その「降格」、制度として大丈夫?納得感のある等級制度の作り方

その「降格」、制度として大丈夫?納得感のある等級制度の作り方

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評価の結果、昇格はできないけど、今の等級にふさわしいとも思えない…
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昇格だけでなく、降格も制度に入れるべきでは?

そんな声が、経営者や人事の方から増えてきています。
これまでの日本企業では、「降格」はあまり一般的ではありませんでした。
でも、成果主義の広がりや働き方の多様化により、昇格・降格をバランスよく運用する制度が求められています。

そこで今回の記事では、等級制度に「降格」を導入するときに気をつけるべきポイントを、分かりやすくまとめました。

目次

等級制度とは?

まずは、「等級制度(とうきゅうせいど)」の基本からおさらいしておきましょう。

等級制度=「社員をレベルごとにわける仕組み」

等級制度とは、社員を「仕事のレベル」「役割」「責任の重さ」などによって、いくつかの段階(等級)に分けて管理する制度のことです。

たとえば、

  • 1等級:新人・アシスタント
  • 2等級:一般社員
  • 3等級:主任・リーダー
  • 4等級:課長
  • 5等級:部長

というように、階段のようにステップアップしていく仕組みです。

この制度によって、

  • 給与や評価の基準がはっきりする
  • キャリアアップの道筋が見える
  • 公平感のある運用ができる

といったメリットがあります。

なぜ「降格制度」は必要なの?

社員の等級を一段下げる「降格」は、聞こえだけで言えばちょっとネガティブに感じますよね。でも、組織をうまく回すためには、とても大切な制度なのです。
ここでは、実際にありそうな具体例を交えて、その理由をわかりやすく紹介します。

例1:昇格したけど、管理職の仕事ができなかった

たとえば、ある社員Aさんが営業でとても優秀な成績を出し、主任から課長に昇格しました。
しかし課長になった後は、部下のマネジメントやチームの調整に苦戦し、部下との関係もうまくいかず、チームの成果も下がってしまいました。

このように、「プレイヤーとしては優秀でも、マネージャーとしてはまだ早かった」ということもあるのです。このとき、降格制度がないと、課長というポジションにふさわしくないままそのままになってしまい、周囲の社員のやる気も下がってしまう可能性があります。

降格制度があれば、「一度ポジションを戻して、適した役割で活躍してもらう」という選択ができます。それによって、Aさん自身の負担も減り、再び得意分野で成果を出せるかもしれません。

例2:長年ポジションにいるけど、明らかに成果が出ていない

Bさんはもう何年もリーダー職に就いていますが、最近は変化に対応できず、仕事のスピードや正確さが他のメンバーより明らかに落ちてきています。
周囲は気をつかってあまり指摘できず、「なんでBさんはあのままなの?」という声が出始めている状態です。

このときも、降格制度がなければ、「今の等級にふさわしくない状態」を放置するしかありません。その結果、頑張っている若手社員が報われず、「どうせ何をしても評価されない」と感じてしまい、やる気や定着率が下がるリスクがあるのです。

降格制度があると、

  • Bさん自身にも再成長のきっかけを与えられる
  • 他の社員にも「ちゃんと見られている」「公平に評価されている」という信頼感が生まれる

というように、組織全体に良い効果をもたらすことができるのです。

例3:大きな問題行動があったときの対応として

Cさんは、管理職としてチームをまとめていましたが、部下に対して繰り返し厳しい言葉をかけるなど、ハラスメントの問題が発覚しました。

このような場合、注意だけで終わらせるのではなく、「管理職としての適性がない」と判断し、等級を下げる(降格)という対応が必要になることもあります。

会社としても、「問題があればきちんと対応する」「信頼できる制度がある」と示すことは、組織の信頼性を守ることにもつながります。

降格制度は、組織と社員を守るための「調整の仕組み」

「降格」は、ただの“罰”ではありません。

本来は、

  • 「今のポジションが合わない人」に合った場所で力を発揮してもらう
  • 「がんばっている人」が報われるようにする
  • 組織の役割やバランスを整える

ための調整の仕組みです。

実力や役割に合った等級をつけることで、社員一人ひとりの力が発揮され、組織全体も強くなります。制度としてきちんと整え、社員にもしっかり説明しておくことで、「公平で前向きな降格制度」が実現できるのです。

降格制度を導入するメリットとは?

等級制度に「緊張感」と「公平感」をもたらす

等級制度の中に降格の仕組みがないと、「昇格しないだけで居座れる」という印象を与え、制度全体の信頼性を損なうリスクがあります。頑張っても報われない一方で、成果を出していない人もポジションにとどまるという状態では、評価に対する納得感が得られません。
そこで降格制度を設けることで、「役割を果たせなければ評価が下がることもある」という緊張感が生まれ、社員の意識にも良い刺激となります。また、「ちゃんと働けば評価される」「制度が機能している」という公平性の実感にもつながります。

組織の健全な循環を促進できる

本来、管理職や中堅層には組織の中心としての役割が期待されますが、力を発揮できていない人がそのポジションにとどまり続けると、組織のパフォーマンス全体が低下しかねません。
降格制度があれば、役割にふさわしい人材にポジションを移し替えることができるため、実力や意欲のある社員が埋もれずに活躍の場を得られるようになります。その結果、職場の雰囲気も改善され、全体の士気向上や、より健全な組織の形成が期待できます。

「再スタート」の機会にもなり得る

降格というとネガティブなイメージが強いかもしれませんが、必ずしもマイナス面ばかりではありません。
なかには「いったん等級を下げて、改めて力をつけたい」と自ら申し出るケースもありますし、「これまでとは違う役割に挑戦したい」といった前向きな気持ちを後押しする手段としても活用できます。適切なサポートと併せて導入すれば、社員のキャリア形成の選択肢を広げる意味でも有効です。

