増加する自治体職員のメンタル不調、組織でできるヘルスケアとは?

近年、自治体職員の間でメンタル不調による休職者が増加しています。総務省の調査でも、精神的な不調を理由に1週間以上休務する職員が全体の約2%に達していると報告されています。これは、単なる個人の問題ではなく、組織全体の健康管理体制の不足を示すものです。
自治体は住民サービスを安定的に提供する責務を担っているため、職員が心身ともに健康で働ける環境を整えることは不可欠です。しかし実際には、「健康管理の重要性は理解しているが、具体的にどのように取り組めばよいのか分からない」という声も多く聞かれます。
この記事では、職員本人と人事・労務担当者の双方に向けて、職場で実践できる健康管理のポイントを紹介します。
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目次
メンタル不調の現状と課題

自治体職員のメンタル不調は、個人の働き方や性格に起因するだけでなく、組織体制や風土にも深く関わっています。ここでは、具体的なデータと組織的な責任の両面から、現状と課題を見ていきましょう。
長期病休者の増加とその背景
令和2年度の調査では、約79万人の地方公務員のうち1.9%が精神的な不調を理由に長期病休を取得しています。これはおよそ1万5千人に相当し、自治体業務の遂行に少なからぬ影響を与えます。特に小規模自治体では、一人の不調が組織全体の業務に直結することも珍しくありません。
背景には、業務の複雑化、住民ニーズの多様化、そして職員一人あたりの負担増加があります。加えて「失敗を恐れて相談できない風土」や「我慢を美徳とする文化」が残っている場合、症状が深刻化するまで表に出ないことが少なくありません。
安全配慮義務と組織的対応の必要性
労働契約法や労働安全衛生法は、使用者に職員の安全と健康を確保する義務を課しています。これは「健康は自己管理の問題」という考えがもはや通用しないことを意味します。自治体には、制度や研修を整備し、管理職が日常的に職員の状態を把握できる仕組みを整える責任があります。組織としての対応力が、職員の安心感と業務の安定性を左右すると言えるでしょう。
ストレスコーピングとセルフケア
ストレスを完全に排除することはできません。大切なのは、適切に対処しながら心身のバランスを保つことです。ここでは、職員が実践できる「ストレスコーピング」と「セルフケア」の考え方を紹介します。
ストレスコーピングの3つの方法
ストレスコーピングは大きく3種類に分類されます。
コーピングの種類 | 特徴 | 具体例 |
---|---|---|
問題焦点型 | ストレスの原因を直接取り除く | 業務の分担を見直す、上司に相談する |
情動焦点型 | ストレスの受け止め方を変える | 苦手な仕事も成長の機会と捉える |
気晴らし型 | ストレスから一時的に離れる | 趣味に没頭する、運動する、友人と話す |
実際には、これらを状況に応じて組み合わせることが現実的であり、柔軟さが鍵となります。
セルフケアで日常から整える
ストレス対処の土台になるのがセルフケアです。職員自身がセルフケアを意識的に取り入れることは、不調を未然に防ぐための最も効果的な方法といえるでしょう。
セルフケアの行動 | 期待される効果 |
---|---|
十分な睡眠 | 疲労回復、精神的な安定 |
バランスの取れた食事 | 身体的な健康維持、集中力向上 |
適度な運動 | 気分転換、ストレスホルモンの低減 |
リラクゼーション | 自律神経の調整、心の平穏 |
もし不調が続く場合は、専門家への相談が最も確実な一歩です。庁内の保健師や外部の産業医に相談するハードルを下げ、気軽に話せる環境を整えることが、セルフケアを組織的にサポートする上で重要です。
管理職によるラインケアの実践

