カスハラ対策は待ったなし!最新条例と企業の必須対応

KEYWORDS ハラスメント
近年、接客業やコールセンター、公務員、教育機関など、顧客や利用者と直接関わる職場で「カスタマーハラスメント(カスハラ)」が深刻化しています。理不尽なクレームや暴言、過度な要求は、従業員の心身を蝕むだけでなく、企業の信頼や業務効率にも影響を及ぼします。厚生労働省の調査(2024年)によれば、労働者の約1割が過去3年間にカスハラを経験したと回答しており、その割合はセクハラよりも高いという衝撃的な結果が出ています。
こうした状況を受け、東京都では2025年4月から全国初となるカスハラ防止条例が施行される予定です。また国レベルでも、2025年中に労働施策総合推進法(いわゆるパワハラ防止法)の改正により、企業へのカスハラ対策義務が加わる見通しとなっています。もはや「顧客第一主義だから仕方がない」と放置する時代は終わり、企業にとって従業員を守りつつ顧客対応の質を高める仕組みづくりが急務となっています。
本記事では、最新の条例・法改正動向を踏まえ、企業が直面するリスクと取るべき対策、そしてそれを支えるeラーニング活用の有効性について解説していきます。
目次


カスタマーハラスメントの基礎知識と防止対策のポイント
動画数|3本 総再生時間|94分
カスタマーハラスメントの基礎と防止・対応策を学びます。厚労省の指針や事例を踏まえ、境界線の引き方や対応の基本、エスカレーション判断を整理。現場負担を減らす組織的備えやメンタルケアにも触れ、職場環境改善と企業信頼性向上につながる実務的研修です。
動画の試聴はこちら東京都条例と法改正の最新情報
カスハラの定義と最新データ
カスハラの要点を3資料で比較
資料 | どんな行為がNG?(平易に) | 判断のカギ |
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厚労省「企業マニュアル」
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手段
社会通念上不相当か 結果
従業員の就業環境が害されるか |
東京都「カスハラ防止条例」
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範囲
都内の事業に関わる広い就業者を保護 位置づけ
「行ってはならない」と禁止 |
国「検討会報告書」
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三要素
誰が(顧客等)/言動が過剰/就業環境が害される |
カスハラとは、顧客や取引先からの言動のうち、社会通念上不相当な要求や態度によって従業員の就業環境を害する行為を指します。代表的な例としては、暴言、土下座の強要、長時間の拘束、不当な金銭要求などが挙げられます。東京都条例(2024年10月成立)は、これを「顧客等から就業者に対する著しい迷惑行為で、就業環境を害するもの」と定義しました。対象には正社員だけでなく、アルバイト、ボランティア、フリーランスなども含まれるため、幅広い職場に適用されます。
また、厚労省の調査結果では、カスハラはパワハラに次いで2番目に多いハラスメントであることが明らかになっています。単なる一部業界の問題ではなく、社会全体での対応が求められているのです。
2025年施行予定の東京都条例のポイント
東京都の条例には、以下の特徴があります。
- 全国初の「禁止規定」:「何人も、あらゆる場において、カスタマーハラスメントを行ってはならない」と明記
- 対象範囲の広さ:都内で働く人、または都内事業に関わる人すべてが保護対象
- 罰則はないが責務を明記:顧客、従業員、事業者それぞれに防止への努力義務を課す
この条例により、企業は「顧客だから仕方ない」とは言えなくなるのが大きな転換点です。従業員保護と顧客対応の適正化を両立させることが、経営課題として浮上してきます。
国レベルでの法改正の見通し
一方、国の「女性活躍推進検討会」報告書では、カスハラ防止措置を企業に義務付けるのが適当と明記されました。これを受けて、2025年には労働施策総合推進法の改正が予定されており、実際の施行は2026年度以降と見込まれます。つまり、東京都では2025年4月、全国的には2026年以降に、企業は法的にカスハラ対策を迫られることになります。いまのうちに体制を整えなければ、法的リスクや企業イメージ低下を免れません。
企業が直面するカスハラのリスク
従業員の心身の不調と離職リスク
カスハラを受けた従業員は、強いストレスから不眠やうつ状態に陥り、結果として離職に至るケースが少なくありません。パーソル総合研究所の調査によると、2021年にはハラスメントが理由で離職した人が約86.5万人に達しました。人材不足が深刻化する中、これは企業にとって大きな打撃です。
顧客満足度・企業イメージの低下
カスハラ被害は、従業員だけでなく他の顧客にも悪影響を及ぼします。店内で怒鳴り声が響けば雰囲気は悪化し、サービス全体の満足度が低下します。さらに「この企業は従業員を守らない」と世間に見られれば、SNSや口コミでブランド価値を損なうリスクもあります。
BtoCとBtoBでの具体的な事例
多くの人が思い浮かべるのは「消費者から店舗や窓口への暴言・過剰要求(BtoC)」ですが、実は取引先企業からの圧力(BtoB)も深刻です。たとえば、取引先の担当者から理不尽な要求や暴力的な言動を受けても、契約関係の弱い立場ゆえに耐えざるを得なかった事例が判例として報告されています。つまり、カスハラはあらゆる業種・業態に潜むリスクであり、現場スタッフだけでなく、経営層や管理部門も強い関心を持つべき問題なのです。
企業が取るべきカスハラ対策
社内ルールとマニュアル作成の重要性
カスハラ対策を実効性あるものにするには、明確な社内ルールと対応マニュアルの整備が欠かせません。単に「顧客を大切にしよう」といった抽象的なスローガンではなく、「クレームが〇分を超えた場合は対応を打ち切る」「金銭要求があれば必ず上司に報告する」といった具体的な判断基準が必要です。また、業界や企業文化によってカスハラの典型事例は異なります。たとえば、飲食業界では大声での罵声や無理な要求が多い一方、教育現場や公務員には「保護者や利用者からの過度な要求」が目立ちます。そのため、自社の現場実態に即したマニュアルを作ることが重要です。
相談体制の整備と周知教育
被害を受けた従業員が安心して相談できる窓口を設けることも必須です。パワハラやセクハラと同様に、「カスハラも相談できる」仕組みを既存の窓口に統合すると効果的です。さらに、ルールや相談体制を「形だけ」で終わらせないために、全従業員への周知と研修が欠かせません。研修では、「どこまでが正当なクレームで、どこからがカスハラか」を事例とともに学ぶことで、従業員が現場で迷わず対応できるようになります。
具体的な事案発生時の対応
カスハラ事案の標準対応フロー
受理・安全確保(初期遮断)
単独対応を避け、規定時間で切り上げ。録音・ログ保存。
即時エスカレーション
上長/専門部署へ自動連絡。必要に応じて警察・弁護士へ事前相談。
事実関係の確認
記録・映像・通話を精査。要求の妥当性と手段の相当性を分けて判断。
初期対応の実施
注意・中止要請/窓口変更/出禁検討。BtoBは契約窓口で正式協議。
被害者ケア
勤務配慮・受診案内・産業医面談。メンタル支援と再発兆候を確認。
再発防止策
時間上限・報告基準の明文化/教育更新/方針を社内外に周知。
実際にカスハラが発生した場合、従業員に我慢を強いる対応は最悪の選択です。顧客との関係を理由に従業員を犠牲にすると、後に安全配慮義務違反で企業が訴えられるリスクがあります。判例でも、管理職が現場の教員に謝罪させて幕引きを図った結果、使用者責任を問われた例が存在します。
対応の基本は、
- 被害者から事実を丁寧に聞き取る
- 速やかに上司や専門部署が対応に入る
- 必要に応じて警察や弁護士に相談する
という流れです。事案発生時にどう動くかを事前にルール化しておくことで、現場の負担を減らし、企業全体として一貫性のある対応ができます。
eラーニングで実現する効果的なカスハラ対策

