労基への相談はアルバイトでも可能?よくある問題点と相談先を解説

労基への相談はアルバイトでも可能?よくある問題点と相談先を解説
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アルバイト先が2ヶ月も給料を払ってくれなくて…。労基に相談したいけど、正社員じゃなくても相談できるのかな?

厚生労働省によれば、令和5年現在での労働問題について、相談窓口へ寄せられた相談件数は121万件を突破し、4年連続で120万件超えの高止まり状態だという報告がされています。
仮に労働問題での悩みで相談するとしたら、真っ先に「労働基準監督署(労基)」のことを思いつく人も多いのではないでしょうか。

実際に、労基では多くの相談に応じてくれています。
しかし、それは正規の雇用社員に限ったことではないかと疑問に思っていませんか。

本記事では、アルバイト雇用されている人でも労基へ相談ができるのかという素朴な疑問に応える内容です。万が一の際に、ぜひ参考にしてみてください。

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目次

アルバイトでも労基へ相談できるのか?

職場での労働問題やトラブルに関しては、アルバイトでも労基に相談が可能です。理由は、労働基準法の規定が、すべての労働者に適用されていることによります。

もし困ったことが発生したのであれば、アルバイトであろうとなかろうと雇用形態に関係なく、労基に相談するとよいでしょう。

アルバイトが労基に相談できる内容

アルバイト雇用されている従業員は、実際にどのような内容の相談が可能でしょうか。結論を言えば、労働条件に関するほとんどの相談ごとができます。

具体的には、以下のような項目です。

  • 賃金
  • 労働時間
  • 休憩・休日
  • 労災
  • 職場環境

相談される内容の詳細については個人差もありさまざまです。

アルバイトからの相談は匿名も受け付けるのか

労基への労働問題は、やはり実名で正式に申し入れないと受け付けてくれないのでしょうか。
実は、実名でも匿名でも相談に応じてくれます。また、個人情報保護についても配慮されているため、いずれにしても会社側へ実名を公表するようなことはしません。

しかし、それでも自分の名前がバレる恐れは考えられます。その際の原因は、ほぼ「労基以外での他の場所」から漏れているものです。
アルバイトの場合も、名前などの個人情報漏洩のこともあらかじめ考えて、余計な場所での公言はせず、客観的に進捗させるように気をつけてください。

相談する際は料金がかかるのか

労基への労働問題の相談は無料、すべて無料で実施できます。安心して相談しにいくとよいでしょう。

ただし、労基で対応できる範疇には限界もあり、あくまでも会社側への是正勧告などの命令はしますが、起きたトラブルの根底を解決してくれる機関ではありません。もし、諸問題を完全に解決させたいと思うのなら、第三者機関となる法律関係の専門家に依頼する方法になるでしょう。

その際、依頼内容によって有料となる可能性があります。

労基への相談でよくあるアルバイトの問題点

労働基準法は、正社員・契約社員・アルバイトといった労働形態に関係なく、労働問題やトラブルについて規定された法律です。労働者の最低限の権利は、労働基準法によって保護されています。

ここでは、労基へ寄せられている、労働問題の事例について紹介していきます。

給与に関する相談

おそらく最も多い労働問題の典型は、給与に関する相談ではないでしょうか。具体的に該当するケースとしては、以下のようなことが考えられます。

  • 最低賃金を下回った給与体制
  • 減給措置の取り扱い方
  • 残業手当の未払
  • 時間外手当の未払

支払われるアルバイト代が最低賃金を下回っているとしたら、労働基準法違反に該当するでしょう。

最低賃金については、「最低賃金法第4条1項」に基づき、都道府県ごとの規定に沿って支払うことが経営者の義務になっています。最低賃金を下回った金額設定は無効とみなされるはずです。
もし職場での時給が一切更新されず据え置きである場合、すでに最低賃金を下回っている危険性があるので注意が必要となるでしょう。

また、減給措置の対象は、遅刻・欠勤などによる減給とみなされる行為への対応です。明確にされた減給措置は認められていますが、極端な制裁に該当すると違法になります。「労働基準法第91条」の規定により、減給は「1回の額が平均賃金の一日分の半額」もしくは「総額が一定支払期間の賃金の総額の10分の1」を超えてはならない規則です。

