知っておきたい両立支援制度!育児をしながら働くためのポイント

育児と仕事の両立は、多くの働く親にとって大きな課題です。特に日本では、出産を機に離職する女性が一定数いる一方で、男性の育児参加も十分に進んでいない現状があります。しかし、少子化が進む中で、企業や社会全体が子育てを支援し、育児と仕事の両立を後押しする取り組みが求められています。
そうした背景から、政府は育児休業制度の充実や柔軟な働き方の促進に力を入れており、企業側にも積極的な支援が求められています。本記事では、育児と仕事の両立を支える「両立支援制度」に焦点を当て、利用できる制度の概要や最新の法改正、企業の取り組みについて詳しく解説します。
目次
育児と仕事を両立するための課題

育児と仕事を両立する上で、最も大きな課題は「時間」と「経済面」の問題です。育児には多くの時間を要しますが、従来の働き方では十分な時間を確保するのが難しい現状があります。特にフルタイム勤務の場合、保育園の送迎や急な体調不良への対応が難しく、親の負担が大きくなります。
また、育児休業を取得すると収入が減少することも大きな課題です。育児休業給付金が支給されるものの、全額補償されるわけではなく、一定の経済的負担が生じます。特に男性の場合、家計の主な収入源であることが多いため、育休取得に対するハードルが高くなりがちです。
企業側にとっても、人材確保の面で大きな課題があります。育児休業を取得する従業員が増えることで、一時的な人手不足が生じる可能性があります。しかし、育児と仕事を両立できる環境を整えなければ、優秀な人材が離職するリスクが高まり、長期的には企業の成長にも影響を与えることになります。
両立支援制度の概要と法改正
両立支援制度とは、仕事と育児を両立しやすくするための仕組みや支援策を指します。政府の方針として、育児休業の取得促進や柔軟な働き方の導入を進めるため、育児・介護休業法が改正されました。
主な改正ポイント
2022年10月 | 産後パパ育休(出生時育児休業)の創設 |
2023年4月 | 男性の育児休業取得率の公表義務化(従業員1,000人以上の企業対象) |
2025年4月 | 出生後休業支援給付金の創設(両親がともに14日以上育休取得で追加給付) |
2025年10月 | 育児期の柔軟な働き方の促進(3歳~小学校就学前の子を育てる労働者向けの新制度導入) |
これらの法改正により、従来よりも育児休業を取得しやすい環境が整い、特に男性の育児参加を促す動きが加速しています。特に産後パパ育休の導入は、育児初期の負担を夫婦で分担しやすくすることを目的としており、今後の育休取得率向上に大きな影響を与えると考えられます。
また、2025年の改正では「出生後休業支援給付金」が創設され、両親ともに育児休業を取得することで追加の経済的支援が受けられるようになります。これにより、育休取得による収入減少の不安が軽減され、特に男性の育児休業取得がさらに推進されることが期待されています。
さらに、3歳~小学校就学前の子どもを育てる従業員向けの「柔軟な働き方の促進」が導入されることで、短時間勤務やテレワークをより利用しやすくなります。育児休業後の復職時にも役立つ制度となり、長期的なキャリア継続がしやすい環境が整えられることが見込まれています。
こうした法改正の流れを踏まえると、今後も企業の育児支援に対する取り組みが一層重要になってくるでしょう。
育児・介護と仕事の両立を学ぶ
育児・介護休業法の改正により「介護離職防止のための雇用環境の整備」が義務化となり、従業員の仕事と育児・介護の両立支援をどのように進めていくかが、企業の大きな課題となっています。育児・介護を行う世代は、いわゆる「働き盛り世代」であり、プロジェクトの中核を担う方や企業において管理職として活躍する方など、職責の重い仕事に従事する方も少なくありません。本研修では、ワークライフバランスへの取り組みを進めるため、育児・介護と仕事の両立に当たっての課題や企業の両立支援策について理解を深め、職場環境の改善に向けた取り組みを総合的に学んでいきます。
詳細・お申し込みはこちら仕事と育児の両立を支える制度

