pandasでつまずく理由と克服法【Python実践編】

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「Pythonはなんとか書ける。でも、pandasはなんだかよく分からない」
そんな声をよく耳にします。たしかに、Pythonの基本文法と違い、pandasには独特の記法や膨大な関数群があり、初学者にはハードルが高いと感じられるかもしれません。

特に、データを自由自在に加工できるという強力さゆえに、「最初に何をどう覚えたらいいのか分からない」という混乱が生まれやすいのです。pandasは間違いなく便利なライブラリですが、それを正しく活用するには、いくつかの基本ステップを踏んで学ぶことが重要です。

本記事では、pandasの基礎を効率よく身につけるための学習法を紹介します。コード例や演習問題を交えながら、独学でも迷わない学習の流れを解説していきます。

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目次

なぜpandasは難しく感じるのか

pandasはPythonのデータ分析に欠かせないライブラリですが、習得に苦労する人が多いのも事実です。その理由はどこにあるのでしょうか。

関数の多さと柔軟さが裏目に出る

pandasの強みは「何でもできること」ですが、これは裏を返せば「どれをどう使えばいいのか分からない」という問題を生みます。列の抽出一つを取っても、df['col']df.loc[:, 'col']df.iloc[:, 0] など、さまざまな書き方が存在します。

どれも正しいのですが、それが混乱の元となり、学習者は「結局どれを覚えればいいのか分からない」と感じてしまうのです。

APIリファレンスは丁寧だが初心者には冷たい

pandasの公式ドキュメントは非常に詳しいです。しかし、初心者にとってはその情報量が逆に負担になりがちです。使い方の例は書かれていますが、「なぜそうするのか」「どんな場面で使うのか」という文脈が乏しく、経験の浅い人にとっては理解しづらいのです。

また、ネット検索で出てくるブログやQ&Aサイトも、文脈がバラバラで、一貫した理解を得にくいという問題があります。

pandasを基礎から学び直すステップ

「pandasをちゃんと使いこなしたい」と思ったら、まずは基本を順におさえるのが近道です。何よりも大事なのは、「Series」と「DataFrame」の違いと、それらの使い方をしっかり理解することです。

この章では、学習の第一ステップとしてpandasの基本構造に触れ、次にデータの抽出方法(loc/iloc)を扱います。手を動かしながら学ぶのが効果的なので、簡単なコード例も紹介していきます。

SeriesとDataFrameの「違い」と「関係」

pandasでは、基本的なデータ構造として SeriesDataFrame が使われます。

  • Series: 一列だけのデータ(一次元)
  • DataFrame: 複数列の表形式データ(二次元)

以下は Series の簡単な例です。

import pandas as pd

# 一次元のデータ
s = pd.Series([10, 20, 30])
print(s)
0    10
1    20
2    30
dtype: int64

次に、DataFrame の例を見てみましょう。

# 二次元の表形式データ
df = pd.DataFrame([[1, 'a'], [2, 'b']], columns=["Number", "Letter"])
print(df)
   Number Letter
0       1      a
1       2      b

これらの構造が理解できていれば、抽出や演算といった操作がスムーズになります。

データを取り出す:locとilocを使いこなす

pandasで最もよく使う機能の一つが「データの抽出」です。ここで登場するのが lociloc です。

  • loc: ラベル(インデックス名や列名)で指定
  • iloc: 行番号や列番号で指定

以下は、実際のデータを用いた練習問題の一部です。
まずは、次のようなデータフレームを作成します。

import numpy as np
import pandas as pd

df = pd.DataFrame(
    np.arange(25).reshape(5, 5),
    index=[f"r{i}" for i in range(5)],
    columns=[f"c{i}" for i in range(5)]
)
print(df)
     c0  c1  c2  c3  c4
r0    0   1   2   3   4
r1    5   6   7   8   9
r2   10  11  12  13  14
r3   15  16  17  18  19
r4   20  21  22  23  24

この中から、「r1」「r3」の行と、「c1」から「c3」の列を抽出してみましょう。

# locでラベル指定
subset = df.loc[["r1", "r3"], "c1":"c3"]
print(subset)
     c1  c2  c3
r1    6   7   8
r3   16  17  18

さらに、この抽出結果の要素をすべて2乗してみます。

# 要素を2乗
squared = subset ** 2
print(squared)
     c1   c2   c3
r1   36   49   64
r3  256  289  324

このように、データを指定して取り出す→加工するという操作は、pandasで非常に頻繁に使います。ここを繰り返し練習することで、実務に直結するスキルが身についていきます。

手を動かして覚えるpandas操作

pandasの理解を深めるには、実際に手を動かしてコードを書くことが最も効果的です。ただ読んでいるだけでは、「知っている」だけで終わってしまいます。実際に操作することで、「使える」知識に変わっていきます。

