景品表示法とは?製造業が知らずに違反しがちなポイントを徹底解説

製造業をはじめとする多くの企業が、日々さまざまなマーケティング手法を駆使して消費者にアプローチしています。その中でも、商品の品質や価格を訴求する広告やキャンペーン、景品の提供は、消費者の購買意欲を高める有効な手段です。
しかし、これらの手法において、法律上のルールを十分に理解せずに実施すると、知らず知らずのうちに法律違反となり、企業イメージや信頼を大きく損なうリスクがあります。そのようなリスクを防ぐために重要なのが、「景品表示法」の正しい理解です。
景品表示法は、消費者が正しい情報に基づいて商品やサービスを選べるよう、不当な表示や過大な景品の提供を規制する法律です。特に製造業者にとっては、製品の表示や販促活動の企画・監修などを行う機会が多く、知らずに違反をしてしまうケースが少なくありません。
本記事では、製造業者の方が実務で直面する場面を想定しながら、景品表示法の基本的な内容と、実務上の注意点、研修を通じたリスク対策の方法までを解説していきます。
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目次
景品表示法とは何か
消費者を守るための法律である景品表示法は、企業の販売戦略と密接に関係しています。ここでは、この法律の基本的な考え方や、現在の運用状況を押さえておきましょう。
景品表示法の目的と背景
景品表示法(正式名称:不当景品類及び不当表示防止法)は、消費者が自主的かつ合理的に商品やサービスを選択できる環境を守ることを目的としています。
この法律が取り締まるのは、例えば「この商品は他社製品よりも圧倒的に高性能」といった誤解を招く表示や、「購入者全員に高額な景品が当たる」といった過剰な誘引行為です。これらの手法は、一見魅力的に見えるかもしれませんが、実際には消費者の判断を歪める可能性があるため、法律で制限されています。
活発化する法執行の現状
近年、景品表示法の執行は強化されており、消費者庁を中心に多くの企業が摘発や行政指導を受けています。特に、2016年に導入された「課徴金制度」は、優良誤認や有利誤認といった不当表示に対して、売上高の3%相当の課徴金を科すという強いペナルティです。
さらに、景品表示法違反に関する措置命令は、企業名と違反内容が公表されるため、信用失墜のリスクも大きいのです。企業にとっては、単なる法令順守の問題ではなく、レピュテーションマネジメントの一環としても対策が必要です。
表示に関する規制

企業が消費者に届ける情報には大きな責任が伴います。広告やパッケージなどの「表示」は、消費者の購買行動に強く影響を与えるため、誤解を招く表現は厳しく規制されています。
表示とは何を指すのか
景品表示法における「表示」とは、事業者が自社の商品やサービスの内容、価格、提供条件などを、広告やパッケージ、チラシなどで消費者に伝える行為を指します。これは紙面だけでなく、テレビCMやWeb広告、さらには口頭や店頭での説明なども含まれます。
また、企業の形態にかかわらず、営利を目的とした活動であれば、地方自治体や学校法人なども「事業者」として規制の対象になります。
不当表示の主な分類
不当表示には、大きく分けて3つのパターンがあります。
区分 | 内容 | 例 |
---|---|---|
優良誤認表示 | 実際より品質・性能が優れているように見せる | 「10日で必ず痩せる」 |
有利誤認表示 | 実際より価格や取引条件がお得に見える | 「通常価格10,000円→5,000円」 |
その他の指定表示 | 原産地偽装・おとり広告など | 「日本製」なのに外国製 |
表示主体の判断と責任
表示に関与した全ての事業者が責任を負う可能性があります。たとえば、製造業者が作成したパッケージに虚偽表示があり、それを小売店が販売していた場合、両者が責任を問われることがあります。
また、小売業者が自社でPOPや口頭説明を追加した場合でも、その表示が不適切であれば表示主体と見なされ、法的責任を負うことになります。
不実証広告規制への対応
「この商品は効果がある」と消費者に伝えるには、その根拠が必要です。不実証広告規制は、曖昧な表現や誇張に歯止めをかけ、健全な競争を促進する制度です。
不実証広告規制の仕組み
この制度は、事業者が「著しく優良である」といった主張をする場合に、その根拠を示す資料の提出を求めるものです。もし合理的な根拠を15日以内に提出できない場合、その表示は違法とみなされます。
このため、広告やパッケージに効果・性能を記載する際には、事前にその裏付けとなる客観的なデータを準備しておく必要があります。
合理的根拠の基準
合理的な根拠として認められるには、以下の2つの要件を満たさなければなりません。
- 試験・調査に基づいた客観的な資料であること
例:試験データ、学術文献、専門家の見解 - 表示された内容と提出資料が正確に対応していること
例:商品性能を説明したデータが実際の使用環境と一致
景品に関する規制
キャンペーンやプレゼント企画などの販売促進は、多くの企業が日常的に実施しています。しかし、その手法によっては「景品類」として法の制限を受ける場合があります。
