カスハラ対策義務化は2026年から!企業が今すべき防止措置と研修の進め方

カスハラ対策講座

2026年10月より、改正労働施策総合推進法に基づき、すべての企業に対して「カスタマーハラスメント(カスハラ)対策」が義務化されます。これまでもパワハラやセクハラの防止措置は義務付けられてきましたが、顧客や取引先からの著しい迷惑行為についても、ついに法的な枠組みで企業の対応が求められることになりました。

近年、顧客からの暴言や理不尽な要求による従業員の精神的ダメージは深刻化しており、パーソル総研の調査によれば、従業員の離職要因の約15〜20%をカスハラが占めているというデータもあります。人手不足が深刻な現代において、カスハラ対策義務化への対応は単なる法令遵守にとどまらず、貴重な人材を守り、組織の生産性を維持するための経営戦略そのものと言えるでしょう。

本記事では、2026年の義務化に向けて企業が講ずべき具体的な「防止措置」の内容や、組織の心理的安全性を高めるための研修の進め方について、実務的な視点から詳しく解説します。

目次

2026年10月開始のカスハラ対策義務化とは?法改正のポイン

2026年 改正法の重要ポイント
施行開始
2026年
10月〜
中小企業含む 全企業対象
事業主の「義務」となる3つの柱
  • カスハラ防止措置の義務化 相談体制の整備、マニュアル作成、社員教育が必須に。
  • 就活セクハラ対策の追加 求職者(学生・インターン)も保護対象へ拡大。
  • 違反時のリスク増大 安全配慮義務違反による損害賠償や、企業名公表の可能性も。

今回の法改正は、企業にとって無視できない大きな転換点となります。まずは、施行のスケジュールと義務化される内容の全体像を整理しましょう。

改正労働施策総合推進法の公布と施行スケジュール

カスハラ対策の義務化を含む「改正労働施策総合推進法」は、2025年6月に公布されました。準備期間を経て、2026年10月から全面施行される予定です。

これまでは厚生労働省の指針によって「対策を講じることが望ましい」とされてきたカスハラ対策ですが、今回の改正により、事業主には明確な「雇用管理上の講ずべき措置」が課せられます。つまり、「対策をしていなかった」ことが法的な不備とみなされる時代に突入するのです。

中小企業も対象!事業主に課せられる「防止措置」の具体的内容

今回の義務化は、大企業だけでなく中小企業も対象となります。厚生労働省の指針案で示されている主な「防止措置」は、以下の3点に集約されます。

  1. 社内方針の明確化と周知: 「カスハラは許さない」という企業の姿勢を明確にし、従業員に周知啓発すること。
  2. 相談体制の整備: 従業員がカスハラ被害に遭った際、速やかに報告・相談できる窓口を設置すること。
  3. 被害者へのフォローと再発防止: 被害を受けた従業員のメンタルヘルスケアを行い、事案を分析して再発防止策(マニュアル改訂など)を講じること。

これらの措置を適切に講じていない場合、万が一従業員がカスハラを苦に体調を崩したり離職したりした際に、企業は「安全配慮義務違反」に問われるリスクが極めて高くなります。

就活セクハラ防止義務化も同時並行で進む背景

2026年の法改正では、カスハラだけでなく「就活セクハラ(求職者へのセクシャルハラスメント)」の防止措置も事業主の義務となります。

インターンシップ生や就職活動中の学生は、企業に対して立場が弱く、ハラスメントの被害に遭いやすい傾向にあります。採用面接時や懇親会での不適切な言動を未然に防ぐ体制を整えることは、企業の社会的信用を守る上でも不可欠です。「カスハラ対策義務化」と併せて、組織全体のコンプライアンス意識をアップデートする必要があります。

対策を怠るリスクと「心理的安全性」の関係性

なぜ今、これほどまでにハラスメント対策が強化されているのでしょうか。それは、ハラスメントが個人の心の問題だけでなく、組織全体の「生産性」に直結することが科学的に証明されているからです。

従業員の離職要因15〜20%を占めるカスハラの脅威

前述の通り、カスハラは従業員が会社を去る大きな要因となっています。特に現場で顧客対応を行うフロントスタッフにとって、理不尽な暴言や執拗なクレームは、仕事への誇りやモチベーションを根底から破壊します。

