LINEのビジネス利用に要注意。情報漏洩やトーク流出のリスクを解説

ビジネスの現場では、手軽にやりとりができるツールとして「LINE」が使われる場面も増えています。しかし、その利便性の裏には、重大な情報漏洩やトーク流出のリスクが潜んでいます。
本記事では、ヒューマンエラーとLINEのシステム的な問題という二つの観点から、注意すべきポイントを解説します。
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目次
LINEで起こる情報漏洩リスクとは?

LINEは個人間の気軽なコミュニケーションツールとして広く使われていますが、ビジネスの現場で使用する際には「機密情報の取り扱い」や「誤送信リスク」といった深刻な課題が伴います。誰にでも起こり得る「うっかりミス」や、アプリ自体のセキュリティ問題が、情報漏洩につながる可能性があるのです。
ヒューマンエラーによる情報漏洩リスク
ビジネスの現場でLINEを使用する際、最も多いリスクは「人為的なミス」です。操作の手軽さが魅力の一方で、情報漏洩につながるヒューマンエラーも発生しやすく、組織全体への影響が懸念されます。
誤送信(誤爆)
LINEは、個別チャット・グループチャットがひとつの画面に並列表示される構造であるため、やり取りする相手を取り違える「誤爆」が起こりやすい設計になっています。スマートフォンでのスピーディな操作や通知の連続などが、注意力の低下を招く一因となります。
たとえば、以下のようなリスクが想定されます:
- 社内の上司宛に送る予定だった報告内容を、誤って取引先のグループに送信
- 他社との契約書ドラフトを、別の顧客グループに添付してしまう
- 顧客の個人情報(氏名・住所・購入履歴など)を誤送信し、個人情報保護法違反に発展する恐れ
たった一つの誤送信が、重大な信用失墜や法的トラブルに発展する可能性があります。
対策:
- 業務用と私用のアカウント・端末を分ける
業務用端末では業務用LINEアカウントのみを使用し、個人のグループや家族とのチャットを開かないようにすることで、プライベートとの混同リスクを回避できます。 - 送信前の「相手チェック」を習慣化する
メッセージを送信する前に、必ず相手の名前とグループ名を声に出して確認するなどのルールを設けましょう。「◯◯商事 担当グループ」であることを目視確認し、送信ボタンを押すのが習慣になるとミスは激減します。 - 重要情報はLINEで共有しない方針を徹底する
顧客情報・契約書・人事情報など、機密性の高いデータはLINEでは送らないことを明文化し、メールや社内専用チャット、ファイル共有サービスを利用するように統一すべきです。 - 誤爆時の即時対応フローを整備する
万が一誤送信してしまった場合に備えて、「連絡先に即座に削除依頼を行う」「上長に即時報告する」「スクリーンショットを残す」などの初動対応フローをチーム内で共有しておくと、リスク最小化につながります。
スクリーンショットの無意識な共有
LINEでやり取りした内容を「便利だから」「後で見返したいから」といった理由で**スクリーンショット(スクショ)**として保存し、それを家族や友人などの身近な人に共有する行為は、情報漏洩リスクを高める危険な行動です。
特に問題になるのは、次のようなケースです:
- 新製品の発表前情報を「ちょっと自慢したい」という軽い気持ちで家族にLINE転送
- 会議で共有されたスライド画像を「参考になりそうだから」と友人に送信
- 社内チャットでの業務指示を、別のコミュニティに紹介するために転載
このような行動は、本人に悪意がなくても、共有された先の第三者がさらに転送したり、SNSに投稿したりすることで、情報が広く拡散するおそれがあります。しかも、スクリーンショットはテキストだけでなく名前・日付・送信者・ファイル名なども写り込むため、誰がどの情報をどこから漏らしたかが明確になってしまう場合もあります。
対策:
- スクショ共有のルールを定める
企業として、LINEで受け取った業務情報を個人利用端末で保存・転送することを禁止するルールを就業規則やガイドラインに明記しておく必要があります。 - 教育と啓発の徹底
「悪意がなくても、共有は情報漏洩になる」という認識を持ってもらうために、定期的なセキュリティ研修や事例共有を行うことが重要です。 - 送信者側の対策
重要情報をLINEで共有する際には、「この内容は社外共有禁止です」「スクリーンショットはお控えください」と一言添えるだけでも意識づけになります。
スマホの紛失による第三者の閲覧
LINEはアプリそのものにログインパスワードやアプリ起動時のロックが標準では設定されておらず、スマートフォンの画面ロックを解除するだけで、トーク履歴やファイル添付、写真、PDFデータなどにそのままアクセスできる仕様になっています。
そのため、もし業務用や私用でLINEを併用しているスマートフォンをロックなし、あるいは簡易なロック(パターン認証や4桁のパスワード)で運用していた場合、紛失・盗難時に以下のようなリスクが現実に起こり得ます:
- 顧客とのやり取りの履歴が第三者に閲覧される
- 内部資料や画像ファイル(PDF・Excel・プレゼンなど)の添付データがそのまま閲覧・保存される
- 取引先の名前、電話番号、LINE IDなどの個人情報や企業情報が抜き取られる
- 盗難者がLINEアカウントを操作し、なりすましで別のメッセージを送信する
特にLINEは、仕事の進捗や依頼事項を口頭の代わりに残す場面が多いため、その内容ごと持ち出されるリスクがあります。
対策:
- 端末に生体認証や複雑なパスワードロックを設定する
- LINEアプリに「Face ID」や「Touch ID」などの起動ロックを設定する
- 業務で使う場合はLINEではなく、よりセキュアなビジネスチャットツール(Slack、Teamsなど)に切り替える
LINEは利便性が高い一方で、こうした端末依存型の脆弱性があることを理解し、組織的なルール整備が求められます。
LINEのシステムに起因する懸念点
LINEは日常的なコミュニケーションツールとして広く利用されており、その利便性はビジネスの現場でも高く評価されています。しかし一方で、システム上の不具合や設計ミスによって、意図せぬ情報漏洩が発生するリスクも指摘されています。特に2023年には、LINEヤフー株式会社が提供するサービスで「通信の秘密」が漏洩した事案が発生し、総務省が正式な行政指導を行うという異例の対応がとられました。
この問題は、LINEの写真共有機能「LINEアルバム」にて発覚しました。本来はプライベートに保存されるべき画像のサムネイル(一覧表示用の小さな画像)が、他の利用者の画面に混在して表示されるという不具合が確認され、ユーザーが意図しない形で画像の一部が第三者に見られる事態となったのです。
原因は、LINEヤフー社が新たに導入した画像処理システムにありました。本来行うべき画像処理とは異なる方法が実装されており、画像の生成段階で他のユーザーの画像情報が一部混入するという、設計上の根本的なミスが発端でした。さらに、このシステム変更に際して十分なテストが行われていなかったこと、開発担当者の理解不足も重なり、問題が未然に防げなかったことが報告されています。
総務省は、「通信の秘密」の重要性を再確認するようLINEヤフー社に求め、今後の実施状況についても継続的な報告を求めています。このように、LINEのようなプラットフォームであっても、設計や運用のミスによって重大な個人情報漏洩につながる可能性があることを、利用者側も十分に理解しておく必要があります。
機密性の高いアプリでも起こるヒューマンエラー

