「ふてほど」で注目。コンプライアンス意識と時代の変化…法改正が生む新たな価値観とその影響

近年、社会全体でコンプライアンス意識がますます重要視されています。かつては企業の責任としての側面が強調されていたコンプライアンスも、今では個人や家庭、職場での日常生活にまで浸透し、私たちの価値観や行動に影響を及ぼすようになりました。その背景にはさまざまな法改正による規制の強化があります。これらの法改正は、私たちの生活を守り、より安心で信頼できる社会を目指すための変化を促しています。

本記事では、法改正を通じて変化するコンプライアンス意識と、社会全体にもたらされる新たな価値観や影響について詳しく解説します。

目次

コンプライアンス意識の高まりとその要因

近年、企業や社会全体でコンプライアンス意識が高まっている背景には、法改正の意義とそれによる価値観の変化が深く関係しています。

法改正の意義

個人情報保護法や受動喫煙防止法の改正などにより、社会規範や企業が守るべき規範が明確化され、これが安全性と信頼性の向上につながっています。法律に基づくルールの強化は、個人や企業が遵守すべき最低限の基準を示し、社会全体の倫理水準を高める役割を果たしていると言えるでしょう。複雑化する規則に対応するため、企業の中にはコンプライアンス研修の強化を図るところも多いです。

価値観の変化

法改正に伴い、私たちの価値観にも変化が生じています。たとえば、個人情報の重要性が認識されるようになり、データの取り扱いやプライバシーに対する意識が一層高まっています。また、職場での喫煙環境に対する規制も広がり、個々の健康や快適な職場環境がより重視されるようになりました。このように、法改正は「何を大切にするか」という価値観の転換を促しています。

企業不祥事の発覚

企業の不祥事やスキャンダルが明るみに出るたびに、再発防止策が求められる状況となっています。コンプライアンス意識が高い企業が信頼される背景には、不祥事による不信感の広がりがあると言えるでしょう。企業の不祥事を防ぐためには、社員全体のリスクマネジメントの意識を高めることが不可欠です。

「不適切にもほどがある」にみるコンプライアンス意識の変化

「不適切にもほどがある」、通称「ふてほど」は、コンプライアンスに縛られてしまった現代社会を痛快に描いたTVドラマとして注目されました。

主人公は1986年の日本から2024年の日本にタイムスリップ!コンプライアンスの概念を持たない彼の”不適切”な発言や行動が、現代のルールや価値観に大きな衝撃を与えていきます。自由で曖昧なルールのもとに過ごしていた昭和の主人公が、令和の人々に変化をもたらしていくのが本作の見どころでした。このドラマでは、価値観が時代とともに変化し、コンプライアンス意識も進化していることが伝えられています。

流行語「不適切にもほどがある(ふてほど)」に象徴されるように、「ふてほど」意識では、不適切な行動や発言に対して社会が厳しく目を向け、適切な振る舞いを重んじる価値観が強調されています。特にインターネットやSNSの普及により、企業や個人の行動は瞬時に社会の注目を浴び、批判や指摘を受けやすくなりました。このような状況において、「ふてほど」意識は、自己や組織の行動が社会的に適切かどうかを常に意識し、問題や批判を未然に防ぐための心構えとして重要視されています。

この意識の変化は、企業のコンプライアンスにも大きな影響を与えています。単に法令を遵守するだけでなく、社会の倫理や企業倫理、モラルに対する理解を深め、顧客や社会から信頼される行動が求められるようになりました。例えば、広告表現で誤解を招かないように言葉を選んだり、職場でのハラスメントを防ぐために積極的に取り組んだりすることが、「ふてほど」意識に基づいた一例です。

つまり、時代が求める「ふてほど」意識とは、法令遵守を超えて、社会が何を「適切」と考えるかを敏感に感じ取り、それを基準に行動する姿勢のことです。

おすすめ

コンプライアンス研修

企業はCSR(Corporate Social Responsibility)と呼ばれる、社会的責任を果たす必要があります。社員1人1人がモラルやルールに対する意識を高く持ち、社会的規範となる行動をとり、法令順守を推し進めていくことが、組織発展の土台となります。
コンプライアンスとCSRは密接に関連しています。企業がコンプライアンスを重視することは、法律や規制に従い、倫理的な行動を取ることを意味します。コンプライアンスが重視されることで、企業は法的リスクを軽減し、法律違反による罰金や訴訟、業界規制機関からの制裁を回避することができます。また、適切なコンプライアンスは企業の信頼性を高め、顧客や取引先、投資家からの信頼を築くのに役立ちます。

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コンプライアンスと法令の関係

法令遵守はコンプライアンスの基盤を支える重要な要素です。もし知らぬ間に法令違反が生じれば、事業者の行為や契約が無効とされ、罰則や行政処分を受ける可能性があります。そのため、事業者はコンプライアンスを検討する際、まず関連する法令を理解し、どのような状況で問題が生じるかを把握することが必要です。

