企業広告にAIを使うのはNG?画像生成AIを使う際の注意点



昨年、大手飲料メーカーがAIモデルをCMに起用し、大きな話題を呼びました。企業が広告で生成AIによる画像を活用する際、品質やコスト面でのメリットは大きい一方、法的リスクや倫理的懸念、ブランドイメージへの影響などさまざまな課題が伴います。
本記事では、広告担当者をターゲットとして、画像生成AIを広告に使用するメリットや、注意すべき点について紹介します。
目次
広告業界における生成AI画像の活用メリット

上記の画像は、ChatGPTに対して「家庭用洗濯洗剤の広告ポスターに使える写真を生成してください」と指示したときに生成された画像です。
生成AIは短時間で多数のビジュアルを制作できるため、広告制作の効率化やアイデア展開の幅を広げるのに適しています。新商品イメージの試作やSNS広告用のバナー作成など、これまで時間と費用がかかっていた工程を圧縮できます。また、細かなディテールの指定やクリエイターとの共同作業を通じて、柔軟で多様な表現が可能になる点も魅力です。
画像生成AIの活用アイデア
最近では、大手広告代理店が独自の生成AIを開発しクリエティブの生成や効果予測を行うなど、日本企業でも積極的に生成AIを取り入れる企業が増えています。ここからは、企業広告における画像生成AIの様々な活用アイデアを紹介します。
イメージビジュアルの量産
新商品のコンセプトに合わせた世界観を短時間でビジュアル化することができます。AIを活用すれば、複数のバリエーションを一気に出力できるため、比較・選定のスピードも向上します。特に、企画段階での提案用ビジュアル作成や、キャンペーン展開時のトーン&マナーの統一に役立ちます。社内コンセンサスを得やすく、プレゼン資料の品質も向上します。
モデル・撮影不要の広告素材制作
人物写真や背景をAIで生成すれば、モデルの手配やロケ撮影が不要になり、大幅なコスト削減が可能です。撮影環境に左右されず、理想的なライティングやシチュエーションも自在に調整できます。特に、外国人モデルや特殊な職業設定など、リアルでの手配が難しい場合には重宝されます。制作スピードの向上にもつながります。
季節ごとのビジュアル差し替え
キャンペーンごとに季節感を演出する画像を用意するのは手間がかかりますが、AIであれば春・夏・秋・冬の背景や色味を簡単に変更できます。同一の構成をもとに複数パターンを出力し、A/Bテストにも応用可能です。販促やSNS投稿のビジュアルをタイムリーに更新したい企業にとっては、特に有効な活用方法となります。
ターゲットに合わせたパーソナライズ
広告のターゲットに合わせたビジュアルを柔軟に調整できるのもAI画像の強みです。年齢・性別・ライフスタイルに応じたキャラクターやシーンを再現できるため、共感を得やすい広告制作が可能になります。例えば、若年層向けにはポップで明るい雰囲気、中高年向けには落ち着いたトーンに変えるなど、細かな配慮も瞬時に実現できます。
SNS用ビジュアルの大量生成
SNSでは継続的な投稿が求められますが、毎回のビジュアル制作は負担になります。AIを使えば、投稿テーマに合わせて連続的に画像を生成でき、時間とコストの大幅削減が可能です。テンプレートを活用して出力スタイルを一定に保つことで、ブランドイメージの統一にも貢献します。キャンペーンや商品紹介のサイクルを加速させるツールとしても活用できます。
AI画像利用時の注意点

生成AIはとても便利なツールですが、一歩使い方を間違えると企業を巻き込んだ大騒動に発生するリスクもあります。以下に、主なリスクをまとめました。
注意点①:著作権・肖像権・商標権の侵害リスク
生成AIは訓練データに著作物を含むことがあり、使用画像に無意識に類似性が生まれる可能性があります。これは著作権侵害として問題視されるリスクが高く、公開後の削除・損害賠償発生につながる恐れがあります。また、特定ブランドのロゴや商品を模倣して生成された場合は商標権侵害、誰かに似ている人物像を使った場合は肖像権侵害になる可能性もあります。契約前にモデルのデータ内容や訓練元を確認し、生成後のチェック体制を整えることが必須です。
注意点②:差別・偏見表現の問題
生成AIはインプットされたデータの偏りを反映することがあり、人種・性別・年齢などに対する無意識の偏見を表現するケースがあります。広告で商品ターゲッティングを行う際に、特定層を排除した表現やステレオタイプに基づくビジュアルが採用されると、ブランドイメージの失墜や炎上リスクにつながる恐れがあります。多様性を意識したチェックや、ジェンダーや人種への配慮をデザインガイドラインに組み込むことが重要です。
注意点③:表現のクオリティと誤解誘発
生成された画像はリアルすぎるほど高品質になる一方で、“作り物”と思われず誤解を与える表現になることがあります。商品と異なる色味や質感、要素の組み合わせで消費者が誇大広告と捉える可能性もあります。生成AI画像を使用する際は、実写素材との組み合わせや“AI生成”を明記してコンプライアンスを担保しましょう。
注意点④:契約書および利用規約の確認
生成AIサービスの一部は、素材の商用利用に制限を設けています。契約書や利用規約に“商用利用不可”や“クレジット表記義務”といった条項がある場合、それに従う必要があります。特に海外発のサービスを利用する際は、日本の著作権法との整合性、不足の損害補償や再配布権に関する規定を慎重に確認し、必要があれば法務部と連携して契約整備を行いましょう。
注意点⑤:プロンプト設計の難しさ
生成AIで望む画像を出すには、プロンプトの表現力と試行錯誤が求められます。不適切なキーワードや指示の欠如により、意図と異なる画像が生成されることが頻発します。本来の品質を担保しながら、コストや時間を節約するには、適切なプロンプト設計スキルが不可欠となります。
生成AIを最大限活用するなら
広告担当者にとって、生成AIは膨大な画像素材を迅速に生み出す創造の“補助者”になり得ます。ですが、生成AI画像を広告に取り入れるには、ただ漠然と使って覚えるのではなく、法務チェックや適切なツールの選択など様々な知識が必要です。
生成AIを安全かつ効果的に使いたい広告担当者におすすめなのが、e-JINZAI labの「生成AIマスター講座」です。この講座では、生成AIの基礎理論から出力精度を高める実践テクニック、著作権や肖像権などの法的な注意点までを幅広く学ぶことができます。Stable DiffusionやMidjourneyなど、画像生成に特化したツールについての講義も多数収録されており、生成AIの活用方法を操作画面を見ながらマスターすることができます。
まとめ
生成AIによる画像利用は、効率と表現力を高める一方で、法的・倫理的・表現品質リスクを伴います。リスクを適切に管理し、安全かつ効果的な広告制作を行うことが大切です。そのためには、単にツールを使いこなすだけでなく、AIの仕組みや限界を理解する視点も不可欠です。
e-JINZAI labの「生成AIマスター講座」では、生成AIの活用技術を体系的に学ぶことができ、実務への応用力を高められます。広告表現の品質と信頼性を両立させるためにも、正しい知識と技術を備えて活用していきましょう。