講座構成と学べること
PART1:カスハラとは何か(約6分)
用語と基本概念を短時間で整理します。BtoC / BtoBの違い、現場で頻出する行為のイメージを共通化できます。
PART2:カスハラに関する法律問題(約39分)
職場のパワハラ・セクハラ・マタハラ等との違い、なぜ対策が必要か、最新動向、東京都の条例のポイントまでを体系的に学びます。安全配慮義務や判例の視点も含むため、管理職や人事の判断軸づくりに有効です。
PART3:カスハラ対策のポイント(約49分)
カスハラか否かの判断基準(要求の中身/手段の相当性)、事案発生時の対応、防止措置の設計、BtoBカスハラへの注意点まで、運用面の勘所を押さえます。


カスハラの基礎知識と防止対策のポイント
動画数|3本 総再生時間|94分
カスタマーハラスメントの基礎と防止・対応策を学びます。厚労省の指針や事例を踏まえ、境界線の引き方や対応の基本、エスカレーション判断を整理。現場負担を減らす組織的備えやメンタルケアにも触れ、職場環境改善と企業信頼性向上につながる実務的研修です。
動画の試聴はこちら他のハラスメント研修と組み合わせた体系的学習
カスハラはパワハラやセクハラと性質が似ています。そのため、eラーニングで複数のハラスメント研修を組み合わせることで、体系的に学習できます。たとえば、
- パワハラ研修:上司からの不当な要求への対応
- セクハラ研修:性的言動への理解と対策
- カスハラ研修:顧客・取引先からの迷惑行為への対応
これらを一体的に学ぶことで、「あらゆるハラスメントを許さない」という組織文化を醸成できます。
社内導入しやすい講座一覧の活用法
eラーニングの最大の強みは、いつでもどこでも受講できる利便性にあります。多忙な現場スタッフやシフト勤務者も、自分のペースで学習を進められるため、研修の機会を均等に提供できます。また、企業によっては「カスハラ専用講座」と「総合ハラスメント対策講座」を組み合わせて導入するケースもあります。これにより、基礎知識から実践的な対応まで段階的に学べ、従業員の習熟度に合わせた教育が可能です。さらに、受講履歴をデータとして残せるため、法改正や監査への対応証拠としても活用できます。
まとめ
カスハラ対策は、もはや一部の企業だけの問題ではなく、すべての職場に共通する社会的課題となっています。従業員を守ることは、顧客満足度を高め、企業イメージを向上させることにも直結します。
2025年4月から東京都で施行される条例、そして2026年度以降に全国で見込まれる法改正は、企業にとって大きな転換点です。今から準備を進めることで、トラブルを未然に防ぎ、従業員と顧客の双方が安心できる環境を整えられます。そのための最も効果的な手段がeラーニングの活用です。具体的な事例を学び、実際の対応をシミュレーションし、体系的に知識を習得できる環境を整えることで、組織全体に「カスハラに毅然と対応する文化」を根付かせることができます。
カスハラを「仕方ない」と放置するのではなく、従業員を守り、顧客にとっても健全なサービス環境を提供する取り組みを、今こそ始めるべき時です。