【予防と対策】自身の行いをパワハラと認めない上司にならないために
パワハラはなぜ起こってしまうのでしょうか?
上司から部下への叱咤激励や指導がいつの間にか相手に精神的苦痛を与えるような発言に変わってしまい、気付いたら取り返しのつかない状態に陥ってしまっている部下が、退職もしくは自死を選んでしまったというニュースを時折見るようになりました。
この記事では、パワハラといえる段階はどこなのか、パワハラを起こさないようにするための対策や予防策を講じられるように、丁寧に解説していきます。今一度自己反省を促して、視野を狭めずパワハラをしない上司になれるように努めてみましょう。
目次
パワハラと指導の違い
職場で起こりうるハラスメントは4種類あり、セクハラ・マタハラ・育介ハラ・パワハラとあります。中でもパワハラがハラスメントの中でも突出して深刻で、国に寄せられた「労働相談」や厚生労働省が公表した「職場のハラスメントに関する実態調査」においてパワハラが最も多いものとなっています。
上の立場にいる人が、下の立場にいる部下に対して人権侵害するようなパワハラは決して許されるものではありません。ただし、職場において先輩職員や上司は部下に対して指導を行わなければならないときがあります。この時、場合によっては叱責になることがあるかもしれません。ミスを何度もしている部下に指導を行い、その本人が不快な気持ちになったらそれはパワハラとなるのでしょうか。
それでは、まずパワハラと指導とは何か解説していきます。
パワハラとは?
法律上の定義では、「事業主が職場において行われる優越的な関係を背景とした言動であって、業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより、その雇用する労働者の就業環境が害されること」とあります。
この「優越的な関係」「業務上必要かつ相当な範囲を超えたもの」「就業環境が害されること」の3点を満たしているものがパワハラといえることになっています。
パワハラは類型が多く、6つあります。
- 身体的な攻撃:暴行や障害
- 精神的な攻撃:名誉毀損や侮辱、酷い暴言など
- 人間関係からの切り離し:隔離、仲間外れ、無視
- 過大な要求:業務上明らかに不要なこと・遂行不可能なことの強制、仕事の妨害
- 過小な要求:業務上の合理性なく、能力経験とかけ離れた程度の低い仕事を命じること・与えないこと
- 個の侵害:私的なことに過度に立ち入る
引用元:NO パワハラ | 厚生労働省
6つの類型に当てはまる・それらしい行為や言動をする職員がいたら管理者やその上に報告するべきでしょう。
指導とは?
部下や後輩職員を育成するにあたって、上司や先輩職員からの指導は重要な業務のひとつです。期待している部下やあまり覚えが悪い後輩職員に対して熱心に指導するあまり、強い言動になってしまうことがあるかもしれません。
管理職や上司の悩みで最も多く挙げられるのは、部下がなかなかうまく育たないことで部下の指導に難しさを感じていることがわかっています。育成もさることながら、指示通りに動かないこともまた悩みのひとつとしている管理職の割合も増加傾向にあります。
指導方法によって部下のモチベーションが上がるか、下がるかは部下本人の価値観や性格にもよりますが、上司の指導方法ひとつでそれが「指導」となるか「パワハラ」となるかが変わっていきます。
指導→パワハラへ変化していく原因とは?
