戦略立案のおもな仕事内容とは?その規模や具体的なシチュエーションも紹介!
企業の経営者や責任者は、自社の事業発展のために経営戦略・事業戦略・マーケティング戦略といったさまざまな戦略立案をします。本記事は、戦略立案とはなにかについて特集した内容です。
ビジネスにおける戦略の概要、仕事内容、戦略立案の具体的な事例なども紹介します。これから戦略立案などの業務に関わる予定の人は、ぜひ参考にしてみてください。
目次
戦略立案の概要
戦略立案とは、企業組織が自社の発展のために、これからどのように方策すればよいのかを考えることを指します。戦略を立てることによって、組織がやるべきこと・やらないことの分別が明らかになり、さらに優先順位が見えてくるでしょう。
そこに投資する時間や資金などの下敷きもできあがります。戦略立案をすることは、企業の将来を計画的に捉えることになり、リスク軽減にも通じるでしょう。事業展開を成功に導くためには、戦略立案は必須の作業といえます。
戦略立案を大別すると、以下のような3つです。
- 経営戦略
- 事業戦略
- 機能戦略
一般的なビジネスでは、この3つの戦略を基準にしながら立案をしていきます。
経営戦略
経営戦略とは、企業や組織が事業目的を達成するための持続的な方針のことです。企業全体における大枠の戦略であり、当初打ち立てた活動指標や目標の達成のために、最初に取り決めなくてはならない案件といえるでしょう。
経営戦略は一般企業だけに限らず、行政、非営利団体など多くの組織にて必要とされているものです。
事業戦略
事業戦略とは、各種事業ごとに区分された経営戦略です。
大手企業になればなるほど事業セグメントやレベルも広がるため、細分化して考える必要性がでてきます。
各事業セグメントごとの目標達成への対策を立てることを意味したものです。おもに事業戦略では、市場分析・ビジネスモデルなどを考えて実行することが多くなるでしょう。
機能戦略
機能戦略とは、事業戦略をさらに細分化し部署ごとに立案する戦略です。企業の部署とは、例えば購買部・営業部・人事部などが該当しますが、各部署が機能別に戦略していきます。
まずは事業戦略が決定し、その内容に沿って策定していくのが一般的です。
戦略立案の仕事内容の手順
企業の戦略立案では、将来的にも利潤を求めながら、経営が維持できる戦略を策定することになるでしょう。
そのためには、常に正しいプロセスを汲んでいくことが重要です。
ここでは、戦略立案の仕事内容にて、どのような手順を追っていくのかを解説します。全体的な流れとしては、おもに以下の5つの段階を踏むことになるでしょう。
- 現状分析
- 戦略立案
- 戦略策定
- 評価
- 改善
①現状分析
戦略立案をするためには、現状を把握して分析しなくてはなりません。
自社商品の価格を決定する場合でも、競合他社との比較により適正な値段を決定させることになるでしょう。
現状把握をする際には、3C分析フレームワークなどをメインに活用することがあります。
3C分析は、Customer(市場・顧客)・Competitor(競合)・Company(自社)の各頭文字のCを取って表現します。3つの側面から事業計画やマーケティング戦略などを決定することが可能です。
②戦略立案
自社周辺の現状把握ができたら、ゴール設定のための戦略立案をします。現状の把握から目的を明確にし、具体的なゴールを設定する流れです。
なにをすべきか、何がいらないのかを見極めていきます。戦略立案では、やると決定したことに対して優先順位をつけ、実現性を高めていくことも重要です。
③戦略策定
計画策定とは、実行計画を具体的に決めていく作業のことです。戦略立案された内容を基にしながら、実行するための道筋を立てていきます。
具体的には、必要人員・予算・スケジュールなどを決定させる段階です。現状からゴールまでの、実現可能なロードマップを決定していく過程といえます。
④評価
策定した戦略を実際におこなうと、立案段階ではわからなかったことや意外なことが明確になってくることでしょう。
そこで、現段階での評価が必要となります。評価をすることで、成果がでない原因や過剰な予算などの問題点が浮上してきます。
評価によって得た結果から、戦略を改善しなくてはなりません。認めたくない結果を現実的に知ることは、本音では面白くない作業でしょう。
しかし、評価を客観的に捉えて素直に従っていくことは、今後のためにも大切です。
⑤改善
評価した内容から改善すべきことを決定します。
実行している戦略が成果をあまり得ていないと知った以上は、改善のための立案をして修正をすることです。
ただし、内容によってはしばらく様子見をすることも考えられるでしょう。それらも含めた、戦略の改善作業は定期的に組み込んで実施していきます。
戦略立案をする部署の仕事内容
戦略立案を考える部署というのは一概には言い切れません。
一般的には経営企画部門のある部署が該当しますが、企業規模や業種、方針などによって名称も異なります。
経営企画部門と類似した機能をする部署、または経営戦略部門という名称でありつつ業務内容がまったく異なる場合もあるからです。
ただし、そこでの仕事内容はほぼ一緒と考えられ、以下のような5つの業務を中心におこなわれています。
- 経営戦略の立案
- マーケット調査
- 事業の創造・管理
- コーポレート・ガバナンス
- IR
経営戦略の立案
経営戦略は、企業全体の事業が目標達成するための全般のことです。経営戦略部門のある該当部署にて策定されます。
自社の状況を考慮しながら予算、人材配置などを決定し、各事業部や部門と連携しながら進行させることになるでしょう。
各部門からのニーズや目標を検討しながら、統合的な視点で配分し最適な結果を求めます。市場分析や競合分析もしながら、強みや特徴を活かした戦略立案をすることになるでしょう。