職員本人のセルフケアだけでは限界があります。組織においては、管理職が部下の変化に気づき、早期に対応する「ラインケア」が非常に重要です。
部下への声かけと対応のポイント
ラインケアの第一歩は「気づき」と「声かけ」です。「最近疲れているように見えるけど大丈夫?」といった具体的な観察に基づく声かけは、本人の安心感につながります。逆に「気にしすぎ」「みんな我慢している」といった言葉は逆効果であり、孤立感を強めてしまいます。管理職には、傾聴の姿勢と冷静な対応が求められます。
より具体的な声かけの例としては、「最近、会議での発言が少なくなったように感じるけど、何かあった?」や「いつもより残業が多いみたいだけど、業務量に無理はないか?」といった、変化を具体的に指摘する言葉が効果的です。もし部下が悩みを打ち明けてくれた場合は、まずは最後まで傾聴し、共感を示すことが重要です。解決策をすぐに提示するのではなく、「話してくれてありがとう。何か手伝えることはある?」と伝えることで、安心感を与えられます。プライベートな問題が背景にある場合は、無理に深入りせず、専門の相談窓口(保健師や産業医など)の存在を伝えるなど、次の行動を促すサポートが求められます。
職場復帰を支える仕組みづくり
休職から復帰した職員には、周囲の自然な接し方と業務の柔軟な調整が欠かせません。復帰直後に負担をかけすぎると再発のリスクが高まります。チームで合意形成を行い、「みんなで支える」という姿勢を共有することが心理的安全性を高めます。この積み重ねが、長期的な組織の安定につながります。
ウェルビーイングと職場風土改善
健康管理の取り組みは、個々の対策にとどまらず、職場全体の風土づくりにつながります。その中心にあるのが「ウェルビーイング」です。
ウェルビーイングが生む組織の力
ウェルビーイングは、身体的・精神的な健康に加え、社会的なつながりや経済的安定を含む幅広い概念です。職員が幸福感を持って働ける職場では、助け合いが自然と生まれ、行政サービスの質も向上します。これは単なる「働きやすさ」ではなく、組織全体の生産性と信頼性を高める戦略的要素といえるでしょう。
対話と平等性が風土を変える
幸せな組織では、日常的な対話や平等な発言機会が確保されています。短い会話やちょっとした声かけが、組織の雰囲気を和らげ、信頼関係を築きます。こうした積み重ねが「心理的安全性」を生み、創造性やチャレンジ精神を引き出す土壌となります。自治体においても、この意識改革が欠かせません。
健康経営と自治体の未来
最後に、自治体が持続可能な組織を築くために注目されている「健康経営」について触れます。
健康経営がもたらす効果
健康経営は、従業員や職員の健康を戦略的に守ることで、組織全体のパフォーマンスを高める考え方です。これにより、離職率の低下、職員の定着率向上、そして住民サービスの質の維持・向上といった効果が期待されます。人材不足が深刻化する自治体にとっては、健康経営の推進が未来への投資となります。
学びを継続する仕組みとしてのeラーニング
健康経営を定着させるためには、知識やスキルを一度きりで終わらせず、繰り返し学び直す仕組みが必要です。ここで有効なのが eラーニング です。
eラーニングには次のようなメリットがあります。
- 時間と場所を選ばない:出張や外部研修に頼らず、職員が自分のペースで学べる
- 内容を繰り返し学習できる:必要な時に復習し、知識を定着させやすい
- 対象者ごとにカスタマイズ可能:管理職向け、若手向けなど役割に応じたプログラムを提供できる
- コスト効率が高い:一度導入すれば多くの職員に均等に学習機会を提供でき、長期的には研修コスト削減につながる
- 実践と連動しやすい:学習した内容を職場ですぐに実践でき、行動変容を促しやすい
自治体においては、忙しい日常業務の中で学習時間を確保することが難しい現実があります。その制約を乗り越える手段として、eラーニングは非常に相性が良いと言えるでしょう。
具体的な活用例として、セルフケアやストレスマネジメントの基礎知識を学ぶコンテンツを全職員向けに提供したり、管理職向けにラインケアやハラスメント防止に関するロールプレイング形式のコンテンツを配信したりできます。さらに、休職期間中の自己学習ツールとして活用するなど、多様な目的に応じて柔軟に利用できます。
まとめ
自治体における健康管理は、個人の努力だけではなく、組織としての仕組みづくりが欠かせません。セルフケアで心身を整え、ラインケアで部下を支援し、さらにウェルビーイングを重視した職場風土を育てることが、持続可能な組織運営の鍵となります。
そして、これらの取り組みを定着させるためには、知識とスキルを繰り返し学び直すことが大切です。eラーニングはそのための強力なツールであり、職員一人ひとりが安心して働き続けられる自治体を実現する大きな一歩となるでしょう。
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自治体における職場環境の整備は、職員の働きがいを高め、組織全体のパフォーマンス向上に直結します。多様な人材が能力を発揮できる環境づくりや、柔軟な働き方への対応は、持続可能な行政運営に欠かせません。職場環境を整えることで、職員の定着率やエンゲージメントが向上し、住民サービスの質の維持・向上にもつながります。この研修では、自治体における職場環境整備の基本的な考え方や実践のポイントを解説し、組織の活性化と働きやすさを両立するための視点を養います。
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