育児休業制度
育児休業 | 子どもが1歳(最長2歳)になるまで休業可能 | 男女ともに取得可 |
産後パパ育休 | 産後8週間以内に4週間取得可能(分割可) | 父親のみ |
パパ・ママ育休プラス | 両親ともに育休を取得する場合、最長1歳2カ月まで延長可 | 両親 |
育児休業
子どもが1歳(最長2歳)になるまで取得できる制度です。2022年の法改正により、育児休業を2回に分けて取得できるようになり、柔軟性が増しました。
産後パパ育休(出生時育児休業)
2022年10月に導入された制度で、産後8週間以内に父親が4週間の育児休業を取得できる仕組みです。2回に分けて取得することも可能で、育休取得率の向上を目的としています。
出産・育児に関する経済的支援
- 育児休業給付金
育休開始後6カ月間は給与の67%、以降は50%が支給される。
企業負担なし、雇用保険から給付されるため安心。 - 出産手当金
出産前42日・出産後56日の間、給与の2/3が健康保険から支給される。 - 出産育児一時金
妊娠4カ月以上で出産した場合、42万円が健康保険から支給される。 - 出生後休業支援給付金(2025年4月施行)
両親ともに14日以上の育休を取得すると追加の給付金を支給
短時間勤務制度
短時間勤務制度は、小学校入学前の子どもを育てる従業員が利用できる制度で、仕事と育児を両立しやすくするために重要な役割を果たします。
短時間勤務制度の内容
- 労働時間を1日6時間(企業によっては5時間なども可)に短縮できる
- 小学校入学前までの子どもを持つ従業員が対象(企業によっては延長可能)
- 企業は、育児中の従業員のために、短時間勤務やフレックスタイム制などの柔軟な働き方を導入する義務がある
短時間勤務制度のメリット
- 子どものお迎えや家庭の時間を確保できる
- 長時間労働による育児負担を軽減できる
- 仕事を辞めずにキャリアを継続できる
短時間勤務制度を利用する際のポイント
- 上司や同僚と業務調整をする
- 短時間勤務になることで、仕事の配分が変わるため、事前にチームと調整することが大切
- 業務の効率化を意識し、無理のない範囲で働ける環境を整える
- フレックスタイム制との併用を検討する
- 一部の企業では、短時間勤務とフレックスタイム制を組み合わせて、より柔軟な働き方が可能
- 例えば、「午前10時~午後4時」のように、通勤ラッシュを避けて出勤することも可能
- 時短勤務からフルタイムへの移行を計画する
- 子どもが成長し、育児の負担が軽減されてきたら、段階的に勤務時間を延ばしていくことも選択肢のひとつ
- 企業と相談しながら、キャリアアップの計画を立てる
そのほかの制度
所定外労働の免除 | 小学校入学前の子を持つ従業員は、1日6時間勤務が可能。 |
時間外労働・深夜業の制限 | 小学校入学前の子を持つ従業員は、残業なしの働き方を選べる。 |
子の看護休暇 | 小学校3年生までの子どもを持つ従業員は、年5日(2人以上なら10日)の休暇を取得可能。 |
テレワークの導入
2025年4月から、3歳未満の子どもを育てる労働者がテレワークを利用できるよう、企業に努力義務が課されます。通勤時間の削減や在宅での育児対応が可能になるため、より多くの企業がテレワークを導入することが期待されています。
テレワークの主なメリット
- 通勤時間を削減できる → 保育園の送迎や家事の時間を確保しやすい
- 子どもが体調不良の際も対応しやすい → 急な発熱時でも柔軟に仕事ができる
- 集中して作業ができる → 通常のオフィス勤務より生産性が向上する場合もある
テレワークを利用するためのポイント
- 企業の制度を確認する
- 企業によっては、育児中の従業員向けにテレワークの利用条件を緩和している場合がある
- まずは自社のテレワーク制度について確認し、申請手続きを理解することが重要
- 勤務ルールを明確にする
- 業務時間や連絡手段を職場と共有し、仕事の進め方を調整する
- 例えば、「午前9時~12時は集中作業」「午後3時~5時はオンライン会議対応」など、柔軟なスケジュールを組む
- 育児とのメリハリをつける
- 在宅勤務では育児との境界が曖昧になりがちなので、「仕事時間」と「育児時間」をしっかり分けることが重要
- 家族ともルールを決め、子どもがいる時間帯の業務計画を工夫する
まとめ
育児と仕事の両立を支援するための制度は、年々充実しています。育児休業や短時間勤務、テレワークといった制度を活用することで、無理なく働き続けることが可能になります。また、企業側の取り組みも重要で、柔軟な働き方の導入や育休取得促進が進めば、育児中の従業員が安心して働ける環境が整います。
今後、さらなる法改正や企業の取り組みによって、仕事と育児を両立しやすい社会が実現することが期待されます。個人としても、利用できる制度を把握し、積極的に活用することが大切です。