パワハラと指導の一番の違いは、目的です。業務目的にしっかり沿って行われた注意や叱責ならば、部下の成長を促すため・業務状況改善のためなどの場合であると、パワハラではなく指導に該当するようです。
しかし、名目上で業務のためといったところで、定義の3点全てに当たるような指導はパワハラと認定されてしまいます。上司の注意・叱責で部下が萎縮してしまったり、職場内の雰囲気が悪くて退職者が続出したりするような影響が出ると、上司の行為はパワハラと認定されます。
一方で、注意をしてから部下の責任感が強まり、仕事のミスがなくなった、大きな仕事が任せられるようになったといった職場の雰囲気や業務状況が改善された場合は、上司の行動・言動は適正であるといえます。
指導からパワハラへ変わっていってしまった原因は大きく2つ挙げられます。
コミュニケーション不足
上司と部下とでは年齢や歴、価値観などの違いからコミュニケーションをとるのが難しいと感じるケースがありますが、互いに協調性を持って業務を終わらせる必要があります。
ここで、部下と良好なコミュニケーションがとれると信頼関係が構築されるでしょう。会議や意見交換の時にいやな雰囲気が形成されず、ポジティブな環境で部下も上司も仕事にあたれると思います。しかし、上司と部下とのコミュニケーションが取れていないと、当然良好な関係は築けず、お互いにとっても職場にとっても損です。
昨今、SNSの普及によって若年層はSNSを使ったコミュニケーションを得意としていますが、面と向かっての対人コミュニケーションは苦手とする傾向にあります。自分の意見を伝えるとき・話を聞くとき、そういったコミュニケーションを学べる大学が増加してくるくらい若い世代のコミュニケーション能力が低下しているのです。
部下がうまく言葉を伝えられない・意見が言えない、上司は少ない言葉で考えを読み取ろうとしてうまくいかない、それで事が進んでいき結果として仕事にミスが生じたり、双方にストレスが溜まっていくようになります。
双方のフラストレーションが溜まりすぎた結果弾けて、パワハラにつながり、負のループが連鎖してしまいます。
期待した仕事ができない人
この場合の「仕事ができない人」とは、業務能力が不足していたり、キャパシティが足りなかったりが理由で、ミスを連発するような人のことです。自分が期待した仕事を遂行できない人へ指導を行うことは、上司にとって強いストレスとなり得ます。同じ指導をし続けるというのは不愉快であると同時に部下に対して不安感も芽生えてくることでしょう。
例えば、「また〇〇が同じミスをした、誰でもできる簡単な仕事なのに…」→「なんでこんなこともできないんだ、いい加減にしてくれ」→「お前は無能だ、何もできない部下を持つ自分が可哀そうだ」といった具合で言動が変化していき、パワハラへ繋がっていきます。
能力不足の人に対して、能力以上の業務を与えてそれをミスすると人格否定するような言動で部下を萎縮させたり、マニュアル外の業務を行わせてミスを誘うような行動を行うのは当然アウトです。また、そもそも割り当てた業務の量は適正か、業務を遂行するための教育や研修は十分に行なったかを確認することも大切です。
ハラスメント研修
ハラスメントは、良好な職場環境を保つために決して許されるものではなく、社員の精神的健康を守るためにも非常に重要なテーマです。 ビズアップ総研では、ハラスメントが企業・団体に及ぼす悪影響を様々な観点で学べる講座を多数ご用意しています。eラーニングで気軽に学べるe-JINZAIの2週間無料お試しID発行も行っておりますので、この機会にぜひご利用ください。
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パワハラを起こさないためには指導方法を見直すのが一番だと思われます。
まず部下とのコミュニケーション方法を見直してみましょう。
部下とのやり取りにおいて、指導は怒鳴らずにできているか・相手を「ひとりの人」として見ているか(「物」として見ていないか)や仕事が完遂できたときに褒めているか・感謝の言葉をかけているかなどやり取りひとつでも注意すべき点はたくさんあります。また、叱責する場合でも、「やる気を出せ」といった目に見えないものを対象にした指導だと、言われた側はどうすればいいのかわかりません。具体的な行動改善を提示することで、部下の足りなかった点を自分自身で見つけられるようになったり、ミスをなくせるように動きが変わるようになったりするかもしれません。
言葉の使い方を少し変えるだけで、部下とのコミュニケーションが良い方へ変化するでしょう。
次に仕事ができない人に対しては、報連相やタスク管理を徹底させましょう。これらが身についていないであろう部下には、一旦業務のことなら何でも伝えるようにさせて基本的な動きであるということを定着させるようにしましょう。逐一上司が進捗を確認したり、細かく指示を出したりして、意識的にサポートすることが重要です。
また、業務の説明を行ったら、その業務にあたってもらい、業務終了したら反省・フィードバックするという仕事のサイクルを作ってみましょう。このサイクルを繰り返すことで徐々に基本的な仕事の進め方が定着することでしょう。その業務は部下の適性を見極めて任せることで、成功体験となり、本人のモチベーション向上につながります。
まとめ
パワハラは特に悪い点がなかった人に対する嫌がらせやいじめからなることもありますが、部下を思うがあまり行き過ぎた指導を行って、それが結果的にパワハラとなってしまうこともあります。上司となる人は、部下への指導の際は、強い言葉にならないように注意してプラスの声掛けを部下にしてあげてください。
パワハラの定義がわかっていれば、予防策を講じる事ができますし、仕事ができない部下への対策はいくらでもできます。
自分自身がパワハラの加害者にならないように、部下への指導は気を付けて行なっていきましょう。