以下では、実際の練習問題をもとに、よくある操作をいくつか体験してみましょう。

演習問題で試す「データ抽出・計算・集計」

まずは、各列の平均値を計算し、それを降順に並べてみましょう。

# DataFrameを再掲
df = pd.DataFrame(
    np.arange(25).reshape(5, 5),
    index=[f"r{i}" for i in range(5)],
    columns=[f"c{i}" for i in range(5)]
)

# 平均を降順に並べる
mean_sorted = df.mean().sort_values(ascending=False)
print(mean_sorted)
c4    14.0
c3    13.0
c2    12.0
c1    11.0
c0    10.0
dtype: float64

このような統計的な操作は、データの傾向をつかむうえで非常に役立ちます。

次に、時系列データの扱い方も見てみましょう。以下は、2021年1月1日から100時間分のデータを持つ時系列DataFrameです。

# 時系列データの作成
ts_df = pd.DataFrame(
    range(100),
    index=pd.date_range("2021-01-01", periods=100, freq="1H"),
    columns=["data"]
)
print(ts_df.head())
                     data
2021-01-01 00:00:00     0
2021-01-01 01:00:00     1
2021-01-01 02:00:00     2
2021-01-01 03:00:00     3
2021-01-01 04:00:00     4

1月3日のデータだけを抽出して合計を求めてみましょう。

# 日付で抽出
jan3 = ts_df["2021-01-03"]
print(jan3.sum())
data    1428
dtype: int64

さらに、3の倍数だけを抽出してみる操作も練習してみます。

# 3で割り切れる行のみ
filtered = ts_df[ts_df["data"] % 3 == 0]
print(filtered.head())
print("抽出数:", len(filtered))
                     data
2021-01-01 00:00:00     0
2021-01-01 03:00:00     3
2021-01-01 06:00:00     6
2021-01-01 09:00:00     9
2021-01-01 12:00:00    12
抽出数: 34

このような簡単な問題でも、手を動かして解いていく中で構文が体に染み込んでいきます。

pandas学習の壁を乗り越えるコツ

pandasのように機能が豊富なライブラリは、最初の学習で圧倒されがちです。ここでは、挫折せずに学習を続けるためのコツを紹介します。

少しずつ積み上げる反復学習

一気に全部覚えようとすると、挫折のリスクが高まります。おすすめは、毎日1問でも演習を続けること。たとえば、DataFrameの作成→列の抽出→条件フィルタ→平均値計算…というように、ステップを細かく刻んで学びを積み上げると、自然と理解が深まります。

ドキュメントだけに頼らない補助教材の活用

pandasの公式ドキュメントは確かに信頼できますが、それだけで学ぶのは効率が悪いです。演習付きの教材やチュートリアルを使うことで、「やって覚える」スタイルが身につきます。特に、実務を想定した演習は実践力を養うのに最適です。

本記事で紹介している演習問題も、実際の現場でよく使う処理が含まれており、コードの意味を一つひとつ理解しながら進めることで、実用的なスキルとして身につきます。

pandasの学習を加速させる工夫

慣れてきたら、自分の興味あるデータを使って試すのも学習には効果的です。ネットからCSVデータをダウンロードして、pandasで加工してみることで、さらに理解が深まります。

自分の興味あるデータで試す

例えば、スポーツの成績表、株価データ、公開されている政府の統計データなどを使って、列の抽出や条件フィルタを試してみてください。実際のデータは汚れていたり欠損していたりすることが多いため、pandasの本来の強みが見えてきます。

誰かと一緒に学ぶ or 解答付き演習を使う

可能であれば、学習仲間と一緒に問題を解いたり、答え合わせをすることで、別の視点から学ぶことができます。独学で進める場合でも、解説付きの演習があると、正しい理解に導いてくれるので安心です。

実際に使用した練習問題のように、解答がセットになっているものを活用することで、手を動かしながら「なぜそうするのか」を学ぶことができます。

まとめ

pandasは非常に強力なツールですが、その多機能さゆえに学習者を悩ませる側面もあります。だからこそ、学習の順番と方法が重要になります。

まずは、SeriesとDataFrameの基本構造を理解すること。次に、データの抽出方法や集計処理を一つひとつ確実に押さえていく。そして何より、実際に手を動かして、小さな演習問題を解き続けることが、最も効果的な学びの道です。

本記事で紹介したコードや演習問題を、ぜひ今日から試してみてください。最初は戸惑っても、続けることで「できる」実感が必ず得られます。pandasは決して初心者を拒むツールではなく、味方にすればあなたのデータ分析スキルを飛躍的に高めてくれるはずです。