パワハラ対策にはボイスレコーダーが有効!その他の証拠保全、告発方法も紹介

職場で日常的に上司に怒鳴られたり、罵倒されたりしていませんか?「自分はパワハラを受けている…」と気づいたとき、どのように対処すればいいでしょうか。

連日続くパワハラによって、深刻な健康被害が出るケースも少なくありません。不安を感じるだけでなく、実際に心身の不調が現れている場合は、毅然と対応しましょう。被害を受けた際は、まず確実な証拠を揃えることが大切です。その際に有効な手段の一つが、ボイスレコーダーの活用です。

本記事では、ボイスレコーダーを用いた証拠保全の方法や、その他の効果的な証拠収集手段、パワハラを告発する方法について解説します。現在、パワハラに悩んでいる方は、ぜひ参考にしてください。

目次

パワハラの録音は重要な証拠になる

パワハラが頻繁に発生する職場ではボイスレコーダーやスマホを常に携帯し、いつでも録音できる状態にしておくことをおすすめします。

パワハラの証拠として、以下のような音声を録音しておきましょう。

  • 大声や怒鳴り声
  • 物を投げつけたり、壊したりする音
  • 人格否定をするような上司の発言
  • 長時間にわたり執拗に続けられた面談

録音する際には、1つの発言を録音するだけでなく、はじめから終わりまで、すべての行為を一部始終録音しましょう。
パワハラの録音は、裁判になった場合に特に重要な証拠となりますが、それだけでなく、裁判に至る前の段階でも役立つ場面が多くあります。

録音は、パワハラだけでなく、その他の労働問題でも強力な武器となります。民事訴訟では、原則として証拠能力に制限がないため、あらゆる資料が証拠として活用できるからです。

ただし、SNSに録音した音声を公開したり、匿名で職場に送ったりして、不特定多数の人に個人情報を公開する行為は、プライバシーの侵害となる可能性があるため、十分に注意しましょう。

録音が証拠にならない例外的なケース

パワハラを録音した内容は、証拠能力、すなわち証拠としての利用が認められますが、必ずしも有力な証拠になるとは限りません。

では、録音が証拠として使えないのはどのような場合でしょうか。例えば、以下のケースが考えられます。

① 意図的に挑発して相手を怒らせた場合
パワハラの証拠を得るために、わざと相手に乱暴なことを言わせるのは無効です。

② 訴える側が一方的に話し、相手が「うん」「まあね」「そうだね」と相槌を打つだけの状況
相槌を打つだけでは「相手が事実を認めた」とは見なされません。無理に話を誘導した場合、証拠としては不十分であり、認められにくくなります。

ボイスレコーダーで録音する方法

パワーハラスメントの録音は、被害を正当に証明する手段ですが、うまく進めていかないと証拠として役だたない可能性もあります。上司のパワハラ発言をしっかり証拠に残すためには、録音方法にも細心の注意が必要です。次のポイントを押さえて、慎重に進めましょう。

それぞれについて説明します。

まず試しに録音してみる

いざという時に録音できなかったり、音がうまく拾えなかったりするトラブルは少なくありません。そのため、自宅で試しに録音してみることをおすすめします。

常にボイスレコーダーを持ち歩く

パワハラはいつ起こるかは予測できないため、「パワハラが発生してから録音しよう」と考えていると、十分な証拠が集まらなくなります。特に職場での陰湿ないじめなどの場合は、その全体を録音しておかないと、裁判所に状況をうまく説明することができません。

そのため、常にボイスレコーダーを携帯することを心がけ、パワハラが起こる可能性が高い場面では、忘れずにボイスレコーダーを持参しましょう。

こっそり録音する

パワハラの証拠を集めるための録音は、相手の承諾を得る必要はありません。こっそりと秘密裏に録音することが重要です。ボイスレコーダーは、胸ポケットに入れておくのが最も音を拾いやすく、効果的です。

パワハラ対策に!おすすめのボイスレコーダー

こっそり録音するには、ペン型やスティック型がおすすめです。

ペン型のボイスレコーダーは、外見上普通のボールペンと同じですので、スーツやシャツのポケットに入れておけば、相手に気づかれることなく録音することが可能です。製品によっては、録音環境に合わせてマイクの感度を自動で調整するため、「声が部分的に小さい」「音が割れてしまう」といった問題を防げるタイプや、モードを切り替えることで、さまざまな録音環境に合わせた録音が可能なものがあります。