降格制度導入の注意点とリスク

社員の納得感を得られなければ逆効果に

降格という事実は、社員にとって少なからずショックを伴うものです。理由が明確に伝わらず、「なぜ自分だけが?」「評価が不公平だ」と感じられた場合、モチベーションの低下はもちろん、退職や職場への不信感にもつながりかねません。
そのためには、あらかじめ評価基準を明示し、降格の対象となる状況や判断のロジックを整理しておく必要があります。本人との面談や、透明性のあるプロセスを通じて、できる限り納得感を得られる運用を心がけましょう。

「罰」のように受け取られるリスクに配慮する

制度として整えても、社員が「自分は見放された」「失敗した人間だと思われている」と感じてしまえば、降格がその人のキャリアやメンタルに深刻な影響を与える可能性もあります。
そうならないためには、降格は決してペナルティではなく、「次のチャンスに向けた調整」であることをしっかり伝えることが大切です。必要であれば、再スタートに向けた目標設定や支援計画を用意し、前向きな再出発をサポートしましょう。

制度設計・運用の難しさが導入ハードルに

降格制度を設けても、ルールが曖昧だったり、降格後の役割や給与条件が不透明だったりすると、制度自体への信頼が損なわれてしまいます。また、降格された社員に対して適切なフォローや支援が行われなければ、職場内に不安や不満が蔓延してしまいます。
導入する場合は、人事部門だけでなく、現場の管理職とも連携し、制度設計から運用・フォローまで一貫して取り組む体制を整えることが不可欠です。

降格制度をうまく運用するための4つのポイント

評価制度とセットで設計することが大前提

降格制度を正しく運用するためには、明確で納得感のある評価制度の存在が不可欠です。降格はあくまでも「感情」ではなく、「評価」に基づいて行うべきだからです。
評価制度の中では、成果や行動特性、期待される役割など、どの項目がどのように見られているのかを、誰が見ても理解できる形で明示しておく必要があります。これにより、評価の透明性が担保され、降格の決定も納得感のあるものになります。

判断基準を言葉で明文化する

社員が安心して働くためには、「自分の評価がどう決まるのか」が明確でなければなりません。
「上司の感覚次第」と思われる制度では、不安や不信感を生みやすくなります。たとえば、「3期連続で評価ランクが最低の場合、等級の見直し対象になる」や「リーダーシップ行動が半年以上確認できなかった場合は降格を検討する」など、判断の基準をあらかじめ文章で言語化しておくことが大切です。こうしたルールがあることで、上司も部下も共通認識を持てるようになります。

フィードバック面談で納得感と前向きさを引き出す

評価結果を通知するだけでは、社員の納得感を高めるのは難しいものです。とくに降格のようなセンシティブな決定に関しては、対話の機会を設けることが重要です。
フィードバック面談の場では、「なぜその評価に至ったのか」「これから期待すること」「新しいポジションでの目標」などを、丁寧に伝えることが求められます。納得してもらうだけでなく、再スタートに向けた意欲を引き出す場としても、面談は非常に有効です。

降格後のキャリア支援を見すえる運用を

降格はゴールではなく、あくまで次の成長に向けたプロセスのひとつです。そのため、「今後どうすれば再び等級を上げられるのか」「どのような育成支援があるのか」といった、未来志向のキャリア支援が欠かせません。
たとえば、育成計画の見直しや、定期的な目標確認の場を設けることで、社員が目標を再設定し、自信を取り戻すきっかけにもなります。再チャレンジを支える仕組みとして降格制度を活用できれば、社員にとっても前向きな制度として受け入れられやすくなります。

降格制度に悩んだら、制度設計のプロに相談を

「降格制度を導入したいけれど、どう制度化すればいいのかわからない」「社内で設計しても、社員の納得感が得られるか不安」という場合は、人事制度設計の専門家に相談してみるのも一つの手です。
ビズアップでは、企業ごとの組織風土や戦略に合わせた等級・評価制度の設計をお手伝いしています。とくに、社員のやる気を損なわずに制度を運用していくための「ていねいな仕組みづくり」に力を入れています。

ビズアップの人事コンサルはここが強い!

  • 降格を含めた等級・評価制度のトータル設計ができる
  • 自社の実情に合ったオーダーメイド制度の提案が可能
  • 社員説明用の資料や評価者向け研修もサポート
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まずはお気軽に、資料請求や無料お見積もり相談から。貴社のフェアで前向きな人事制度づくりを、一緒に考えていきましょう。

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まとめ:降格制度は“再スタート”を支える仕組みへ

等級制度に「降格」という選択肢を加えることで、評価制度全体に適度な緊張感と公平性が生まれます。
役割を果たせない人がそのままのポジションに留まるのではなく、適切なポジションに再配置されることで、組織全体のレベル維持・向上にもつながります。

さらに、降格を通じて新たな目標を見出し、再スタートを切る社員も少なくありません。制度次第で、それは成長のきっかけにもなるのです。

しかしその一方で、運用の仕方を誤れば、

  • 「評価が不透明」といった不満
  • 組織への不信感やモチベーションの低下
  • 退職者の増加

といったリスクを生むおそれもあります。
だからこそ、制度の設計段階から、評価基準の明文化やフィードバック体制の整備といった丁寧な準備が欠かせません。

「降格=マイナス」ではなく、社員と組織の未来を切り拓くための制度として活用していくこと。
それこそが、降格制度を成功に導くカギです。

社内だけで設計するのが難しいと感じたら、ぜひ人事制度の専門家に相談してみてください。
プロの力を借りることで、社員にとっても企業にとっても前向きな制度づくりが実現できます。

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