【初心者向け】EV時代の自動車業界ガイド

電気自動車

自動車業界は今、「100年に一度の大変革期」と呼ばれています。特に電気自動車(EV)の普及や環境規制の強化が進み、従来のビジネスの仕組みが根本から変わろうとしています。しかし、ニュースで耳にする「ギガキャスト」「e-Axle」「バッテリー市場」などの言葉は難しく、初心者にとっては理解が追いつかないことも多いでしょう。この記事では、自動車メーカーのビジネスモデルの基本から最新の変化までを、やさしく整理して解説します。

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目次

自動車メーカーの基本的なビジネスモデルとは

自動車メーカーは、単に車を売るだけでなく、さまざまなサービスを通じて収益を上げています。ここでは、その基本的な収益構造と、日本メーカーの特徴について見ていきましょう。

車の販売とアフターサービスが収益の柱

自動車メーカーの主な収益源は、新車の販売とそれに付随するアフターサービスです。新車の販売は、単価が高いため大きな売上となりますが、車両の製造には多大なコストがかかります。そのため、利益を安定させるためには、購入後のメンテナンスや部品交換といったアフターサービスも重要な収益の柱となっています。

日本メーカーは海外依存度が高い

日本の自動車メーカーは、国内市場だけでなく海外市場でのビジネスが非常に重要です。2023年の日本の自動車メーカーの総生産台数2,651万台のうち、海外生産が66.1%、輸出が16.7%を占めており、海外でのビジネスが全体の8割以上を占めています。これは、中国、欧州、米国で世界の自動車販売台数の約67%を占めていることからもわかるように、これらの主要市場における環境規制の強化に対応しないと、ビジネスが成り立たないことを意味しています。

EVシフトで何が変わるのか

ガソリン車から電気自動車(EV)へのシフトは、自動車産業に大きな変化をもたらしています。ここでは、世界のEV市場の現状と、この変化が自動車メーカーの利益構造にどのような影響を与えるのかを解説します。

世界で急拡大するEV市場

世界の電気自動車(BEV)およびプラグインハイブリッド車(PHEV)の新車販売台数は急増しており、2023年には約1,420万台に達し、新車販売全体の約16%を占めています。2024年にはさらに増加し、約1,700万台になると予測されています。しかし、その一方で、レンタカー大手のハーツがEVを売却してガソリン車に再投資すると発表したり、米国での税控除対象車種が大幅に減少したりするなど、ネガティブな情報も散見されるようになってきました。

この現状は、技術が普及する過程で一時的に売上が停滞する「プラトー現象」や、イノベーターから大多数の消費者に広がる際に深い溝が生じる「キャズム」に入った可能性があります。この課題を乗り越えるためには、斬新さよりも「安全・安心」と「価格」が重要になると考えられています。

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新しい技術(バッテリー・e-Axle・ギガキャスト)

EVシフトを支えるには、新しい技術の導入が不可欠です。ここでは、EVの心臓部となるバッテリーと、生産方法を革新するe-Axle、そしてギガキャストについて解説します。

バッテリーが自動車の競争力を左右する

EVにとって、バッテリーは最も重要な部品の一つです。世界の車載用バッテリー市場は急拡大しており、今後もその傾向は続くと予想されます。しかし、この市場では中国や韓国のメーカーが大きなシェアを占めており、日本のメーカーは縮小傾向にあります。

世界の車載用リチウムイオン電池の地域別シェア変化は以下の通りです。

今後はバッテリーのリサイクルも重要なビジネスとなり、特に先行する中国では今後リサイクルされるバッテリーが急増すると見込まれています。

日本中国韓国その他
2015年51.7%27.4%14.4%6.5%
2020年21.1%37.4%36.1%5.4%

e-Axleとギガキャストがもたらす生産革命

  • e-Axle(イーアクスル)
    • 概要: モーター、インバーター、トランスミッションを一体化した駆動ユニット。
    • メリット: 車体の小型化・軽量化、開発工数の削減が可能。
    • 部品メーカーのチャンス: 単品ではなくシステム全体として受注できるため、新しいビジネスチャンスが生まれる。
  • ギガキャスト
    • 概要: テスラが開発した革新的な製造方法で、超大型のアルミダイカストで車体部品を一体成型する。
    • 特徴: 従来の車体後部部品を約170点からわずか2点に、溶接箇所も約1,600カ所削減可能。
    • 課題: 高額な設備投資が必要なため、販売台数が少ないメーカーにとっては導入が難しい。

世界と日本の立ち位置

自動車産業の変革期において、世界と日本のメーカーはどのような状況に置かれているのでしょうか。

中国・欧米がリードする現状

世界のEV/PHEV新車販売台数を見ると、BYDが302万台でトップに立ち、日系自動車メーカーはトップ10に入っていません。中国や欧米では、環境規制の強化がビジネスを牽引しており、特に中国はギガキャストのような革新的な製造技術を次々と実用化しています。この動きに対応していかないと、日系の自動車ビジネスは成り立たなくなると指摘されています。

日本メーカーに迫られる課題とチャンス

日本の自動車メーカーは、海外に比べてEV化への動きが遅れているとされています。しかし、この変革は同時に大きなビジネスチャンスでもあります。

特に、EVシフトによって重要となる「エネルギーマネジメント」や「サーマルマネジメント」は、自動車の生命線であり、日本の部品メーカーにとって大きなビジネスチャンスとなります。これらの技術は、バッテリーのエネルギーを効率的に活用し、航続距離を確保するために不可欠です。

また、ソフトウェア定義型自動車(SDV)の時代が到来し、統合ECUが普及することで、サプライヤーの仕事が激減する可能性がありますが、同時に新たな連携やM&A(合従連衡)の機会も生まれると予測されています。

学びを深めるためのeラーニング活用

この大変革期を生き抜くためには、最新の知識を継続的に学ぶことが不可欠です。eラーニングは、そのための有効な手段となります。

初心者でも理解を体系化できる

eラーニングは、専門的な内容を段階的に、自分のペースで学ぶことができます。今回のテーマのように、自動車産業の歴史や技術の変遷、市場の動向などを体系的に学ぶことで、断片的な知識を整理し、全体像を把握することができます。

EV・自動車産業の最新動向を継続的に学べる

EVや自動運転技術は日々進化しており、新しい情報が次々と生まれています。eラーニングを活用することで、最新の法規制や技術動向をリアルタイムで追うことが可能です。これにより、日系部品メーカーは、海外の動向を先取りし、早めのアクションをとることが求められます。

まとめ

自動車産業は、電動化やデジタル化といった大きな波に直面しています。これは、単に車の種類が変わるだけでなく、メーカーのビジネスモデルやサプライチェーン全体に影響を与える変革です。

  • ビジネスモデルの変化: 従来の「販売+アフターサービス」という収益構造から、EV関連サービスやソフトウェアによる収益が重要になってきます。
  • 技術革新の重要性: バッテリー、e-Axle、ギガキャストといった新しい技術が、コスト削減や生産効率向上に不可欠となります。
  • 日本の課題とチャンス: 日本はEVシフトへの対応が遅れていると指摘されますが、エネルギーマネジメントやサーマルマネジメントといった分野で大きなビジネスチャンスを掴む可能性があります。

この大変革期は、課題であると同時に、新しいビジネスを生み出す大きなチャンスでもあります。

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