研修費の勘定科目とは?経費に計上できる費用や仕訳の具体例などを解説

「研修費とは?」
「研修費の勘定科目とは?」
「研修費用として経費計上できるもの?」

このようにお考えではありませんか?
従業員が業務に直接関係するスキルアップや知識向上、免許・資格取得のために必要な費用は、「研修費」の勘定科目で一般的には処理します。

しかし、研修費用を処理する場合の勘定科目には、研修費以外の勘定科目もあるため、仕訳には注意が必要です。研修費のなかには、経費として計上できるものとできないものがあるため、会社の経営者や経理担当者はしっかり内容を把握しておく必要があります。

この記事では、研修費を仕訳するときの勘定科目や研修費として経費計上できるもの、できないものなどについて解説します。ぜひ参考にしてください。

目次

研修費とは?

研修費とは、従業員が業務に直結するスキルアップや知識向上、必要な免許や資格取得にかかった費用を指します。研修などにかかった費用は、経費として計上することが可能です。

たとえば、以下のようなものが経費として処理できます。

  • セミナーや接客・マナー講習などへの参加費
  • 免許や資格取得にかかった講習会の受講料
  • 研修で使用したテキスト代やビジネス本の購入費
  • 講習会に参加するための交通費や宿泊費 など

適切な経費計上は、企業の財務健全性を保つためにも重要です。どのような費用が研修費として経費として処理ができるのか、把握しておきましょう。

研修費用を処理する場合の勘定科目

研修費用として用いる勘定科目には、どのようなものがあるのか把握しておきましょう。

  • 研修費
  • 新聞図書費
  • 前払費用
  • 福利厚生費
  • 雑費

研修費

「研修費」とは、従業員のスキルアップや知識向上を目的とした研修会・セミナー、また、業務に必要な資格所得に支払った場合に処理する勘定科目です。

具体的には以下のようなものを指します。

  • 業務に関連した社外で実施されるセミナーや講習会などの費用
  • 業務に必要な資格取得費用
  • 今後の業務に必要な資格取得費用(英会話レッスン) など

研修のテキスト代や準備に支払った費用など、研修に関連する費用をまとめて管理する場合に適した勘定科目です。ただし企業側は、研修費用の予算を十分に確保している必要があります。

【仕訳の具体例】
従業員が参加した研修会費用3万円を現金で支払った。

借方貸方
研修費 30,000円現金 30,000円

新聞図書費

「新聞図書費」とは、業務に必要な書籍や雑誌、新聞、または、知識の向上や資格取得を目的に購入した参考書籍などを購入した場合に処理する勘定科目です。

具体的には以下のようなものを指します。

  • 新聞や雑誌の定期購読(業界に精通するために必要場合)
  • 業務に関係するスキルの向上や資格取得を目的として購入した書籍代

新聞図書費は、従業員のスキルアップや知識向上のために使用するものに限ります。そのため、経営者や個人事業主が個人的なスキルアップに購入した書籍や雑誌などは含まれません。

【仕訳の具体例】
従業員の研修に必要なテキスト5冊分の代金5万円を現金で支払った。

借方貸方
新聞図書費 50,000円現金 50,000円

前払費用

「前払費用」とは、受講費が必要な複数回開催される研修会などに対し、前払いとして支払った場合に処理する勘定科目です。翌期以降に支出する費用を前払いで当期に支払ったものに使用します。

たとえば、6ヶ月のカリキュラムが設定された研修会で、事業年度を超えて翌期以降も継続して実施される場合などが該当します。前払費用の勘定科目で仕訳する場合は、支払い時と決算時期に仕訳が必要になるため、しっかり覚えておきましょう。

【仕訳の具体例①】
従業員の研修費用30万円を現金で支払った。研修の実施時期は、当期から翌期にかけて6ヶ月間行われるものである。

借方貸方
前払費用 300,000円現金 300,000円

【仕訳の具体例②】
決算期が到来したので、前払費用のうち研修費として当期負担分を振替えた。なお、研修期間全6ヶ月のうち、今期の研修期間は2ヶ月間であった。

借方貸方
研修費 100,000円前払費用 100,000円

福利厚生費

「福利厚生費」とは、給与や賞与とは別に設けられ実質的に得られる報酬を指します。従業員や従業員の家族に対し支払われるものです。
具体的な福利厚生として代表的なものが「家族手当」や「家賃手当」があります。「健康保険料」や「厚生年金保険料」は、会社と従業員で折半するため、会計上では「法定福利費」として処理されます。

