ソーシャルビジネスとは?通常のビジネスとの違いやSDGsとの関係を解説

現代社会は、気候変動、貧困、格差といった複雑な課題に直面しています。これらの課題は、政府や非営利団体(NPO/NGO)だけでは解決が難しく、ビジネスの力が必要とされています。そこで注目されているのが、「ソーシャルビジネス」です。従来のビジネスが利益追求を第一とするのに対し、ソーシャルビジネスは社会課題の解決を事業の主目的としながら、その活動を持続させるための収益を確保します。この記事では、ソーシャルビジネスの基礎知識を深掘りし、その定義、従来のビジネスとの違い、そして社会で注目される背景について詳しく解説します。

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目次

ソーシャルビジネスとは何か?定義と特徴

ソーシャルビジネスは、利益を上げることを唯一の目的とするのではなく、社会的な課題を解決することに主眼を置いた事業形態です。グラミン銀行の創業者ムハマド・ユヌス氏は、ソーシャルビジネスを「金銭的な利潤を第一に追求するのではなく、利他の心(Selflessness)を持って、金銭よりも社会的な利益を追求する」と定義しています

この考え方に基づき、ソーシャルビジネスは以下の3つの要素をかけ合わせることで成り立ちます。

  • 自分らしさ(個人の情熱やスキル):事業を継続していく上で不可欠な、個人のモチベーションや強みです。
  • 社会課題(解決すべき問題):貧困、教育、環境、医療など、社会が抱える具体的な課題です。
  • ビジネス(収益を生む仕組み):活動を持続可能にするための、効率的な事業運営モデルです。

これら3つの要素が重なり合う部分こそが、「ソーシャルアントレプレナーシップ(社会起業家精神)」であり、事業の核となる「ソーシャルミッション」が生まれる場所です

ソーシャルインパクトの重要性

ソーシャルビジネスにおいて、事業の成果を測る重要な概念が「ソーシャルインパクト」です。これは、社会課題に対する解決策がどれだけ高い効果、効率、持続可能性、そして公正性をもたらし、社会全体の価値を創造したかという、実際の効果を指します 。

企業収益が組織の目的となる一般的なビジネスとは異なり、ソーシャルビジネスでは社会へのインパクトが組織の目的となります 。そのため、収益だけでなく、事業が社会に与える影響を定量化・可視化することが求められます。

通常のビジネスとの違い

従来のビジネスとソーシャルビジネスの根本的な違いは、その目的とモチベーションにあります。

1. 目的と価値観

従来のビジネスの多くは、株主への利益還元や企業価値の最大化を目的に設計されてきました。そこで生み出される価値は主に経済的リターンに集中し、社会貢献は本業の傍らで行う副次的な活動として扱われがちです。
これに対し、ソーシャルビジネスでは社会課題の解決そのものが事業の存在理由となります。利益はあくまで活動を持続可能にするための手段であり、経済的成果と社会的成果が常に両立する形で組み込まれています。

2. CSRとCSVの概念

企業の社会貢献活動は、CSR(Corporate Social Responsibility)からCSV(Creating Shared Value)へと進化しています。

CSR(企業の社会的責任)】
企業の利益活動とは切り離された、社会に対する「善行」と捉えられます。たとえば、環境保護のための植林活動や、地域コミュニティへの寄付などがこれにあたります 。コストとして捉えられがちで、外部からの要請や任意で行われることが多いです 。


【CSV(共通価値の創造)】
マイケル・ポーターとマーク・クラマーによって提唱された概念で、経済的価値と社会的価値を同時に実現することを目指します 。単なる善行ではなく、競争優位性を生み出すための戦略として位置づけられます 。ネスレの発展途上国でのコーヒー農家支援は、農家の生産性向上と購買力向上を通じて、自社の利益を拡大するというCSVの好例です 。

ソーシャルビジネスは、このCSVの考え方をさらに発展させたものと言えます。事業活動そのものが社会課題の解決であり、利益は結果として生み出される「インパクト」の一部となります。

3. 事業継続性

一般的なビジネスは、市場環境や競合の動向によって業績が左右され、事業の継続性が揺らぐことも少なくありません。これに対してソーシャルビジネスは、寄付や補助金に依存せず、自ら利益を生み出す仕組みを備えることで、活動を安定的に続けることができます。その結果、短期的な成果に終わらず、社会に対して持続的なインパクトを与えることが可能になるのです。