また、法改正への対応は単なる法令遵守にとどまらず、社会的信頼の獲得やブランド価値の向上にもつながります。たとえば、個人情報保護の徹底やハラスメント防止の強化は、従業員や顧客に安心感を与え、自社の信頼性を高めるでしょう。このように、コンプライアンス意識の向上は、企業や個人にとって不可欠な価値観へと進化しています。

ここでは、コンプライアンスに関連する身近な法令について、わかりやすく解説します。

個人情報保護法の改正

個人情報保護法は、個人情報を扱う際の基準を定めた法律です。情報がますますデジタル化する中で、個人情報を活用する場面が増える一方で、情報が不正に利用されるリスクも増えています。この法律は、個人情報を適切に利用できるようにしつつ、個人の権利が守られるようバランスを取っています。

個人情報保護法では、「個人情報」や「個人データ」の定義、およびそれらを取り扱う際のルールが詳しく規定されており、ルールを守らない場合、指導や勧告、罰金などの処置が取られる可能性があることに注意が必要です。

受動喫煙防止法の導入

受動喫煙防止法は、公共の場や職場における受動喫煙を防ぐために制定された法律で、タバコの煙による健康被害から非喫煙者を守ることを目的としています。法改正に伴い、飲食店や公共施設などでの禁煙や分煙の基準が厳格化され、事業者にはこれらの基準を遵守する義務が課されました。

この法律を守ることで、企業の社会的責任を果たし、健康リスクに配慮した安全な環境を提供することができます。法令遵守はコンプライアンスを実践する上で重要な手段であり、受動喫煙防止法の適切な運用は、企業が利用者や従業員の健康を尊重していることの証となります。

ハラスメント防止に関する法律

ハラスメント防止法(改正労働施策総合推進法)は、職場でのパワハラ、セクハラ、マタハラなど、さまざまなハラスメントを防ぐことを目的として制定された法律です。この法律は、企業にハラスメント防止のための対策を実施する義務を課しています。具体的には、社内規程の整備、社員への研修の実施、ハラスメント相談窓口の設置など、職場環境の改善が求められます。

ハラスメント防止法を遵守することは、コンプライアンスの一環です。企業が法に基づき健全な職場環境を整えることで、従業員の働きやすさが確保され、それによって企業の信頼性や社会的評価も向上します。ハラスメントを未然に防ぎ、適切に対応することは、企業が社会的責任を果たす上で重要な行動といえるでしょう。

企業におけるコンプライアンスの重要性

企業コンプライアンスが重要である理由として、以下の3つが挙げられます。

  • 法的リスクの回避と企業イメージの維持
  • 信頼関係の構築
  • 事業の持続性

それぞれについて解説します。

法的リスクの回避と企業イメージの維持

企業活動を行う際には、時代に即した法律や規則を守り、違反を避けることが重要です。法的トラブルを未然に防ぎ、罰金などの経済的な損失や社会的信用の低下を防ぐためにも、コンプライアンスは欠かせない役割を果たしています。

不正行為が常習化している企業は、評判を大きく損ねるリスクが高くなります。取引先や顧客が離れ、人材確保に苦労し、金融機関からの信用も低下するなど、さまざまな面でダメージを受けるでしょう。一方で、コンプライアンスをしっかりと守る企業は評価が向上し、良い口コミが広がりやすくなります。

取引先、顧客、従業員との信頼関係の構築

企業にとって、取引先や顧客、従業員は欠かせないステークホルダー(利害関係者)です。これに加えて、株主や地域社会も重要な関係者であり、コンプライアンスを徹底することは、こうしたすべてのステークホルダーとの信頼関係を築く基盤となります。特に投資市場では「持続可能な経営」を実現する企業が高い評価を受けており、コンプライアンスへの対応もその重要な要素として注目されています。

事業の持続性

コンプライアンス違反は、故意か否かを問わず、事業の継続性に深刻な影響を及ぼします。

明確な法律違反によって営業停止命令を受けるリスクがあるのはもちろん、SNSでの炎上による嫌がらせや、最悪の場合、自主的な閉店(閉鎖)に追い込まれる可能性もあります。

事業を安定して続けるためには、コンプライアンスを確実に守ることが欠かせません。

まとめ

近年、企業や個人の間でコンプライアンスへの意識が高まっています。その背景には、法改正による価値観の変化が大きく影響しています。例えば、「個人情報保護法」の改正により、企業は顧客情報を適切に管理し、漏洩を防ぐ取り組みが求められるようになりました。これにより、個人情報の取り扱いが厳格化され、企業の信頼性向上につながっています。こうした法改正は、私たちの価値観や行動に少しずつ変化をもたらし、コンプライアンスを守ることがより良い社会の実現につながることを示しています。