アカハラとは|大学におけるハラスメントの具体例と防止策
パワハラやセクハラ、マタハラという言葉は一般的に知られていますが、「アカハラ」という言葉はご存じでしょうか?アカハラとは大学などで教授が学生に行う嫌がらせの行為を指します。
この記事では、アカッハラの定義、具体例を紹介します。発生する理由や防止策なども解説しますので、「ハラスメントが気になっている」「心当たりがあるかも…」と思った大学生、大学院生、研究者はぜひ参考にしてください。
目次
アカハラの定義
アカハラとは、大学などで指導者が学生や研究員に対して行う不当な行為です。特に教授と学生間で見られることが多いですが、学生同士や教員同士の間でも起こることがあります。
職場におけるパワハラと異なり、アカハラは法律で定義が決められていません。そのため、さまざまな意味合いで使われる言葉ですが、教育・研究の場で、優位な力関係を利用して個人の尊厳を傷つけたり、教育や研究を妨害したりする行為があたります。
具体的な例は次の見出しで説明します。
アカハラに該当する言動の具体例
学習や研究の妨害
教授が学習や研究を妨げる行為は、代表的なアカハラの例です。具体的には、特定の学生に授業を受けさせない、指導方法を相手によって変える、平等に指導しないといった行為などを指します。中には、学生が希望していない研究を押しつける、研究室の出入りを制限する、学習や実験に必要な文献や機材などを利用させないといったケースも。
不当な扱いを受けた学生は精神的なストレスから、学業への集中力が低下することがあります。学生には、学習する権利があり、教える立場の者が指導を放棄する行為は、ハラスメントになる可能性があるため、指導する側にも注意が必要です。
プライバシーの侵害
アカハラには、学生のプライバシーに触れたり、プライバシーを他者に漏らしたりする行為も含まれます。具体的には、以下のような行為です。
- プライベートな連絡が頻繁にくる
- 学生の成績や経歴を他人に伝える
- 学習や教育に関係のないこと、例えば、彼氏(彼女)がいるかなど、プライベートについて執拗に聞いてくる
- 学生の電話番号などを他人に伝える
- スマホを見せるよう強要する
ハラスメント研修
ハラスメントは、良好な職場環境を保つために決して許されるものではなく、社員の精神的健康を守るためにも非常に重要なテーマです。 ビズアップ総研では、ハラスメントが企業・団体に及ぼす悪影響を様々な観点で学べる講座を多数ご用意しています。eラーニングで気軽に学べるe-JINZAIの2週間無料お試しID発行も行っておりますので、この機会にぜひご利用ください。
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学生の進級や卒業を妨げる行為もアカハラに該当します。理由を明言せずに単位を与えなかったり、卒業論文を正当に評価しなかったりする行為が含まれます。授業の単位取得に関しては教員の裁量が大きいため、単位に関するアカハラが発生することは少なくありません。
研究の場では、学生に良い研究テーマを与えず、評価を受けにくい状況に追い込むことも、アカハラスにあたります。さらに、卒論の提出を受け付けないといった嫌がらせも見られます。このような教授の行為により卒業や修了できない事態になるのは、何としても避けたいものです。
進学・就職における妨害
進路を決定する際にもハラスメントが起こることがあります。学生が望まない進学や就職を無理にすすめることも、アカハラになり得ます。たとえば、理系を希望する学生に文系の進路を強要したり、学生が希望していない就職先を紹介したりする行為は、アカハラとみなされる可能性があります。
教員が学生に対して進学や就職の選択肢を狭めるような発言をしたり、推薦状の提供を拒否したりする場合も同様です。その他、「女は結婚して早く辞めた方がいいよ」といった言動も、アカハラにあたります。
本来、進路は学生自身が自由に選ぶべきものですので、強要されていると感じた場合は、ハラスメントを疑ってみることが必要です。
研究成果やアイデアを盗む行為
他人の研究成果やアイデアを盗用することも、アカハラにあたります。教授がその立場を利用して、研究成果を横取りするという悪質なハラスメントは、しばしば発生します。研究成果やアイデアの盗用は、単なる嫌がらせではなく、論文の著作権など法律の問題に関わってくることもあり、厳重な注意が必要です。
業務妨害
アカハラは、学部生だけでなく、大学や研究機関などで働き、大学から給料を受け取っている研究員に対しても起こり得ます。以下の事例が挙げられます。
- 研究チームから理由なく排除する
- 休日を一切とらせない
- 研究室内の雑用を特定の個人にやらせる
- 論文や学会発表などの研究発表活動を不当に制限する
アカハラはなぜ起こる?理由と背景とは
アカハラが発生する要因を詳しく見ていきましょう。
はっきりとした力関係がある
