子どもにSNSを使わせて大丈夫?海外で進む未成年規制とは
子どもがスマートフォンやSNSを使う機会が増えるなかで、「何歳からSNSを使わせてよいのか」「投稿やDMをどこまで見守るべきなのか」と悩む保護者は少なくありません。友人との交流や情報収集に役立つ一方で、SNSには有害コンテンツ、いじめ、性的な被害、長時間利用による依存、睡眠や学習への影響、個人情報の流出といったリスクもあります。
こうした課題を受けて、海外では未成年のSNS利用をめぐる規制が強化されつつあります。利用規約上の年齢制限だけでは十分に機能しないケースもあることから、近年は法律によってプラットフォーム側に年齢確認や安全対策を求める動きが広がっています。
日本でも、青少年が安全にインターネットを利用できる環境づくりは進められています。ただし、現時点ではSNSそのものを年齢で一律に制限するというより、フィルタリングやペアレンタルコントロール、家庭での見守りや利用教育を組み合わせるアプローチが中心です。
この記事では、未成年のSNS規制をめぐる海外の動向を整理しながら、各国でどのような対策が進んでいるのか、保護者としてどのような点を押さえておきたいのかをわかりやすく解説します。
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各国の規制動向
各国の規制動向をまとめると、以下になります。以下のセクションで、詳しく紹介していきます。
| 国・地域 | 規制の方向性 | 主な内容 |
|---|---|---|
| オーストラリア | 16歳未満のSNS利用を制限 | 一定のSNSプラットフォームに対し、16歳未満の子どもがアカウントを作成・保持できないよう合理的な措置を求める。子ども本人や保護者ではなく、プラットフォーム側に対応責任を置く点が特徴。 |
| イギリス | 有害コンテンツから守る規制 | Online Safety Actに基づき、SNS企業や検索サービスに対して、違法コンテンツや子どもに有害なコンテンツへの対策を求める。年齢確認やリスク軽減措置が重要な柱。 |
| EU | 未成年保護を前提にした安全設計 | DSAに基づき、未成年が利用する可能性のあるオンラインプラットフォームに対して、リスク評価や年齢に応じた安全対策を求める。初期設定、通報機能、広告・個人情報の扱いなども論点。 |
| アメリカ | 州ごとに規制が進む | 連邦全体で統一されたSNS年齢規制ではなく、ユタ州など一部の州で未成年アカウントへの制限、保護者の関与、データ利用制限などが進む。州によって内容に差がある。 |
| 日本 | フィルタリングと利用教育が中心 | 青少年インターネット環境整備法に基づき、フィルタリングやペアレンタルコントロール、家庭での見守り、利用教育を重視。SNSそのものへの包括的な年齢制限とは異なるアプローチ。 |
オーストラリア:16歳未満のSNS利用を制限する動き
16歳未満のアカウント保持を防ぐ制度へ
海外動向の中でも、特に強い規制として注目されているのがオーストラリアです。オーストラリアでは、2024年にOnline Safety Amendment(Social Media Minimum Age)Act 2024が成立し、一定のSNSプラットフォームに対して、16歳未満の子どもがアカウントを作成・保持できないよう合理的な措置を取ることが求められています。規制は2025年12月10日から適用される予定です。
ポイントは、罰則の対象が子ども本人や保護者ではなく、SNSプラットフォーム側に置かれていることです。オーストラリア政府は、16歳未満の子どもが年齢制限対象のSNSにアクセスしても、子どもや保護者に罰則は科されないと説明しています。つまり、家庭に責任を押しつけるのではなく、サービス提供側に安全な仕組みづくりを求める制度設計だといえます。
すべてのオンラインサービスが禁止対象ではない
一方で、オーストラリアの制度は、未成年のオンライン利用全体を禁止するものではありません。eSafety Commissionerは、16歳未満でも対象外のプラットフォームや、教育・健康・支援に関する安全なサービスは利用できると説明しています。規制の焦点は、若年層に強い影響を与えやすいSNSアカウント利用にあります。
この点は、日本で議論する際にも重要です。未成年のSNS規制というと、「子どもからインターネットを取り上げるのか」という極端な受け止め方になりがちですが、海外では「危険性の高い機能やサービスにどう年齢に応じた制限をかけるか」という形で制度設計が進められています。(参照:Social media minimum age | Australian Government / Social media age restrictions and your family | Australian Government)
イギリス:SNSを禁止するより「有害コンテンツから守る」方向
Online Safety Actによるプラットフォーム規制
イギリスでは、Online Safety Act 2023に基づき、SNS企業や検索サービスに対して、違法コンテンツや子どもに有害なコンテンツから利用者を守る義務が課されています。GOV.UKの説明では、この法律は子どもと大人をオンライン上で保護するためのもので、SNS企業や検索サービスに対して、利用者の安全に関する責任を持たせる制度とされています。
