心理的安全性とは?人が育ち、辞めない職場の作り方

「心理的安全性」という言葉が、今ビジネスの現場で注目を集めています。その背景には、離職率の高さ、チームの生産性低下、テレワークによる信頼関係の希薄化といった現代的な課題があります。

社員が安心して発言できる環境は、業務効率だけでなく、働く人のモチベーションや組織へのエンゲージメントにも大きく関わります。この記事では、心理的安全性の基本的な考え方から、現代の職場における重要性、そして実践のためのポイントまでを詳しく解説します。

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目次

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心理的安全性とは何か

心理的安全性の定義と起源

心理的安全性とは、「チームの中で自分の発言や行動が否定されたり、笑われたり、罰されたりしないと確信できる状態」を意味します。これはハーバード大学のエイミー・エドモンドソン教授が1999年に提唱した概念で、現在では世界中の企業・組織でその重要性が認識されています。

この状態があることで、社員はリスクを恐れずにアイデアを提案したり、疑問を口にしたり、問題点を指摘することができます。職場が「対人関係において安全な場」であることが、個々の能力を最大限に引き出すための前提となります。

心理的安全性が欠如すると何が起きるのか

心理的安全性が低い職場では、社員が無言になりがちです。特に、新人や若手社員は「こんなことを聞いたら馬鹿にされるのでは」と不安を感じて、質問すらできなくなります。ミスをしても報告せずに隠してしまったり、問題を見て見ぬふりをするような風土が形成されます。

こうした職場では、改善提案も出にくくなり、イノベーションが停滞します。また、誤解やすれ違いが積み重なり、人間関係のトラブルや離職にもつながります。

現代の職場で心理的安全性が欠如する背景

多くの企業では、職場内の「人」起因の問題が離職やパフォーマンス低下の原因になっています。なぜ心理的安全性が損なわれやすくなっているのか、その背景を紐解いていきましょう。

早期離職と「人」起因の問題

厚生労働省のデータによると、新卒社員の約3割が3年以内に離職しており、しかもその理由の約半数が「職場の人間関係」に関するものでした。これは、職場に心理的安全性が確保されていないことを示唆しています。

新人が何を言っても否定される、無視される、評価されないと感じた時点で、職場への信頼は失われてしまいます。表面的には「業務が合わない」や「やりがいを感じない」といった理由に見えても、根底には「人に受け入れられていない」という問題が潜んでいるのです。

新入社員を襲うリアリティショック

入社前に抱いていた理想像と、現実の職場のギャップによる「リアリティショック」も、心理的安全性を脅かします。これは特に入社3ヶ月以内に強く現れ、「5月病」「6月病」といった精神的な不調を引き起こす要因にもなります。

この段階で「自分はここにいていいのか」「誰も自分を見ていないのでは」といった感情に支配されると、やる気や自信を大きく損なうことになります。心理的安全性が高ければ、こうした不安は早期に解消され、本人の適応力も自然と高まります。

テレワークで生まれる新たな不安

コロナ禍をきっかけに普及したテレワークは、働き方に柔軟性をもたらしましたが、一方で新たな孤立感や不安を生み出しています。例えば、画面越しでは相手の表情や反応が読み取りづらく、「自分の言葉はちゃんと届いているのか」「評価されているのか」と不安になる社員が増えています。

また、「雑談」や「ちょっとした相談」がしづらくなったことも、信頼関係の構築を阻害しています。これにより、心理的安全性が低下し、パフォーマンスの質にも影響が出る可能性があるのです。

心理的安全性がもたらす具体的な効果

心理的安全性の高い職場では、社員が活き活きと働き、組織全体にも良い影響をもたらします。ここではその具体的な効果を見ていきましょう。

新人の定着プロセス(受容感と有能感)

心理的安全性が高い職場では、新人はまず「受容感」(自分はここにいていいと思える)を得て、次に「有能感」(自分にもできるという自信)を育んでいきます。この2つの感覚は、本人の安心感とやる気を大きく左右します。