残業手当が付与されないトラブルも、労働基準法違反とみなされます。所定労働時間を超えた場合は残業手当の支払いが義務で、アルバイト・正社員問わずすべての労働者が保障されています。

もし未払いの残業代が遡ってある場合は、後から請求できる可能性があるでしょう。他にも、時間外手当の付与がない場合も違法に該当します。

法定労働時間では、1日8時間もしくは週40時間が定められ、これを超過した労働時間には、時間外手当を割増で支給しなくてはなりません。これは「労働基準法第37条」によって規定されている権利です。
ちなみに、8時間以上を超えた場合は25%以上、深夜手当(夜22時〜朝5時)は25%以上、休日手当では35%以上といった割増率になっています。

労働時間に関する相談

アルバイトの労働問題では、労働時間に関する違反も考えられます。

労働時間に関する相談として、以下のような内容がありえるでしょう。

  • 休憩時間の付与がない
  • 無給の拘束時間
  • 18歳未満への深夜労働
  • 連勤による無休状態

アルバイト先にて休憩時間が設定されていないと、労働基準法違反となります。労働時間6時間以上8時間未満の勤務で、最低45分の休憩が必要です。

労働時間8時間以上の勤務になれば、最低1時間の休憩の付与を義務としています。もし規定より短い休憩時間の場合も違反とみなし、すべて「労働基準法第34条1項」による規定です。

無給での拘束時間が発生した場合も、労働基準法違反とみなされます。業務就業前の朝礼・清掃なども、労働時間として当てはまる内容です。そのため、それを無視した独自の会社規定は、違法行為と考えてよいでしょう。

また、18歳未満の人物への深夜勤務は「労働基準法第61条」および「労働基準法第58条」によって規定されています。22時から5時までは深夜勤務に該当し、18歳未満や高校生は採用できません。他にも、連続勤務で休日を与えていない状況も違反とみなされます。

「労働基準法第35条」にて、週1日以上または4週間を通じて4日以上の休日の付与が必要とされているのです。もし1日8時間以上、1週40時間以上、休日の勤務が発生したら、上記のように25%以上の割増賃金の支払い義務も発生します。

社内規定に関する相談

会社内規定についても、労働基準法違反に該当するケースが考えられるでしょう。違法に該当するものとしては、おもに以下のような内容です。

  • 遅刻・欠席へのペナルティ
  • 罰金規定がある
  • ノルマの設定
  • 予告のない解雇
  • 有給休暇の付与がない

アルバイト社員が遅刻や欠勤をする場合にペナルティが設けられている職場は、労働基準法違反に問われます。

「労働契約法第15条」の規定があり、罰則としての業務命令かどうかになるでしょう。もし就業規則にて減給や出勤停止懲戒規定を設ける時には、客観的な理由・事由を明記し、社会通念上で相当範囲内において可能です。

ちなみに、アルバイト従業員への罰金制は、労働基準法違反とみなされます。仕事中での破損などのミス・ノルマの未達成・退職願などに対して違約金や損害賠償の罰金を科すのは違法で、「労働基準法第16条」による規定で定められているのです。

他にも、アルバイト業務でのノルマの設定も労働基準法違反とみなされます。売上目標が未達だからと、商品の買い取りを強制するのも違法とされ、「労働基準法第24条」によって規定された内容です。

また、事前予告のない解雇はアルバイトでも労働基準法違反です。従業員の解雇は、30日以上前の予告が必要で、予告しない場合は手当を支払う義務が課せられます。予告の際は「解雇予告通知書」の交付が必要です。

もし、有給休暇が付与されない場合も労働基準法違反です。アルバイト含めたすべての労働者の場合、半年以上雇用され全労働日の8割以上出勤していれば、年10日以上の年次有給休暇の付与が義務化されました。

アルバイトからの申し出を受け付けている相談先

労働トラブル関連のことで、アルバイトからの申し出を受け付ける相談先としては、労基以外にも複数存在します。

おもな機関としては以下のような場所です。

  • 総合労働相談コーナー
  • 都道府県労働局の雇用環境・均等部
  • 弁護士
  • 労働組合

いじめ・ハラスメント・解雇・労働条件などの一連の労働問題について、雇用形態を問わずに相談できます。

総合労働相談コーナー

労働トラブルについての初めての相談をする上で、都道府県労働局内にある「総合労働相談コーナー」もおすすめです。総合労働相談コーナーでは、職場トラブルの相談に応じ、解決に向けた情報をワンストップで提供しています。