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ソーシャルビジネスが注目される背景

ソーシャルビジネスへの関心が高まっている背景には、複雑化する社会課題と、それに対応するための新たなアプローチへの期待があります。

1. 解決すべき社会課題の多様化と深刻化

貧困、飢餓、地球温暖化、人種差別、格差、少子高齢化、海洋汚染など、現代社会には解決が急務とされる多くの課題が存在します 。これらの課題は相互に絡み合い、政府や市民活動だけでは解決が困難になっています。

2. SDGs(持続可能な開発目標)の普及

SDGsは「持続可能な開発のための2030アジェンダ」に記載された、2030年までに達成すべき国際目標です 。17のゴールと169のターゲットから構成され、あらゆる個人、企業、団体が取り組むべき指針を示しています

  • 貧困をなくそう
  • すべての人に健康と福祉を
  • 質の高い教育をみんなに
  • 働きがいも経済成長も

このように、SDGsはソーシャルビジネスの目標設定における「ベンチマーク」として機能します 。企業がSDGsの目標達成に貢献するビジネスモデルを構築することで、社会的価値と経済的価値の両立が可能となります。

3. 社会的投資の拡大

近年、社会的インパクト投資(Social Impact Investing)という概念が広まっています。これは、財務的リターンと同時に、ポジティブで測定可能な社会的・環境的インパクトを生み出すことを意図する投資です。これにより、ソーシャルビジネスは、従来の寄付や助成金に加えて、新たな資金調達の選択肢を得ています。

初心者が学ぶべきステップとeラーニングの活用方法

ソーシャルビジネスの立ち上げを目指す初心者は、以下の段階を経て学習を進めることが推奨されます。

  1. 基礎知識編:ソーシャルビジネスの定義や、通常のビジネスとの違いを学びます。まずは「インパクト」や「共通価値(CSV)」といった基本的な概念を理解することが重要です 。
  2. 中級編:アイデアを事業として具体化するための方法論を学びます。「支援者や応援者を集める」「持続可能なエコシステムを創る」ための思考法を習得します 。
  3. 実践編:基礎・中級で学んだことを基に、実際に事業計画を設計(デザイン)します 。

オンラインのeラーニングや研修プログラムは、これらのステップを効率的に学ぶための優れたツールです。自分のペースで学習を進めながら、体系的な知識を身につけることができます。

マインドセットの醸成

ソーシャルビジネスを成功させるためには、マインドセットが不可欠です。

  • 「わたし」から始める
    スタンフォード・ソーシャルイノベーション・レビューでは、「主語を『わたし』に戻す」ことを提唱しています 。社会課題を「自分事」として捉え、「やっている自分たちが一番楽しい」と思えるような情熱を源泉とすることが、持続的な活動につながります 。
  • 「カーブカット効果」の理解
    マイノリティのための小さな解決策が、結果として社会全体に大きな恩恵をもたらす現象です 。車椅子利用者のために作られた歩道のスロープが、ベビーカー利用者や高齢者など、多くの人々に役立っていることがその好例です 。

学習によって得られるメリットとキャリアへの活かし方

ソーシャルビジネスの学習は、単に知識を得るだけでなく、以下のようなメリットをもたらします。

  1. ビジネススキルの向上
    事業計画の策定、資金調達、マーケティングなど、ソーシャルビジネスの運営には従来のビジネススキルが不可欠です 。社会課題という新たな視点を持つことで、より革新的で社会性の高いビジネスモデルを構築する力が養われます。
  2. 社会的ネットワークの構築
    資金調達の鍵は、利害関係者(ステークホルダー)との「良いつながり」にあります 。学習や実践を通じて、共通の志を持つ人々と出会い、協働する機会が増えます。
  3. キャリアの多様化
    企業のCSR部門、NPO/NGOの運営、そして社会起業家としての独立など、多様なキャリアパスが開かれます。特に、企業で社会貢献活動に携わっている人や、共通価値の創造(CSV)に興味がある人にとって、この分野の知識は大きな強みとなります 。

まとめ

ソーシャルビジネスは、社会課題の解決を事業の核に据え、経済的な持続可能性を両立させる新しいビジネスモデルです。従来のビジネスとは異なり、社会的なインパクトを第一の目的とします。

この分野で成功するためには、まず「自分らしさ」と情熱を見つめ直し、それを社会課題と結びつけることが重要です。そして、体系的な知識を学び、事業計画を練り、様々なステークホルダーと協力しながら、社会にポジティブな変化をもたらす「変化の方法論」を追求していくことが求められます。

ソーシャルビジネスは、一人ひとりの行動が未来を変え、未来へつなぐ力となります 。この学びを深め、社会に貢献する一歩を踏み出してみませんか?

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