「顧客第一主義」を盾に、会社が従業員を守らない姿勢を見せてしまうと、従業員は孤独感と不信感を募らせます。これは組織にとって、採用コストの増大やノウハウの流出という甚大な経済的損失をもたらします。

Googleの「Project Aristotle」から学ぶ生産性向上の鍵

ハラスメントのない職場がなぜ強いのか。そのヒントは、Googleが実施した労働生産性に関する大規模調査「Project Aristotle(プロジェクト・アリストテレス)」にあります。

この調査の結果、生産性の高いチームに共通する最も重要な因子は「心理的安全性(Psychological Safety)」であることが判明しました。心理的安全性とは、チーム内で誰に対しても否定される不安を感じることなく、発言や行動ができる状態を指します。

カスハラやパワハラが放置されている職場では、この心理的安全性が著しく低下します。「ミスをしたら責められる」「客から文句を言われたら自分のせいにされる」という恐怖心が、創造性や業務効率を阻害するのです。カスハラ対策義務化への対応は、まさに「勝てる組織」を作るための基盤整備と言えます。

企業の「職場環境配慮義務」と法的責任(裁判例の視点)

過去の裁判例を見ても、企業がカスハラに対して適切な対応を取らなかったために、損害賠償を命じられるケースが増えています。

裁判所は、企業には従業員が安全で健康に働けるよう配慮する「職場環境配慮義務(安全配慮義務)」があると考えています。顧客からの過度な要求に対して、従業員に耐えることだけを強いたり、具体的な支援を行わなかったりすることは、この義務を怠っていると判断されるポイントになります。

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実務で使える!カスハラ防止措置を構築する3ステップ

2026年の施行に向けて、具体的にどのような手順で対策を進めればよいのでしょうか。実務上の重要ステップを3つに分けて解説します。

【ステップ1】社内方針の明確化とマニュアルの作成

最初に行うべきは、トップメッセージの発信です。経営層が「わが社は従業員の安全を最優先し、ハラスメントには毅然と対応する」という姿勢を社内外に宣言します。

その上で、現場の判断基準となる「対応マニュアル」を作成します。

  • どのような行為がカスハラに該当するのか(定義の明確化)
  • 暴言や居座りが発生した際の、具体的な応対フレーズ
  • 「これ以上の対応は打ち切る」という判断ラインの策定 これらを言語化しておくことで、現場の従業員は「自分一人の判断ではない」という安心感を持って対応できるようになります。

【ステップ2】相談窓口の設置と適切な事後対応体制

マニュアルがあっても、現場で問題が完結するとは限りません。問題が発生した際に、迅速に上司や専門部署へ報告できるルート(相談窓口)を確立します。

重要なのは、相談した従業員が「不利益な扱いを受けない」ことを保証することです。また、深刻な事案が発生した場合には、警察への通報や弁護士との連携など、会社として組織的に対応するフローをあらかじめ決めておく必要があります。

対応フェーズ 企業が講ずべき具体的なアクション
1. 事前準備 基本方針の策定、社内規定(就業規則)への反映、対応マニュアルの作成
2. 発生時対応 複数人での対応、録音・録画による証拠確保、上司への即時報告ルートの活用
3. 事後フォロー 被害者のメンタルケア、加害者(顧客)への法的措置の検討、事例の社内共有と改善
表1:カスハラ対策義務化における企業の対応ステップ

【ステップ3】eラーニングによる全社員教育の実施

方針を決め、窓口を作っても、それが現場で認知されていなければ意味がありません。しかし、全社員を一箇所に集めて研修を行うのは、シフト調整やコストの面で現実的ではない場合が多いでしょう。

そこで推奨されるのが、eラーニングを活用した全社員教育です。

eラーニングであれば、法改正のポイントやカスハラの定義といった「知識」を、場所や時間を選ばずに均一な質で学ぶことができます。特に、「自分が受けている行為はカスハラなのだ」と従業員自身が正しく認識することは、一人で抱え込まずに相談窓口を利用するための第一歩となります。

また、管理職に対しては「部下がカスハラ被害に遭った時のケア方法」を、一般社員に対しては「カスハラを誘発しないための初期対応スキル」をといったように、階層別に必要なカリキュラムを柔軟に割り当てられる点も大きなメリットです。

