派遣社員の教育訓練計画とは?基本的な作成方法と、実施のための注意点を解説!

派遣社員の教育訓練計画とは?基本的な作成方法と、実施のための注意点を解説!

派遣社員のスキル向上を目指し、派遣会社が策定するのが教育訓練計画です。実は、派遣社員への教育訓練は、2020年4月の労働派遣法改正によって義務とされているので、とても重要な企業活動の一つとなりました。

本記事では、派遣社員への教育訓練計画の基本概要、その作成方法や注意点を解説します。これから派遣社員として活躍する人や、研修を担当するスタッフの人は、ぜひ参考にしてみてください。

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目次

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派遣社員の教育訓練とは?

派遣社員やスタッフへの教育訓練とは、派遣社員を受け入れる派遣先企業が、業務遂行に必要最低限の能力を付与するため実施します。
働き方の形態は、さまざまなスタイルが確立してきました。そのため、厚生労働省は、適切なルールを時代の遍歴に合わせながら、改善や強化をする仕組みづくりを重要課題とみなしています。

労働者派遣法は、その度に改正を実施し続けているのです。そして、派遣社員に対しても、一定の教育訓練をすることをルールとして定めています。

派遣社員の教育訓練計画が誕生した理由

派遣社員に対しても、一般正社員同様に教育訓練計画が義務化されたのはなぜでしょうか。実際に派遣スタッフとして働く契約社員のような立場の人でも、ゆくゆくは正社員になってキャリアアップしたいと望む人も多くなってきたことが背景にあります。

今までは、派遣社員のキャリアパスについては、単に個人へ委ねていただけでした。しかし、人口激減や少子化などもあり、国内の経済的土台やキャリア形成の面でも、この状態は将来的に望ましくないだろうといった動きがあり、国として、段階的な教育訓練計画の導入を決定したのです。

また、正社員と派遣社員に待遇の格差があることが問題となりました。同じ仕事の質と量でありながら、明らかに給与の差別があることは、労働意欲にも関わってきます。そこで、派遣先企業の正社員・派遣社員間の待遇の差を縮小させる策として制定しました。

派遣社員への教育訓練の目的内容

派遣社員の教育訓練計画では、派遣社員のスキル向上やキャリアアップ、派遣先での公平な待遇確保といったものが目標となるでしょう。

派遣社員のスキル向上などでは、社会人らしい基本的なコミュニケーションができる状態へと訓練することを最優先とし、さらにPCスキルを中心とした業務に必要不可欠な知識や技術を磨くことを目指します。

それらが確実におこなえるようになったら、さらなるキャリアアップの教育へと移行していく流れです。スキル向上やキャリアアップの研修教育は、市場価値を高めて、長期的な公益をもたらすことになるでしょう。

また、2004年4月より、派遣先での同一労働同一賃金の実現を目指し、労働者派遣法の改正がありました。内容としては、派遣先企業での給与・福利厚生などについて、正社員との格差をなくしていくための配慮です。教育訓練は、派遣元企業および派遣先企業にて義務化されました。

派遣社員への教育訓練のポイント

派遣社員への教育訓練計画は、なんとなく仕事に役立ちそうなスキルのみ取り上げて研修を充てがうものではありません。

教育訓練には「計画」を立てて段階を経ることが重要です。最終的にはキャリアアップが目標になるよう、体系的なもので要件を満たすような工夫が要ります。派遣社員への教育訓練のポイントを押さえて計画を練るようにしましょう。

おもに以下のようなポイントをチェックすることです。

  • すべての派遣社員を対象とする
  • 有給かつ無償で実施する
  • 派遣社員各人のキャリアアップや目的に準じたものにする
  • 入社時も含めて毎年1回実施する
  • 無期雇用の派遣社員ヘは長期的な計画を練る

派遣先企業が実施すべき教育訓練

実務として派遣社員が働く現場となる、派遣先企業にて実施される教育訓練計画では、おもに以下のような項目が必要となるでしょう。

  • ニーズに沿った教育訓練計画
  • 専門技術の習得
  • ソフトスキルの強化
  • 均衡待遇の確保
  • 訓練費用の無償
  • 派遣先管理台帳にて報告

ソフトスキルとは、「コミュニケーション能力・リーダーシップ・問題解決能力」といった、各スタッフ間での円滑な交流を図るためのスキルを指します。チーム体制によって業務が展開するものであることから重要な課題となるでしょう。

また、均衡待遇の確保では、派遣社員への研修や訓練の質、および賃金水準については、公平に扱う義務があることを指します。派遣先管理台帳での報告とは、教育訓練の日時や内容を記載する台帳を作成することを指し、派遣元会社への報告が義務付けられました。