景品類の定義と判断基準
景品表示法では、商品の購入やサービスの利用に付随して提供される「物品・金銭・その他の経済的利益」を「景品類」として規制しています。たとえば、「購入者全員に〇〇プレゼント」といったキャンペーンが該当します。
ただし、単なる値引きやアフターサービス、必要不可欠な付属品については、原則として景品には含まれません。
懸賞・総付景品の違いと規制
景品の提供方法によって、規制内容も変わります。
区分 | 内容 | 主な規制 |
---|---|---|
懸賞景品 | 抽選・ゲーム・応募などで一部に提供 | 最高額=取引額の20倍まで(上限10万円)、総額=売上の2%以内 |
総付景品 | 全員または一定の条件で全員に提供 | 200円 or 取引額の20%のいずれか高い方まで |
製造業者が注意すべき景品提供
製造業者が直接消費者に販売していなくても、景品の提供があれば規制対象になります。さらに、販売経路にある卸売業者や小売店が提供する景品も、全体として法令に適合しているかを確認する責任があります。
違反時のペナルティとリスク
景品表示法に違反した場合、その影響は金銭的損失にとどまりません。企業の社会的信用、従業員の士気、さらには株価にまで波及する可能性があります。ここでは違反時の具体的なリスクと、企業としてどのように備えるべきかを詳しく解説します。
主な行政処分と企業への影響
処分内容 | 具体的措置例 | 主な影響 |
---|---|---|
指導 | 口頭・書面による是正指導 | 内部対応で済むが記録に残る可能性 |
措置命令 | 不当表示の中止、公示、再発防止策の実施 | 企業名が公表され社会的信用に影響 |
課徴金納付命令 | 対象商品の売上高の3%相当の課徴金 | 財務的ダメージ、再発防止対応が必要 |
※ 措置命令や課徴金命令が出された場合、企業名と違反内容が消費者庁サイト等で公表され、炎上・信頼失墜につながるリスクがあります。
再発防止策と企業対応
法令違反を未然に防ぐには、現場と法務の連携とルールの明文化が重要です。
実効性のある対応策
- 表示・販促に関する社内ガイドラインの整備
- 広告・表示の事前レビュー制度の導入
- 商品企画・販促・法務間の情報共有フローの構築
- 外部専門家による定期チェック(例:弁護士の監修)
これらを継続的に実施することで、景品表示法違反のリスクを大幅に低減できます。
研修で得られる効果とメリット
景品表示法を正しく理解して実務に活かすには、社内での教育・研修が非常に重要です。法律の条文を読むだけでは理解しにくい実務上の注意点を、具体例とともに身につけることで、リスクに強い組織体制を構築できます。
なぜ景品表示法の理解が社内で進まないのか
多くの企業で、景品表示法の違反が「うっかり」発生してしまうのには理由があります。その根本には、以下のような課題が潜んでいます。
- 実務担当者が法律の存在は知っていても、内容を理解していない
- 「少しくらいなら大丈夫」という誤解や慣習に頼った判断が多い
- 広告やキャンペーン企画に対するチェック体制が不明確
- 法務部門と販促・企画部門とのコミュニケーション不足
こうした構造的な問題が、知らないうちに違反リスクを高めているのです。特に製造業では、商品スペックや品質表現に関する誤認リスクが高く、担当者の「勘」や「慣れ」に依存する体制は非常に危険です。
景品表示法を“使える知識”にする研修とは
法令知識を「知っている」だけでは、実務では通用しません。重要なのは、日々の業務で「使える」知識として定着させることです。研修によって得られる効果は、単なる知識習得にとどまりません。
研修によって期待できる効果
- 自社商品の広告・表示に対するリスク感度が高まる
- 表現の判断に迷ったとき、どこに確認すればよいかが明確になる
- 法務部門との連携がスムーズになり、判断が属人的でなくなる
- 過去の違反事例をケーススタディで学ぶことで、実践的な判断力がつく
まとめ
景品表示法は、消費者保護の観点からますます重要性が増している法律です。製造業者にとっても、自社の製品が消費者の目にどう映るかをコントロールするうえで、法令遵守は欠かせません。
本記事で解説したように、表示内容のチェックや景品提供のルールは複雑に見えるかもしれませんが、正しく理解すれば回避可能なリスクです。社内での継続的な研修と体制づくりを通じて、消費者から信頼される製品づくりを進めていきましょう。
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景品表示法(景表法)では、消費者が自主的・合理的に商品やサービスを選べる環境を確保するため、事業者が品質や価格などを偽って表示することを厳しく規制し、過大な景品類の提供を防ぐために最高額を制限するなどしています。顧客への訴求効果を意識するあまり、広告で法的に問題のある表示をすることがないよう、事業者には景表法への深い理解が求められます。本講座では、法で禁止されている行為や事業者に求められる対応などについて、基本をしっかり押さえることができます。
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