組織全体の牽引をする大切な仕事内容です。
マーケット調査
経営戦略部門では、マーケット調査の仕事内容もあります。
商品・サービスの企画にて需要などを正確に把握するための、競合分析を主としたものです。
トレンドや顧客ニーズを把握し、変化するマーケット環境への対応や、競合動向を的確に分析します。やがて、経営戦略の修正や調整などにも関わり、競争力の維持と向上のためにマーケットの変化に適応できる業務形態を目指していきます。
事業の創造と管理
経営戦略部門では、新事業の創造・管理もします。
現代マーケットの変化に順応するために、事業展開を刷新する必要もあるためです。
企業の予算や人材確保・スキル向上を考慮し、収益源の新しい創造を試みます。そのためには、マーケット調査・トレンド分析をして、情報を活用・共有しながら戦略的な意思決定をする必要があるでしょう。同時に、事業を適切に管理する役割も担います。予算管理・リスク評価・プロジェクト進捗状況の把握などです。
他にも、課題の解決策提案、問題点改善を図るのも役割とされています。そのため戦略立案をする部署は、広い視野と専門知識が必要とされ、組織内外の事情を総合的に認識できていなければなりません。
コーポレート・ガバナンス
コーポレート・ガバナンス(Corporate Governance)とは、不祥事の防止のため、社外取締役・社外監査役といった第三者による経営監視をする仕組みを指します。
現代的な企業は利益追求をするだけでなく、社会的責任も求められています。大企業になるほど顧客・取引先・競合他社・地域社会などステークホルダーが多岐にわたっていくことでしょう。
もし不正行為が起こると、炎上して大きな問題に発展しかねません。企業のイメージを低下させる危険性があるので、最悪な事態を予防するための措置をあらかじめ考えておく必要があります。コンプライアンスの意識を高めて全スタッフへ浸透させることが義務となってきました。行動指針、罰則などを策定したり、万が一のための信頼性向上に務めることになります。
IR
IR(Investor Ralations)とは、株主や投資家への必要な情報提供・報告をする活動全般を指します。
財務状況・決算内容などの財務に関する情報の他に、環境問題へ配慮の状況や製品開発状況、他企業との提携状況といった内容も含んで提供する役目です。
広報や総務などの部署が担当する会社もありますが、広範な社内知識を要することもあり、経営戦略部門のある部署が先導することもあります。おもな仕事内容として、有価証券報告書・決算短信などの作成があるでしょう。
株主総会の企画・運営もします。企業経営者は株主や投資家のニーズを正確に把握しながら経営判断をするため、IRの仕事内容は、投資家との相互理解を深めるのに欠かせません。
戦略立案研修
戦略立案研修は、「SDGs」「人口減少」「AI」「IOT」「デジタル」といったキーワードを軸に、2030年を見すえた戦略計画のポイントを学ぶ、経営幹部向けの研修です。
フレームワークを活用した経営戦略立案の基本知識から自社の戦略を策定する具体的な方法論まで、効果的に習得できます。
戦略立案での注意事項
画期的な戦略をしたいと考えて、斬新な発想をしたいと考えるものです。しかし、戦略立案をする際には、いくつかの注意点もあります。
自社の強みと差別化のポイントを把握する
まずは、自社の得意なこと、他社より優れた商品・サービスの特徴、持続的に優位性を生み出せるものはなにかを理解する必要があります。
「コア・コンピタンス」と呼ばれるものです。
これらは3C分析・SWOT分析・VRIO分析などのフレームワークを通じながら定義することになるでしょう。自社が強みとなる部分や差別化できることを整理しておくことが先決です。
自社の強みに共感できる顧客を大切にする
自社のよさに気づいてくれる顧客に注目しましょう。
そのためには「セグメンテーション」「ターゲティング」「ポジショニング」の3つの観点で捉えることです。
セグメンテーションとは、市場・顧客の切り分けのことを指します。商品やサービスを提供したい市場を、年齢・性別・居住地・購買行動などでグルーピングすることです。
ターゲティングとは、市場・顧客の絞り込みです。
例えば、国内20代社会人で、自社商品の購買経験がない人といったように、強い訴求力を持ちそうな対象者を想像して絞り込むことを指します。
ポジショニングとは、ターゲティングした対象に、製品やサービスが認識される決め手となる特徴を考えることです。
例えば、あえて高単価路線にする、あるいは希少性の高い機能商品を売りにするなどの方法を模索します。
これらの3点に注力しながら、自社をフォローしてくれる顧客を見出すことが大切です。
実現可能な戦略を立て実行する
戦略立案しても、それが成果を出さなければ意味がありません。
事業戦略や機能戦略などが、実際の市場内に落とし込めるかどうかが大切です。戦略が単なる机上の空論であってはなりません。現実として顧客が満足して商品・サービスを受け入れているか、必ず調べる必要があるでしょう。
そのための適切な人材配置、組織構築も必要になることがあります。縦割りな意思決定をしないよう、各部門との連携ができる仕組みになっているかを注意して見ておきましょう。
まとめ
戦略立案は、ポイントを押さえながら手順を踏んでおこなうことが大切です。企業を成功に導いて失敗のリスクを軽減させるためにも必要となります。
戦略立案そのものには特定のルールはありませんが、流れとポイントがあることは知っておきましょう。抽象的である場合は、明確な立案のために3C分析などのフレームワークを利用するのもよい方法です。実現可能な戦略立案を目指しましょう。