派遣元企業が実施すべき教育訓練

派遣先企業へと斡旋をする派遣元企業での、おもな教育訓練のポイントです。2015年、労働者派遣法の改定によって、派遣元会社は派遣社員のキャリアアップを目指して年間8時間以上の教育訓練計画の実施を義務づけられました。

また、教育訓練対象者は、1年以上の雇用見込みがあるすべての派遣社員です。

  • 業務上必要な教育訓練
  • キャリアアップの教育訓練
  • 訓練費用の無償
  • 派遣元管理台帳に記載

業務上必要な教育訓練とは、派遣先企業でのソフトスキルに近いコミュニケーション能力などの基本的なものです。

さらには、特定のPC操作についての教育も含まれています。また、派遣元管理台帳は、派遣期間終了日(派遣契約更新の場合は、更新後の派遣期間終了日)から起算して3年間は保存する義務が生じるようになりました。

派遣社員への教育訓練計画の立て方

派遣社員への教育訓練計画の立て方は、自社の現状を把握した上で、どのような派遣社員を育てたいのかをイメージすることが大切です。派遣社員像を確定しながら、訓練内容・実施時間・評価基準といった具体性を洗い出して計画します。

おもに以下のような内容です。

現状を把握して優先順位を明確化する

派遣社員の教育訓練計画の立て方のスタートでは、現在の状況を理解してから優先順位を明確にしましょう。例えば、現時点にて現場にて不足しているものはなにか、どのような育成が必要なのかといった課題などに着目することです。

現状を把握した上で、何のために実施すべきか、今後の方向性も思い描いていきます。派遣させる業種・職種はもちろん、年齢・経験年数・勤続年数なども考慮し適切な目標を洗い出すことです。

優先順位や目標が明確でないと漠然となりがちで、スキルアップに限界が生じてきます。効果的な教育訓練計画の実施に向けて、まずは優先順位を明確にしましょう。

スキルアップ項目の洗い出し

派遣社員の教育訓練計画にて、優先順位を明確にしたら必要なスキルは何かを探り当てていきましょう。そのためには、現状で不足している部分を洗い出します。さまざまな問題や不足したスキルなどが浮上するはずです。

それは現場での課題といえるでしょう。どのようなスキルアップができれば、より派遣社員が積極的に活躍できるでしょうか。

具体的なスキルアップ方法の決定

スキルアップするための具体的な方法を決定させましょう。
どのような教育訓練が効果的なのかを判断し、派遣社員にとって必須となる訓練内容に付いて確定させる段階です。

仮に製造業への派遣社員に対しては、「作業を学べるOJT形式」を採用する、あるいは制作現場への派遣なら「デザインの基礎を学ぶeラーニング形式」を採用するといった、訓練メニューの策定をします。

現場と自社との間で共通に扱える知識などがあるのなら、それらも考慮してより具体的な方法を見つけていきましょう。

派遣社員への教育訓練計画での注意点

派遣社員への教育訓練計画の実施には、いくつかの注意事項があります。各注意事項を理解して、落ち度がないように取り組む姿勢が大切です。

訓練内容の事前周知

派遣社員の教育訓練の範囲や期間を明確にして事前に周知します。これを最初に怠らないよう注意しましょう。

おもな項目としては、教育訓練の概要・目的・期間などです。これらを周知させるタイミングは、派遣社員の入社日・受け入れ時などで、教育訓練の内容や実施方法なども併せて説明し、実施についての同意を得ることが必要となります。

改正派遣労働法の目的に沿って実施

教育訓練の実施は、派遣労働法によってルール化されていて、改定された場合には、その内容に従って、訓練計画も改定する必要があるかもしれません。

その際に見落とすことがないように注意が必要です。主旨はあくまでも、派遣社員のキャリア形成・業務遂行にて必要なスキルの伝授となり、そのためのカリキュラムを実施します。

安全衛生教育の実施

派遣社員のために、安全衛生に関する教育も実施することが重要です。

中でも、製造業や工場勤務に該当する場合は注意してください。業種・業界によっては、安全教育および衛生教育の実施が義務付けられています。

派遣元と派遣先との連携

派遣元企業と派遣先企業との連携を密にして、教育訓練の実施内容などは常に情報共有を続けることが重要です。とくに派遣先企業では、教育訓練実施の日時・内容などを派遣元会社に報告することが義務化されています。

それらは一般的に、派遣先管理台帳に記載して管理するのが前提です。一方、派遣元企業でも、派遣元管理台帳の記載が義務となっています。

まとめ

2020年の労働派遣法の改正により、派遣元企業と派遣先企業の双方に、教育訓練計画とその実施が義務となりました。派遣社員への教育訓練計画を実施する際は、派遣社員のスキルアップやキャリアアップにつながり、業務効率化に役立つ内容として精査する必要があるでしょう。

そのための実施方法や注意事項を、しっかり把握して速やかに実行することが大切です。

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