。その場合も、労基へ相談しながら検討していくことになります。また、労基への相談で解決しない案件だとしたら、追加的に法的措置も必要になることがあります。

その際は、弁護士などの専門の相談機関を利用し、さらに具体的な解決策を模索できるはずです。労働局・消費者センター・法テラスといった公的機関を活用することをおすすめします。

自分自身の心のケア

職場の不正問題や労働トラブルを抱えると、精神的な負担になってしまいます。そのため、精神的ケアはとても重要です。

労基への相談とともに、カウンセリングサービスや心理支援の利用も検討しておくようにしましょう。問題を一人で解決させるのではなく、適切な対応で支援をしてくれる場所に赴く勇気も大切です。

まとめ

労基への相談がバレることは、普通は考えにくいものです。心配であれば、匿名でも受け付けてくれます。

労働トラブルは個人生活に大きな影響を及ぼす事案です。被害を大きくさせる前に、適切な準備を持って臨むことが解決の近道となるでしょう。
また、労基は労働環境改善の是正を促しますが、具体的な金銭の保証まではしません。

もし個人で会社と争うようになったら、弁護士・社労士などの専門性の高い士業のほうが強い味方になります。着手金などの費用面での折り合いがつくかどうかは案件によりけりですが、相談するのも一つの策です。