2025年3月、アメリカのトランプ政権下で驚くべき情報漏洩が発生しました。国家安全保障担当の大統領補佐官が、著名ジャーナリストであるジェフリー・ゴールドバーグ氏を、誤って政府高官専用のSignalチャットグループに招待したのです。このグループには副大統領や国務長官など18名の政府要人が参加しており、3月15日に行われたイエメンへの空爆に関する作戦計画がリアルタイムで共有されていました。
使用されていたSignalは、高度な暗号化とセキュリティを誇るメッセージアプリとして知られています。しかし、いくら技術的に安全性が高くても、最終的なリスクは「人の手」によって引き起こされることがあるという事例です。
このような出来事は、日常的な業務においても他人事ではありません。企業のチャットグループやプロジェクト共有環境でも、相手を誤って招待することで社外秘の情報が流出する危険は常に存在します。たとえそのため、ツールの使い方だけでなく、「使い方を誤る可能性がある」という前提に立った対策や教育が、情報漏洩防止には欠かせません。
まとめ:気軽さの裏にある重大リスク
LINEは便利なコミュニケーションツールである一方、ビジネス利用においては重大な情報漏洩リスクを孕んでいます。ヒューマンエラーによる誤送信やスクショ共有、スマホの紛失、さらにはLINE自体のシステム的な不具合による漏洩事例も報告されており、安全性には十分な配慮が求められます。
機密性の高いツールを使っていても、最終的なリスクは「人」によるミスであることを忘れてはなりません。日々の運用とルール整備を徹底し、情報管理への意識を高めていくことが重要です。
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