【対策の要】効率的に学ぶハラスメント対策eラーニング講座

2026年の義務化に対応し、実務直結の知識を効率よく習得できるおすすめのeラーニング講座をご紹介します。本講座は、単なる法律の解説にとどまらず、現場で起こりうるリアルな事例(ケーススタディ)を豊富に取り入れている点が特徴です。

法的根拠から具体的対応術まで網羅したカリキュラム一覧

カスハラ対策はもちろん、同時に対策が求められる多様なハラスメントについても、網羅的に学習できるラインナップが揃っています。

ハラスメント防止 研修カリキュラム一覧
法改正対応・最新判例・事例研究を網羅
カスタマーハラスメント義務化対応
  • 定義と該当性:ガイドラインに基づくカスハラの判断基準
  • 対策の実務:事前準備、現場対応、組織的対応のフロー
  • 企業の責任:安全配慮義務と過去の裁判例分析
  • クレーム対応:現場の初期対応とエスカレーション
ハラスメント総論
  • ハラスメントの現状と相談件数の推移
  • Project Aristotle:ハラスメント防止と生産性向上の関係
  • リスク管理としてのハラスメント対策
セクシャルハラスメント
  • 「意に反する性的な言動」の法的定義
  • 環境型セクハラと対価型セクハラ
  • 被害者のいないセクハラ!?(無意識の加害)
  • 就活セクハラ:求職者・インターン生への対応
パワーハラスメント
  • 「業務上必要かつ相当な範囲」の境界線
  • 適正な指導とパワハラの違い
  • パワハラの6類型と具体的裁判例
その他のハラスメント
  • マタニティ・パタニティハラスメント(マタハラ・パタハラ)
  • LGBTQ・SOGIハラ(性的指向・性自認)
  • リモートワーク下のハラスメント(リモハラ)
企業の措置・マネジメント
  • 相談窓口の設置と適切な運用フロー
  • 事実確認から事後対応(懲戒・再発防止)の手順
  • 心理的安全性を高めるコミュニケーション
  • 部下への適切な指導・フィードバック法

加害者・被害者・企業の三者視点で学ぶ「自分事化」の重要性

ハラスメント研修の最大の課題は、受講者が「自分には関係ない」「自分は大丈夫」と思い込んでしまうことです。

本講座の特長(Point 03)として、「加害者」「被害者」「企業」の三者の視点からハラスメントを多角的に分析するアプローチを採用しています。

  • 被害者の視点: どのような精神的苦痛を受け、仕事にどう影響するか。
  • 加害者の視点: 「指導のつもり」「お客様の権利」といった思い込みが、いかに相手を追い詰めるか。
  • 企業の視点: ハラスメントを放置することが、いかに大きな法的リスクとブランド毀損を招くか。

この多角的な視点を持つことで、従業員一人ひとりがハラスメント問題を「自分事」として捉え、組織全体の防止意識(コンプライアンスマインド)が自然と醸成されます。

ハードクレームにも動じない!現場対応力を高める実践型研修

カスハラ対策において特に現場が求めているのは、「今、目の前で怒鳴っている顧客にどう返すか」という実践スキルです。

講座内の「カスタマーハラスメント対策」および「適切なコミュニケーション」のセクションでは、具体的なNGワードや、相手の感情を逆なでせずに事実確認を行うための対話テクニックを学びます。単に「我慢する」のではなく、プロとして凛とした対応を行うための武器を従業員に持たせることが、結果として従業員のメンタルを守ることにつながります。

まとめ

2026年10月の「カスハラ対策義務化」は、企業にとって負担増と捉えられがちですが、見方を変えれば「従業員を理不尽な攻撃から守り、安心して働ける環境を整える」ための絶好の機会です。

カスハラやセクハラのない、心理的安全性の高い職場は、従業員の定着率を高め、採用競争力を強化し、結果として企業の長期的な成長を支える基盤となります。

法改正直前になって慌てて形だけの制度を作るのではなく、今から段階的に「社内規定の整備」と「eラーニングによる意識改革」を進め、2026年を「ハラスメント対策強化元年」として実りあるものにしていきましょう。