レコーダーは必要な時にすぐに使用できる使い勝手の良さも大切です。家電量販店などで実際に手に取り、サイズ感や使用感を確かめてから購入することをおすすめします。

その他の効果的なパワハラの証拠保全方法

パワハラの証拠保全方法として、ボイスレコーダーによる録音の他に、以下のような方法も効果的です。

パワハラの動画撮影

録画した動画は、録音と同様に、直接的な証拠として有効です。動画を入手する方法としては、同僚にこっそり撮影してもらうか、パワハラが発生しそうな場所にカメラを設置することが考えられます。また、監視カメラに暴力行為やパワハラと見なされる言動が記録されていれば、それは決定的な証拠となります。

パワハラにあたる命令などを記載した書面

パワハラにあたる指導や命令が書面で記録されている場合は、必ずその書面を保管しておきましょう。書面による証拠は、改ざんや偽造が難しいため、裁判でも重要視されます。ただし、加害者がパワハラを隠すために、書面を避けて口頭で命令することもあります。こういった場合は、書面での命令を求めることが大切です。また、解雇されるなどの事態には、解雇理由証明書なども証拠として役立ちます。

メールやLINEの履歴

メールやLINEのやり取りも、証拠として保存しておきましょう。対面でのやり取りよりも気軽に使えるため、感情に任せてパワハラに繋がる場合があります。不快に感じても削除せず、重要な証拠を失わないように注意しましょう。

同僚の証言

他の社員の前でパワハラを受けた場合、同僚の目撃証言も証拠となるため、協力をお願いしてみましょう。物的証拠があまり揃っていない場合には、証言も重要な証拠になります。

病院の診断書

パワハラで受けた精神的苦痛を証明するには、病院の診断書や通院履歴が証拠として役立ちます。適切なタイミングで医療記録を取得し提示することで、裁判でパワハラの被害を受けていることを主張しやすくなります。

被害者のメモや日記

パワハラの前後の状況を示すためには、被害者が記録したメモや日記が証拠として有効です。当時の記録は大切に保管しておきましょう。被害者が自分で用意できる証拠は、できるだけ多く集めてください。メモには、パワハラを受けた日時や場所、どのような内容のパワハラだったかを具体的に記すことがポイントです。

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パワハラを告発する方法

職場の上司をパワハラで訴える手順を紹介します。

1.まず会社に相談する

パワハラの証拠が集まったら、まず会社にパワハラがあったことを報告することが大切です。パワハラ防止法では、会社にパワハラの相談窓口を設ける義務があると定められています。人事部がその窓口となっていることもあるため、まずは人事部に相談してみましょう。会社が適切に対応し、パワハラが解消され、被害者も損害賠償請求などを考えていない場合、この時点で問題は解決します。

2. 公的機関に相談する

パワハラ被害を会社に相談しても対応してくれず、パワハラが続く場合は、公的機関に相談することを考えましょう。会社が所在する都道府県の労働局にある雇用・環境均等部(室)に相談すると、パワハラ解決のための助言やあっせんを行ってくれます。また、パワハラが原因で精神疾患を発症した場合、その精神疾患がパワハラによるものであることを証明できれば、労災として治療費が補償されることがあります。

3. 労働審判で訴える

労働局で問題が解決しない場合は、「労働審判制度」を活用する方法があります。この制度は、パワハラなどの労働トラブルを解決するためのもので、専門知識を持つ審判員2名と審判官1名が判断を下します。利用するには、地方裁判所に「労働審判申立書」を提出することが必要です。

4.弁護士に相談し、裁判で訴える

労働審判の結果に納得できない場合は、訴訟に進むことができます。訴訟では、加害者や会社に対して損害賠償を請求することが可能です。パワハラ訴訟には弁護士のサポートが必要です。加害者や会社が謝罪し、損害賠償を支払えば、示談が成立します。さらに、示談金の額だけでなく、今後パワハラを行わないことを明記した示談書を作成するのが一般的です。

まとめ

パワハラを訴えるには、ボイスレコーダーで上司の発言を録音するなど、証拠集めが重要です。録音することを躊躇する人もいるかもしれませんが、自分の権利を守るためであれば何ら問題はありません。ただし、録音データは外部に漏れないように慎重に管理する必要があります。

パワハラは、働くすべての人に関わる問題です。もしパワハラによって退職を余儀なくされた場合や、精神疾患を発症した場合は、法的に訴えることもできます。その際は、公的機関や弁護士に相談してみましょう。