研究によると、受容感は入社後2〜3ヶ月、有能感は6ヶ月ほどで形成されるとされています。このプロセスを支えるためにも、初期段階での心理的安全性の確保が欠かせません。

チームの創造性と生産性の向上

心理的安全性のあるチームでは、アイデアが活発に出されるだけでなく、メンバー間の協力も進みます。異なる視点を持つ人の意見を受け入れ、互いの強みを活かすことで、創造性が飛躍的に高まります。

また、失敗が責められない風土では、トライ&エラーが促進され、結果としてプロジェクトの成功率も上がります。これは、単なる個人の努力ではなく、チーム全体の力を引き出す効果と言えるでしょう。

組織全体のエンゲージメント向上

個人が安心して働ける環境は、会社への信頼感や愛着を育て、エンゲージメントの向上につながります。とくにテレワーク下においては、心理的安全性が高い企業のほうが、組織への帰属意識やパフォーマンス評価の結果が良好であるというデータもあります。

心理的安全性を育む職場づくりのポイント

では、実際にどうすれば心理的安全性を高めることができるのでしょうか。実践に向けた職場改善のヒントを紹介します。

「4つの不安」を理解する

心理的安全性を妨げる要因として、以下の4つの「不安」が挙げられます。

  1. 無知だと思われる不安(質問を避ける)
  2. 無能だと思われる不安(ミスを隠す)
  3. 邪魔をしていると思われる不安(遠慮して意見を言わない)
  4. ネガティブだと思われる不安(問題提起をためらう)

これらの不安を払拭するためには、上司や同僚が日常的に安心感を与える言動を心がけることが求められます。

マネジャーに求められる行動

マネジャーの言動が職場の空気を大きく左右します。部下の意見を遮らない、否定しない、そして何より「話してくれてありがとう」という姿勢を持つことが大切です。

また、ミスや失敗に対して「どうしてこうなったのか?」ではなく、「どうしたら次はうまくいくか?」といった建設的な視点で向き合うことが、心理的安全性の高い環境づくりに直結します。

日常会話とフィードバックの力

「心理的安全性は雑談から生まれる」とも言われるほど、日常のちょっとした会話が信頼関係を深めます。あえて業務に関係のない話題を共有することが、心理的な距離を縮めるきっかけになります。

また、定期的なフィードバックは、社員が自分の役割や価値を実感する大切な機会です。フィードバックの質が心理的安全性に大きな影響を与えることを意識する必要があります。

心理的安全性を高める研修の役割

職場で心理的安全性を高めるためには、知識だけでなくスキルの習得が必要です。ここからは、研修を活用した実践方法とその効果に焦点を当てていきます。

研修で身につくスキルと知識

心理的安全性に特化した研修では、傾聴力、承認スキル、信頼関係を築くための言語・非言語コミュニケーションなどを体系的に学べます。ロールプレイや事例研究を通して、自分の行動を振り返る機会にもなります。

こうしたスキルは一朝一夕では身につきませんが、実践を重ねることで自然と職場に浸透していきます。

導入効果と事例から見る成果

心理的安全性向上の研修を導入した企業では、以下のような成果が得られています

  • 1年以内の離職率が20%改善
  • 会議での発言頻度が増加
  • 部門間の協力関係が強化
  • 社員満足度調査での信頼項目のスコア上昇

これらの成果は、単なる研修効果ではなく、その後の実践と職場全体の意識改革によるものです。

まとめ:心理的安全性は「人を生かす職場」への第一歩

心理的安全性は、個人が「自分らしく」「自由に」「安心して」働ける職場をつくるための土台です。誰かが何かを言っても「否定されない」という空気があるだけで、職場の雰囲気は大きく変わります。

とくに変化が激しく、人材の多様性が進む現代においては、心理的安全性の確保こそが、企業の持続的成長の鍵を握っています。

人事やマネジャーの皆様には、まずはこの「安全な場づくり」から始めてみていただきたいと思います。それが、社員一人ひとりの能力を最大限に引き出し、「人を生かす職場」への第一歩となるのです。

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