マネーロンダリングに無意識に関与?放置すれば企業の存続も危うい

マネーロンダリング(資金洗浄、以下「マネロン」)と聞くと、「銀行や大企業の問題で、自分の仕事には関係ない」と感じる方も多いかもしれません。しかし、実際には、営業職や経理、窓口業務を担当する社員が知らぬ間にマネロンに加担してしまうケースが増えています。

たとえば、こんな取引を見たことはありませんか?

  • 新規の顧客が、なぜか現金取引にこだわる
  • 過去に取引のない企業が、突然、大口の海外送金を依頼してくる
  • 個人顧客なのに、頻繁に大きな金額を入出金している

こうした取引は、一見すると合法的に見えますが、実はマネロンの可能性が潜んでいるかもしれません。もし対応を誤れば、企業だけでなく、取引を処理した社員個人の責任が問われることにもなりかねません。

目次

マネロンはどのように行われるのか?

マネロンは、単純に「お金の出所を隠す行為」ではなく、3つのステップ を経て行われます。

資金の投入(プレースメント)

まず、犯罪で得た資金を、合法的に見せかけるために金融機関や企業の取引に紛れ込ませます。たとえば、架空の会社を設立し、その口座に不正資金を振り込むことで、資金を一見クリーンなものに見せかける手法があります。また、個人名義の口座を大量に利用し、少額ずつ入金する「ダーフィン型送金」もよく使われる手口のひとつです。この方法では、銀行やATMを通じて少しずつ資金を入金し、目立たないようにすることで、不正資金と気づかれにくくなります。

資金の分散(レイヤリング)

次の段階では、資金の流れを複雑にすることで、追跡を困難にします。マネロンの実行者は、国内外の複数の銀行口座を経由させたり、資金を仮想通貨に変換したりすることで、金融機関の監視をかいくぐります。また、高額商品を使った資金洗浄もよく利用される手口のひとつです。たとえば、犯罪で得た資金を使って美術品や高級車を購入し、それを後に転売することで、資金の出所を偽装するのです。

資金の統合(インテグレーション)

最終的に、不正資金はクリーンな資金として社会に統合されます。典型的な手口として、不動産の購入が挙げられます。マネロンの実行者は、不正資金を使って高額な不動産を購入し、それを合法的な資産として見せかけます。また、レストランや輸出入業などのビジネスに資金を投入し、通常の売上のように偽装することもあります。さらに、架空の請求書を作成し、正規の取引を装うことで、不正資金を合法的なものとして処理する手口も確認されています。

知らずに加担してしまった企業のケース

実際に、マネロンに関与してしまった企業の事例を見てみましょう。ある日本の金融機関では、長年取引のあった企業からの送金依頼を何の疑いもなく処理していました。しかし、その資金は海外の犯罪組織に流れていたことが後に判明。金融庁の調査が入り、銀行は巨額の罰金と業務改善命令を受けました。さらに、対応に関わった社員も社内処分を受け、キャリアに大きな影響を及ぼしました。

このように、「昔からの取引先だから大丈夫」「普段からやりとりのある顧客だから問題ない」といった油断が、思わぬリスクを招くのです。

マネロンに関与すると待ち受ける重大なリスク

マネロンに関与すると、企業や個人にとって深刻な影響が及びます。企業がマネロンに関与した場合、金融庁や関係当局から業務改善命令が出されることがあります。さらに、悪質な場合は業務停止命令や巨額の罰金が科せられることもあります。日本国内でも、マネロン対策が不十分だった金融機関が数億円規模の罰金を科された例があり、こうした制裁が経営に大きな打撃を与えることになります。

社員個人にとってもリスクは大きく、マネロンに関与した社員は、会社から懲戒処分を受ける可能性があります。場合によっては減給、降格、最悪の場合は解雇となることもあります。特に、コンプライアンス違反が厳しく問われる現在の企業環境では、「知らなかった」では済まされません。

マネロンを防ぐために必要な知識とは?