イギリスの特徴は、未成年のSNS利用を一律に禁止するというよりも、プラットフォーム側にリスク評価と安全対策を求める点にあります。Ofcomは、2025年7月25日から、事業者が子どもへのリスクを軽減するための安全措置を講じる必要があると説明しています。具体的には、有害・危険なコンテンツが表示されにくいフィード設計、見知らぬ人から接触されにくくする仕組み、成人向けコンテンツへの年齢確認などが含まれます。
年齢確認の強化が重要な柱に
イギリスでは、年齢確認の強化も大きな柱です。コミュニケーション・通信系についての提言・情報発信を行うOfcomは、ポルノコンテンツを提供・許容するサービスについて、子どもが通常それらに遭遇できないよう「高度に有効な年齢確認」を導入する必要があると主張しています。また、SNSを含む一部のサービスでも、子どもに有害なコンテンツへアクセスさせないための年齢確認が求められています。
このようにイギリスでは、「SNSを使わせるか、使わせないか」だけでなく、子どもが使う可能性のあるサービスを前提に、設計段階から安全性を高める考え方が重視されています。企業側にとっては、年齢確認、コンテンツ推薦、通報機能、初期設定、保護者向け情報提供など、サービス全体の設計を見直す必要が出てきます。(参照:Online Safety Act | GOV.UK / New rules for a safer generation of children online | Ofcom)
EU:デジタルサービス法で未成年保護を強化
DSAに基づく未成年保護ガイドライン
EUでは、Digital Services Act(DSA:デジタルサービス法)に基づき、オンラインプラットフォームに対する規制が進んでいます。欧州委員会は2025年7月、DSAに基づく未成年保護に関するガイドラインを公表しました。このガイドラインは、子どもや若者がオンライン上で安全に過ごせるようにすることを目的としており、未成年がアクセス可能なオンラインプラットフォームに適用されます。
EUの規制は、特定年齢未満を一律に排除するというより、プラットフォームに対して「子どもにとって安全なオンライン体験」を設計することを求める方向です。たとえば、未成年に対するリスクを把握し、年齢に応じた初期設定、通報・救済手段、個人情報や広告の扱い、レコメンド機能の透明性などを整えることが重要になります。
企業に求められるのは「子どもを前提にした設計」
EU型の規制で重要なのは、未成年が利用する可能性を前提にしたサービス設計です。単に「未成年は利用禁止」と規約に書くだけでは十分とはいえず、実際に子どもが使った場合にどのようなリスクがあるかを評価し、そのリスクを下げる仕組みを用意することが求められます。
これは、日本企業が海外向けにアプリやSNS的なサービスを展開する場合にも関係します。EU域内の利用者を対象にする場合、サービス提供者はDSAの考え方を踏まえ、未成年保護、透明性、広告、個人情報、通報対応などを総合的に確認する必要があります。(参照:Commission publishes guidelines on the protection of minors | European Commission)
アメリカ:州ごとに規制が進む
ユタ州などで未成年アカウントへの制限
アメリカでは、連邦レベルで統一的なSNS年齢規制が進んでいるというより、州ごとに異なる規制が導入・検討されています。たとえばユタ州では、未成年のSNS利用に関する規制が進められ、未成年アカウントに対する制限や保護者の関与、個人情報の利用制限などが定められています。ユタ州の資料では、未成年のSNS利用が睡眠、学業、依存的利用などに影響を与える点が問題意識として示されています。
また、ユタ州の消費者保護部門は、SNS企業に対する未成年向けの新たな制限や要件について保護者向け情報を掲載しています。こうした州法型の規制では、年齢確認、保護者同意、利用時間、通知、データ利用などが論点になりやすい傾向があります。
(参照:Enforcing Utah’s Social Media Laws | UTAH)
州法型規制は企業対応が複雑になりやすい
アメリカの難しさは、州ごとに規制内容が異なる点です。ある州では保護者同意が重視され、別の州では未成年のデータ利用や通知制限、依存的設計の抑制が重視されるなど、企業にとっては対応範囲が複雑になりやすくなります。
特にSNS、コミュニティ、ゲーム、動画、学習アプリなど、未成年が利用する可能性のあるサービスでは、利用者の居住地や年齢によって適用されるルールが変わる可能性があります。海外展開を視野に入れる企業は、「アメリカ向け」と一括りにせず、州ごとの規制動向を確認する必要があります。
海外動向から見える3つの共通点
年齢確認は避けて通れない論点になっている
海外の未成年SNS規制に共通するのは、年齢確認の重要性が高まっていることです。オーストラリアでは16歳未満のアカウント利用を防ぐため、プラットフォームに合理的な措置が求められています。イギリスでも、成人向けコンテンツや子どもに有害なコンテンツへのアクセスを防ぐため、高度に有効な年齢確認が制度の柱になっています。
一方で、年齢確認を厳しくすると、本人確認情報の取得やプライバシー保護とのバランスが問題になります。顔認証、身分証明書、クレジットカード、第三者認証など、どの方法を使うかによって、ユーザーの負担や個人情報リスクが変わります。今後は「子どもを守るための年齢確認」と「過剰な個人情報収集を避ける設計」の両立が重要になるでしょう。