いじめ・ハラスメント・解雇・労働条件についての相談が可能で、学生や就活生の相談も受け付ける機関です。

都道府県労働局の雇用環境・均等部

都道府県労働局の雇用環境・均等部とは、厚生労働省の出先機関として存在しています。相談の対応については、総合労働相談コーナーとほぼ同様と思ってよいでしょう。

労働問題全般についてアドバイスをしてくれます。また、厚生労働省のサイト 「両立支援の広場」も参考になるでしょう。女性の労働問題に強いことが特徴です。

弁護士

もし、残業代の請求や不当解雇などの具体的な解決を希望する場合には、弁護士への相談も検討しておきましょう。
労基の場合は公的機関であり中立的立場としてアドバイスはしますが、相談者を最後まで面倒を見てくれるわけではありません。

一方で弁護士に依頼すれば、代理人として労働者の味方になってくれます。公的機関のような管轄がないので、労働問題に広く対応が可能です。
デメリットとしては、弁護士費用の負担を考えなくてはなりません。それでも最初の相談には無料で対応してくれる弁護士事務所も多く存在します。最終手段として、弁護士についても検討しておくことです。

労働組合

とくに労働条件の問題で交渉をしたい場合には、労働組合に相談するとよいでしょう。労働組合を利用するにあたっては、該当する社内で解決を図る意味になります。自分以外の労働者が所属していれば、一層交渉力が強まるので、希望が通る可能性もあるでしょう。

自由度が高いこともメリットです。ただし、会社との交渉となることがデメリットとなり、希望が実現するとは限りません。

労働相談ホットライン

労働相談ホットラインは、全国労働組合連合会が運営するサービスです。労働者の地位向上・労働環境改善のために設置されています。

各地の労働相談センター内に開設され、知識を得た相談員が対応するシステムです。労働トラブルについての正しい知識を得たい場合にも相談できます。

労基へ相談する際の注意点

アルバイト従業員が労基に相談する場合には、具体的な問題内容を整理し、証拠を提示するように注意を払いましょう。違反の証拠となる材料集めとして、残業代未払い、休憩時間の不足を証明する内容をまとめることが重要です。

おもな注意点としては以下の内容が考えられるでしょう。

  • 相談内容を具体的に示すこと
  • 必要な証拠を十分に集めること
  • 匿名での申し出をしておくこと
  • 労基との連携は積極的におこなうこと
  • とにかく早めに行動に出ること

まず最初に、いつから・どんな問題が起きたのかを具体的に説明するようにしましょう。漠然とした申し出は、相談を受けた方でも対処に悩んでしまいます。必ず時系列や状況などは、5w1hに準じながら慎重に取り計らうようにすることです。

証拠の準備も同様で、給与明細・勤務時間記録・メール履歴といった証拠は、今後も重要な資料となっていきます。相談内容を整理して、要点を明確にすることがポイントです。申し出る場合は、匿名にするとよいでしょう。労基には守秘義務があり対応してくれます。
ただし、状況や進捗によっては匿名を貫くことは難しい場合も考えられるでしょう。仮に情報漏洩してしまう原因のほとんどは、労基間との連絡からというよりも、それ以外の場所で漏れているケースが目立ちます。

例えば、誰かにうっかり話してしまった場合や、資料作りを社内でおこなってしまいその残骸が放置されているといったことです。相談後には、労基からの是正勧告や調査状況を確認し、必要によっては追加の証拠を提出することもあり得ます。

重要な点は、労働問題発生後には、早めに労基へ相談することです。躊躇して遅くなればなるほど、証拠集めにも苦労し、なによりも自分の記憶が曖昧になりかねません。どうしても問題解決したいのであれば、少しでも早い対応が望まれます。

まとめ

アルバイト従業員が労基へ相談することは可能です。
被害を拡大させることがないように、事前準備を怠らないようにしましょう。

労基へ相談する際は、具体的な流れや契約書・給与明細・メールなどの証拠資料を事前に準備しておくことです。また、労働問題については、個人で解決することは難しいケースがあるので、必要に応じて弁護士などの専門家からのアドバイスを受けることも検討しておく必要があります。

問題がこじれないためにも、早めの対策と行動をしていきましょう。

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