研修費用のうち「福利厚生費」として処理できるものは、従業員が任意で行うスキルアップや知識向上に対する費用で、全従業員を対象にした資格手当などです。

【仕訳の具体例】
資格取得費用として現金1万円を従業員に支給した。

借方貸方
福利厚生費 10,000円現金 10,000円

雑費

「雑費」とは、重要性の低いものを処理する際に使用され、いずれの勘定科目にも属さない費用を指します。研修費用として処理する場合は、年間の研修費の予算が少額で、重要性に乏しい場合です。

ただし、雑費の注意点は、一目で何に使用したかわからない勘定科目のため、税務上で問題になる恐れがあります。研修費などの科目で処理できそうな場合や少額でない場合は、別の勘定科目での処理がおすすめです。

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【個人事業主の場合】研修費の勘定科目

「個人事業主」の場合でも、事業に関する研修に払った費用は、「研修費」として処理できます。現在、業務に直接関係がなく、今後の事業拡大に必要なセミナーや研修会などの受講費などは経費として認めることが可能です。

ただし、国家資格などの資格取得にかかった費用は経費にするのは難しいため、注意が必要でしょう。また、事業開始前に受けた必要な研修費は、「開業費」に計上できます。開業費は繰延資産となるため、税務上は任意の年に償却が可能です。

たとえば、開業1年目は利益が得られず、2年目に償却するといった処理が可能なため節税効果も得られます。開業前に受けた研修費の領収書はしっかり取っておき、開業費に計上しましょう。

研修費用として経費計上できるもの

業務に関係するスキルアップや知識向上、資格取得などは、研修費の経費計上して問題ありません。
研修費用として経費計上できるものには以下のようなものが挙げられます。

研修参加費用研修プログラムの参加費やセミナーの受講料など
交通費研修会場までの電車代やバス代、航空券代など
宿泊費研修に参加するために必要な宿泊費用
食事代研修期間中に関わる食事代※一定の範囲内で認められるケースが多い
教材費研修で使用する資料や教材の購入費用など
通信費オンライン研修などに関連するのインターネット接続費用など
必要経費(その他)研修会場の事前準備や後片付けなど研修に関連する必要な費用

自社に講師を外部から招いて従業員の研修を開催するケースもあります。その際の講師謝礼も研修費として経費計上が可能です。外部講師が個人事業主の場合、源泉徴収の対象になります。

また、インターネットや情報技術を活用して行う学習方法の「eラーニング」による研修費用も研修費として計上できます。ただし、勘定科目は企業の会計方針や研修の目的、導入にかかる設備、機器の有無などによって異なるため注意が必要です。

研修費用として経費計上できないもの

研修費のなかでも、一般的には研修費用に該当するような内容でも経費にできない場合があります。研修費としての経費のポイントは、業務に直接関係あるか否かです。たとえば、業務にまったく必要のない教室に従業員が通うための費用は研修費として処理できません。業務に直接関係している国家資格の場合でも、資格取得にかかった費用を経費計上できない可能性もあります。

ただし、運送会社やタクシー会社のように自動車免許を取得する場合は、業務に必須となる資格取得に関しては、経費として処理が可能です。経費にできるかどうかの判断が難しい場合は、税理士などの専門家に相談しアドバイスをもらいましょう。

まとめ

「研修費」の勘定科目で処理できるものは、従業員が業務に直接関係するスキルアップや知識向上または、免許や資格取得するために必要な費用を指します。

しかし、研修費用を処理する場合の勘定科目には、研修費以外にも「新聞図書費」や「前払費用」、「福利厚生」、「雑費」などの勘定科目が使用される場合もあるため、仕訳には注意が必要です。

また研修費のなかには、経費として計上できるものとできないものもあるため、会社の経営者や経理担当者はしっかり内容を把握しておく必要があります。この記事では、研修費を仕訳するときの勘定科目や研修費用として経費計上できるもの、できないものなどについて説明しました。

会社の経営者や経理担当者は、研修費を仕分けする勘定科目や経費計上できるものを理解し、研修費の勘定科目の仕訳ミスを未然に防ぎましょう。