規制対象はSNSだけでなくオンラインサービス全体へ広がる
未成年保護の議論は、狭い意味でのSNSだけにとどまりません。イギリスのOnline Safety ActはSNS企業や検索サービスを対象にし、EUのDSAもオンラインプラットフォーム全体を視野に入れています。
今後は、動画共有、ゲーム、チャット、AIチャットボット、学習アプリ、掲示板、レビューサービスなど、ユーザー同士のやり取りやコンテンツ推薦があるサービス全般で、未成年保護の観点が求められる可能性があります。企業は「SNS企業ではないから関係ない」と考えるのではなく、未成年が利用する可能性があるか、ユーザー投稿やレコメンド機能があるかを確認する必要があります。
保護者任せからプラットフォーム責任へ移っている
もう一つの共通点は、未成年の安全を家庭や学校だけに任せるのではなく、プラットフォーム企業にも責任を負わせる方向に進んでいることです。オーストラリアでは、16歳未満のアクセスに対して子どもや保護者ではなくプラットフォーム側の対応が重視されています。イギリスでも、プラットフォームは子どもに有害なコンテンツへのアクセスを防ぎ、リスクを軽減する義務を負います。
これは、SNS疲れや依存、比較によるメンタルヘルスへの影響といった問題が、単なる個人の使い方の問題ではなく、サービス設計やアルゴリズムとも関係していると見られるようになったためです。今後は、通知設計、無限スクロール、レコメンド、広告表示、DM機能など、ユーザーの行動を強く促す仕組みそのものが規制対象として見直されていく可能性があります。
保護者が押さえておきたいポイント

海外の規制は「家庭任せ」から「サービス側の責任」へ移っている
海外の未成年SNS規制を見ると、子どものSNS利用を家庭だけで管理するのではなく、プラットフォーム側にも安全対策を求める流れが強まっています。たとえば、年齢確認、有害コンテンツの表示制限、知らない大人からの接触を防ぐ仕組み、通報機能、未成年向けの初期設定などが重要な論点になっています。
保護者にとって大切なのは、「海外ではSNSを禁止する方向に進んでいる」と単純に受け止めるのではなく、子どもが使うサービスにどのような安全機能があり、どこにリスクがあるのかを知ることです。利用するSNSやアプリの年齢制限、公開範囲、DM設定、位置情報、通知設定などを一緒に確認しておくことで、家庭内でのルールづくりもしやすくなります。
日本国内ではフィルタリングと家庭での話し合いが重要
日本では、青少年インターネット環境整備法に基づき、青少年が安全・安心にインターネットを利用できる環境整備が進められています。同法は、青少年がインターネット上の情報を適切に取捨選択し、適切に発信する力を身につけることや、有害情報を閲覧する機会をできるだけ少なくすることを目的としています。
また、こども家庭庁も、スマートフォンやSNS等の安全・安心な利用に向けて、フィルタリング、時間管理機能、課金制限機能、ペアレンタルコントロールの活用を呼びかけています。こうした機能は、子どもを一方的に監視するためのものではなく、トラブルに巻き込まれにくい環境を整えるためのものです。
一方で、機能面の対策だけでは十分ではありません。SNSで見知らぬ人とやり取りしない、個人情報や顔写真を安易に投稿しない、困ったことがあればすぐに相談する、夜遅くまで使い続けないなど、家庭内で具体的なルールを決めておくことも大切です。子どもの年齢や理解度に応じて、禁止だけでなく「どう使えば安全か」を一緒に考える姿勢が求められます。
まとめ:海外動向を参考に、家庭でもSNSとの向き合い方を考えよう
未成年のSNS規制は、海外で急速に強化されています。こうした海外動向から見えてくるのは、子どものSNS利用を単に「禁止するかどうか」ではなく、年齢に応じて安全に使える環境をどう整えるかが重要になっているということです。SNSは、友人との交流や学びの機会にもなる一方で、使い方によってはトラブルや心身への負担につながることもあります。
保護者としては、海外の規制を知ることで、子どものSNS利用にどのようなリスクがあるのかを具体的にイメージしやすくなります。そのうえで、フィルタリングやペアレンタルコントロールを活用しながら、家庭内で利用時間、投稿内容、やり取りの範囲、困ったときの相談先を話し合っておくことが大切です。
未成年のSNS利用をめぐる環境は、今後も変化していくと考えられます。海外の動向も参考にしながら、子どもを過度に縛るのではなく、安全に使う力を育てるという視点で、家庭でのSNSルールを見直してみましょう。
e-JINZAI for business『SNS教育』
子どものSNS利用を考えるうえでは、保護者自身がSNSの特徴やリスクを理解しておくことも大切です。SNSは社会人にとっても、情報収集や人脈づくり、企業の広報・採用・営業活動に関わる重要なツールです。一方で、使い方を誤ると炎上や情報漏洩につながるリスクもあります。 e-JINZAI for business『SNS教育』では、個人として、企業として備えておきたいSNS運用のメリット・デメリットや注意点を学び、ビジネスで安全かつ効果的に活用する方法を身につけられます。
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