アカハラが起こる理由には、まず教授と学生という明確な力関係が挙げられます。力の弱い者が力の強い者に反抗的な態度を取ると、指導を受ける場合に不当な扱いを受けることが考えられます。そのため、立場の弱い者がハラスメントを受けたとしても、訴えることができないケースが多いでしょう。
指導者は学生や研究員のキャリア形成と深く関わる立場にあり、その権力を利用した圧力や不当な要求はアカハラとなります。
環境が閉鎖的である
まず、大学や大学院、研究所などのアカデミックの場は、閉鎖的な環境であることが要因といえます。閉鎖的になりがちなのは、研究の内容が外部に盗まれないようにする必要があるため、外部からの出入りが制限されていることもあります。
学部内や特定の研究室での人間関係が密接であればあるほど、情報が外に漏れにくく、アカハラが起きた場合に、被害が露呈しにくい状況が生まれがちです。
公的機関のチェックがない
パワハラやセクハラなどについては、労働基準監督署などの公的機関が相談を受け付け、企業に対して対応を促しています。一方でアカハラについては公的な監視や大学内の相談窓口が不足しており、被害者が問題を報告しにくい状況です。この課題に対し、大学側には積極的なアカデミックハラスメント防止策を取ることが求められます。
近年、文部科学省はハラスメント問題に対する積極的な対策を展開し、令和元年にはいくつかの大学でハラスメントについての調査を実施しました。今後は公的機関がアカハラにも対応する可能性があります。
アカハラに対する法的規制と防止策
セクハラやパワハラについては、法律上で明確に定義されていますが、アカハラは法的に規制されていないのが現状です。しかし、アカハラは教育機関において権力を利用した明確なハラスメントであり、行為の内容がセクハラやパワハラに該当することもあります。ここでは、防止策を見ていきましょう。
アカハラについて知識を深める
アカハラを防止するには、アカハラに対する理解を深めることが必要です。中には、加害者が自覚せず無意識に行っているケースもあります。こうした無自覚なアカハラを防ぐためには、職員の一人ひとりがアカハラについて正しい知識を持つことが重要です。
具体的には、職員や学生に対して定期的なハラスメント研修を行うことや、ガイドラインを作成し大学のホームページに掲載する方法が有効です。ガイドラインがあれば、「この行為はアカハラに該当するのか?」と判断しやすくなり、相談の基準にも役立つでしょう。
定期的にアンケートや調査を行う
アカハラ防止対策には、まず現状を知ることが必要です。定期的にアンケートを実施すれば、現状はどうなのかを把握できます。アンケートは、教員、常勤・非常勤職員、学部生、大学院生、研究生と幅広い対象に実施し、偏りなく行うことがポイントです。匿名にすることで、被害の状況もつかめるかもしれません。
隠れたアカハラを見つけるためには、定期的な調査を行うことが効果的です。アカハラは、大学内の小さなコミュニティで起こりやすいため、大学側が気づいていないだけで、水面下に潜在しているケースもあります。大学側が積極的に動くことで、自分から進んで相談できず悩んでいた被害者を救うことができるでしょう。
調査を行う際には、被害者の情報が外部に漏れないよう徹底する必要があります。被害者の多くは、相談したことが加害者に伝わることを不安に感じているため、匿名性を確保することが不可欠です。
相談できる窓口を設置する
アカハラの被害者が相談しやすい環境を整えてあげることが大切です。まず、相談窓口を校内に置くことをおすすめします。窓口を設置するにあたって重要なことは、被害者の存在を周囲にもらさないようにすることです。
そのために、以下の対策を講じましょう。
- 相談は匿名で受け付ける
- メール相談も許可する
- 相談員は特定の人員のみとする
相談員は、外部へ情報が漏らさないようにするためにも、信頼のおける人物を採用しましょう。
組織内の相談窓口の設置に加えて、外部機関と連携すると安心です。ハラスメントの相談窓口としては、弁護士事務所、労働局、労働基準監督署、NPO法人が挙げられます。外部機関へ相談すると、具体的な対応策や法律に関する情報など、公平な立場から適格なアドバイスがもらえるため相談しやすいでしょう。
まとめ
この記事では、アカハラについてその定義、発生する理由と背景、防止策について説明しました。アカデミックハラスメントは、研究・教育の場において、指導教員がその権力を利用し、学生、ときには教員に対して行う嫌がらせです。能力や人格を否定するような言動や指導の放棄、さらに不公平な評価など、さまざまなハラスメント行為が挙げられます。中には加害側に嫌がらせをしている意図がない場合もあります。
アカハラは、民間企業でのハラスメントに比べて、表沙汰になりにくいことが問題です。状況を改善するために、まずは大学内に相談窓口を設置することを検討しましょう。現状では多くの大学が設置しているようですが、実際にどの程度利用されているのでしょうか?状況が改善されない場合は、外部機関に相談することも選択肢の1つです。卑劣なハラスメント行為に対しては、教育機関として積極的に対応することが重要です。