ロジハラ(ロジカルハラスメント)とは?背景と取り組むべき防止策を解説

「正しいことを言っているだけなのに、なぜか相手が傷つく」「論理的に説明しても納得してもらえない」。
そんな職場のすれ違いから生まれる新しい問題が、ロジカルハラスメント(ロジハラ)です。

ロジハラは、論理的思考が行き過ぎて人を追い詰めてしまう行為。パワハラやモラハラと異なり、「正論」であるために気づかれにくく、企業にとっても見過ごされがちな課題です。
本記事では、ロジハラの特徴と心理背景、そして企業・組織として何ができるのかを解説します。

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目次

ロジカルハラスメント(ロジハラ)とは

ロジハラという言葉は近年注目を集めていますが、その本質を正確に理解している人は少なくありません。ここでは、ロジハラの定義と、その行為がどのように職場で起こりやすいのかを整理します。

ロジハラの定義と特徴

ロジハラとは、論理的な言葉や正論を使って相手を精神的に追い詰める行為です。「理屈では正しい」ことを盾に、相手の感情や立場を軽視することで、心理的な圧力を与えてしまいます。問題なのは、加害者自身が「自分は正しい」と信じているため、ハラスメントの意識を持ちにくいことです。

たとえば、「感情的にならず事実で話して」「説明が筋通っていない」といった発言。一見正論のようでいて、相手の意見を封じ込める言葉として働くことがあります。このような発言が続くと、部下や同僚は発言を控えるようになり、チームの活力が失われていきます。

職場で起こりやすい構造

ロジハラは、上司から部下への一方向的なコミュニケーションの中で起こりやすいものです。とくに成果や効率を重視する職場では、「感情を持ち込むな」という無意識のプレッシャーが強く、感情表現そのものが“非論理的なもの”として排除されがちです。この構造が積み重なることで、正しさの押しつけが組織文化として固定化していくのです。

なぜロジハラが増えているのか

ロジハラが増加傾向にあるのは、単なる偶然ではありません。社会構造や働き方の変化、そしてコミュニケーションの質的転換がその背景にあります。

成果主義と合理化の時代

現代の企業では「結果がすべて」という成果主義が広がり、合理的に説明できる人が評価されやすくなりました。この文化は一方で、「論理的であることが正義」という考えを生み出しています。上司が部下にミスを指摘するときも、「事実に基づいたフィードバック」として、厳しい言葉を正当化しがちです。

しかし、職場は人と人が協働する場です。論理だけでなく、相手の感情や状況を汲むことが欠かせません。成果主義が進むほどに、この“人間的な部分”が軽視されやすくなり、ロジハラを生む下地が整ってしまうのです。

テレワークとデジタル化によるコミュニケーションの変化

もうひとつの要因が、テレワークやオンラインコミュニケーションの定着です。非対面でのやり取りでは、声のトーンや表情といった非言語的な情報が欠けます。メールやチャットでは文面が冷たく見えやすく、意図せず相手を傷つけるケースが増えています。

また、SNS文化の影響も見逃せません。短く鋭い意見が評価される社会では、「論破」や「正論」が美徳のように扱われ、その価値観が職場にも持ち込まれています。このような背景の積み重ねが、論理を武器にしてしまう環境を生み出しているのです。

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被害者・加害者双方に起こる心理メカニズム

ロジハラを理解するうえで重要なのは、「誰もが加害者にも被害者にもなり得る」という点です。お互いの立場でどのような心理が働くのかを見ていきましょう。

被害者の心理

ロジハラを受けた人は、「相手の言うことは間違っていない」と感じやすく、反論することを諦めてしまいます。理屈では正しいが、自分の感情が否定されたように感じ、徐々に自己肯定感を失っていくのです。「自分が悪いのかもしれない」「非論理的なのは自分だ」と思い込み、発言や提案を避けるようになります。結果として、職場での発信力を失い、孤立感や疲弊を深めていくケースが多いのです。

加害者の心理

一方で加害者は、自分の発言を「指導」や「改善のため」と信じています。多くの場合、悪意ではなく使命感からくる行動です。特に成果プレッシャーが強いリーダー層ほど、「論理的でなければ成果が出ない」と考え、相手の感情よりも結果を優先してしまいます。

このすれ違いは、どちらかが悪いという問題ではありません。
「正しさ」と「やさしさ」のバランスをどう取るか――
そこに気づくことこそが、ロジハラ防止の第一歩となります。

組織が今すぐ取り組むべきアクション

ロジハラの防止を掲げても、理念だけでは現場は変わりません。ここでは、企業が今日から実行できる具体的なアクションを紹介します。

1. 社内でロジハラの定義を共有する

まずは、「ロジハラとは何か」を明文化し、社内に共有すること。指導とハラスメントの境界を言語化することで、誤解やグレーゾーンを減らします。例えば、「相手の意見を一方的に論破する」「感情を無視した指摘を繰り返す」といった行為を具体例として示すと、認識がそろいやすくなります。

2. コミュニケーション研修の導入

次に、管理職・若手社員を問わず「伝え方」「受け止め方」を学ぶ研修を取り入れることです。ロジハラは意識の問題であり、スキルの問題でもあります。研修では、ロールプレイやケーススタディを通じて、相手の気持ちを汲み取る対話スキルを磨きます。

また、ハラスメントの知識を得るだけでなく、感情を尊重したコミュニケーションの実践がポイントです。研修後には参加者同士の対話会や定期的なフィードバックを行い、学んだ内容を職場に定着させましょう。

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3. 対話の文化を根づかせる

会議や1on1での発言機会を均等に設け、「意見を出しても大丈夫」という心理的安全性を高めます。また、部下のミスや感情的な反応をすぐに否定せず、「何がそう感じさせたのか」を尋ねる姿勢を持つことが重要です。対話が積み重なることで、論理と感情がバランスを取り戻します。

4. データをもとに改善を継続する

ストレスチェックやエンゲージメント調査などを活用し、組織の健康状態を可視化します。ロジハラが起きやすい部署やタイミングをデータで把握し、早期に対応することで被害を防げます。

ロジハラを防ぐための文化づくり

ロジカルハラスメントを防ぐ最も確実な方法は、「正しさよりも信頼を優先する文化」をつくることです。論理は人を導く力を持ちますが、信頼がなければ、それはただの圧力にしかなりません。

意見が異なるときこそ、「相手の意図を理解しようとする」姿勢が問われます。ロジハラを防ぐ組織は、単にハラスメントをなくすだけでなく、人が安心して意見を交わせる創造的な職場を実現します。

まとめ

ロジカルハラスメントは、“正しさ”の裏に潜む新しい職場課題です。背景には成果主義やリモートワーク、SNS文化など、現代社会の構造的要因があります。

企業が取るべきは、教育・制度・文化の三位一体での取り組みです。特に、ハラスメントを理解し、対話力を育む研修は効果的な第一歩です。

論理を磨くだけでなく、人を尊重しながら伝える力を養うこと。それこそが、ロジハラのない健全で強い組織をつくる鍵となります。

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