マネロンのリスクを回避し、企業や個人を守るためには、正しい知識と実務での対応力 が求められます。単に「怪しい取引を見つけたら報告すればいい」と考えるのは危険であり、どのようなポイントに注意を払うべきか、具体的な対策を理解する必要があります。

リスクベース・アプローチ(RBA)の理解

マネロン対策の基本となるのが リスクベース・アプローチ(RBA:Risk-Based Approach) です。これは、すべての取引を同じ基準でチェックするのではなく、リスクの高い取引に重点を置いて監視する方法です。たとえば、通常の取引額を大幅に超える送金が突然発生した場合、取引相手や資金の流れを慎重に確認する必要があります。また、特定の高リスク国との頻繁な取引も、より詳しく審査すべき対象になります。

RBAを正しく理解し、企業ごとに適切な対策を講じることで、リスクの高い取引を早期に発見し、適切な対応を取ることが可能になります。

顧客管理(KYC)の徹底

マネロン対策では、KYC(Know Your Customer:顧客を知る) が不可欠です。新規の顧客はもちろんのこと、既存の取引先についても、定期的に取引内容を見直し、疑わしい点がないかを確認することが求められます。

たとえば、長年取引のあった顧客が突然、通常とは異なる取引を依頼してきた場合、慎重な対応が必要です。送金先の情報や資金の出所が明確でない場合は、追加の確認を行うことが重要になります。また、法人の場合は、最終的な実質支配者(Beneficial Owner:BO) が誰なのかを把握し、不透明な資本関係がないかをチェックすることも求められます。

疑わしい取引の発見と対応

企業がマネロンに関与しないためには、疑わしい取引を適切に見抜き、迅速に対応する ことが欠かせません。たとえば、以下のようなケースでは慎重な対応が求められます。

  • 顧客が説明のつかない多額の現金取引 を希望する場合
  • 取引の目的や資金の出所を曖昧にする 顧客がいる場合
  • 通常とは異なる取引パターン(突然の大口送金、短期間での多額の資金移動など)が発生した場合

このような取引を発見した場合、速やかに上司やコンプライアンス部門へ報告し、適切な指示を仰ぐことが重要です。独断で判断せず、企業としての対応フローに従い、慎重に対応することが求められます。

研修でマネロンの知識を深めることが重要

マネロンのリスクを正しく理解し、適切な対策を講じるためには、定期的な研修を受けることが不可欠 です。近年のマネロン手口は年々巧妙化しており、法律や規制も頻繁に変わるため、最新の情報を把握し続けることが求められます。企業が研修を実施することで、社員一人ひとりのコンプライアンス意識を高め、不正取引に対する防御力を強化できます。

研修では、過去の事例を基に、どのような取引が疑わしいのか、リスクの高い取引をどのように見極めるべきかを学びます。また、実務での対応方法も詳しく解説されるため、学んだ知識を現場で即活用できるのが大きなメリットです。特に、マネロン対策では「疑わしい取引を見逃さない感覚」が重要となるため、研修を通じて具体的なケースを学ぶことが、実際の業務で役立つでしょう。

また、研修には 対面形式とオンライン形式の2種類 があり、業務スケジュールに合わせた柔軟な学習が可能です。対面研修では講師とのディスカッションを通じて深い理解が得られ、オンライン研修では自分のペースで繰り返し学ぶことができます。特に、近年はオンライン研修が充実しており、忙しい業務の合間でも効率的に学習できる環境が整っています。

おすすめ

コンプライアンス~マネー・ロンダリング等の防止

本研修では、マネーロンダリングの基礎知識から最新の手口、実務で役立つリスク管理方法を学びます。営業・経理・窓口業務など、マネロン対策が必要な業務に携わる方に最適です。実際の事例を交え、リスクの見極め方や適切な対応を解説。企業の信頼を守るために、ぜひご受講ください。

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まとめ:正しい知識が企業と社員を守る

マネロンは決して他人事ではなく、日常業務の中に潜んでいます。企業が適切な対策を取らなければ、信用を失い、行政処分の対象になる可能性があります。企業だけでなく、社員個人にも大きなリスクがあるため、「うちは関係ない」「自分の仕事とは無縁」と思っている今が一番危険です。

企業の信頼を守るために、そして自身のキャリアを守るために、今こそマネロンのリスクを理解し、対策を学びましょう。研修を通じて最新の知識を身につけ、企業全体でコンプライアンス意識を高めることが、マネロンリスクを回避する最善の方法です。